今さら執着されても困ります

メイリリー

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03. 檻の中

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 それから、仮面は完全に剥がれ落ちた。彼は朝食の席に彼女を連れてくるようになった。

「ほら、あーん」

 リアム様が言った。私には一度も見せたことのない、甘美な毒のような声。アリスは彼の膝の上に座り、くすくすと笑っている。

「んー、リアムったら、甘やかしすぎよ。太っちゃうわ」

「構わないさ」

彼はアリスの腰に手を回し、引き寄せて密着させた。二人の体温が混ざり合う。使用人たちは彫像のように黙り、誰も止めない。

 私は彼らの向かいに座っていた。口の中のトーストはパサパサで灰の味がした。

 リアム様が果物を切ろうと視線を落とした隙に、アリスが私を見た。唇が歪む。嘲笑。鋭く、勝ち誇った笑み。『あなたは無価値よ』その目がそう語っていた。



「リアム様」

 私は引きつる頬で笑みを作った。

「庭のバラが、見事に咲き誇っていますね」

「ああ」

 彼は顔も上げない。

「あの、お菓子を作ってみたんです。お口に合うかと思って」

「ああ」

 彼はアリスの紅茶を置くために、私の皿を脇へ追いやった。

「お仕事、いつもご苦労様です……」

「そうだな」

 彼は壁だった。呼吸をし、言葉を話すけれど、私ではない誰か他の人にしか反応しない壁。



「動かないでくださいませ、お嬢様」

 メイドのシェナが私の髪にブラシを通す。夜。私が唯一、息ができる時間。シェナだけが、私の目を真っ直ぐに見てくれた。

「あの方は誰なの、シェナ」

 鏡の中の自分は、幽霊のように青白かった。

「どうして、あの方なの?」

 シェナが溜息をついた。

「アリス・サインワード様。リアム様の幼馴染です」

 シェナの声がひそまる。誰かに聞かれることを恐れるように。

「いつから始まったのかは存じ上げませんが、リアム様はずっと……あの方に夢中でした。執着、と言ってもいいかもしれません。尋常ではありません」

 彼女はブラシを置き、私の肩に手を置いた。その手だけが温かかった。

「可哀想なユリアナ様。こんな家に嫁ぐべきではありませんでした。ここには、貴女様の居場所はありません。」

 私は目を閉じた。

『居場所がない』

 けれど私はもう、この監獄のような檻の中にいる。そして、鍵は存在しない。
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