それなりに怖い話。

只野誠

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さとがえり

さとがえり

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 女は数年ぶりに自分の地元に帰って来ていた。
 ただ、女の実家は改装中ということで、別の貸家に来ている。
 里帰りというよりは、その貸家に一時引っ越すための手伝い、そういったほうが良かったかもしれない。

 貸家ではあるが、数年ぶりに会う」両親は快く女を迎え入れる。
 息子と娘も夏休みで女についてきている。
 夫だけは仕事の都合で来てはいない。

 女の実家は田舎だ。
 田んぼと畑しかないような場所だ。
 そんな場所でも、今時珍しい貸家だった。
 藁葺き屋根というわけではないが、古い日本家屋だ。
 縁側があり、廊下は外と面しているような、扉もすべて襖か障子のような、そんな家だった。

 綺麗に掃除の行き届いた家だったが、いかんせん古いし、トイレはぼっとん便所だ。
 子供たちは嬉しそうに騒いでいたが、それも最初だけで後は文句を言うに違いない、女はそう思っていたし実際そうだった。

 そんな貸家で両親を手伝いながら、女は夜を迎える。

 日が落ちるまでそんなことはなかったのだが、古めかしい日本家屋であり、日が落ちるとこの家は一気に暗くなる。
 廊下には電気はないので、部屋から出ると本当に真っ暗なのだ。

 そんな真っ暗な先にあるのがぼっとん便所だ。
 女はそんな生活を実際に体験して、一日目で嫌気がさす。
 都会の暮らしに慣れ過ぎたのだ。

 テレビのチャンネルも数チャンネルしかなく、日が暮れると途端にやる事がなくなる。
 なので、早々に女と子供たちは寝るのだが、娘が夜中に女を起こしてくる。
 女が、どうしたの? と聞くと、娘は、トイレ、と答えた。
 まあ、この家のトイレを夜に一人で行けというのは酷だと、女も思う。
 娘と一緒に廊下に出てトイレへと向かう。

 廊下に出ると庭が見える。
 雨戸も閉めてないようだ。
 女が住んでいるところでは信じられない光景だ。
 ただ、そのおかげで月明りで廊下が照らされている。
 女がきれいな月に見とれていると、娘が女に力強くしがみついてくる。

 女が視線を娘に向けると、娘は廊下の先を指さしていた。
 指さした先を見た女も身を縮こませる。

 それは日本人形だった。
 しかも、かなり大きく、子供くらいの背丈、ちょうど娘と同じようなそんな日本人形が廊下の先に立っていたのだ。

 ただ、その人形の視線は女たちを見ていない。
 月を見ているかのように、外を見上げていた。

 そのまま人形は動かなかった。

 誰かが、両親が飾ったのか、と思ったが流石にそんなことはしないだろう。
 女は娘を部屋に戻らせて、その人形を調べに行く。
 廊下にいた、いや、あったのは人形で間違いない。
 人形が動くわけでもない。

 女が恐る恐る触っても動かない。

 やはり誰かが飾ったものなのだろうと、女はそう思うことにした。
 明日、両親に聞いて両親が飾ったのであれば、文句を言わなければ、と決心してだ。

 その後、娘を連れて女はトイレへと行く。
 人形の後ろを通らなくてはならなかったが、人形は人形だ。
 動くわけはない。

 トイレへ行った帰りも、恐る恐る人形の後ろを通る。
 何度か振り返るが人形は月を見ているだけで動きはしない。
 当たり前だ。人形が動くわけがないのだ。
 だが、その人形はどこか生気があるような、生きているかのような、そんな気配がどこか漂っている。
 こんな人形が動かないほうがどこかおかしい、そうとも思えるような、そんな人形なのだ。
 女は部屋に戻り、そのまま不気味だと思いながらも眠りにつく。

 翌朝には、女が起きた時には人形は既に片付けられていた。
 女は両親に人形のことを聞く。
 だが、両親は人形など知らない、と言うだけだ。
 そもそも、子供の背丈ほどの人形などこの貸家では見たことがない、と両親は女に言った。

 娘にも、昨晩トイレに行くとき見たわよね、と確認するが、覚えてない、と返答が返って来た。
 だが、娘の反応はどこかぎこちなく、何かを隠しているかのように女には感じられた。
 ただ娘がそれ以上人形のことについて口を開くことはなかった。

 女が人形を見たのは、女もその一夜だけだったし、貸家の中を探しても、両親の言う通り、そんな大きさの日本人形は存在してなかった。
 女も夢だったのでは、そう思うようになった。

 ただ娘だけが、貸家で過ごしている間、少し様子がおかしかった。

 ただそれだけの話だ。




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