それなりに怖い話。

只野誠

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くろでんわ

くろでんわ

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 古い田舎の家だ。
 少女の家には未だに黒電話がある。

 ダイヤル式の黒電話で、電子音ではなく実際にジリリリリリンと鳴る、そんな電話があるのだ。

 昼下がり、少女が家に一人でいると、黒電話が鳴る。
 ジリリリリリン、ジリリリリリンと。

 少女が慌てて黒電話の受話器を取り、もしもし、〇〇です、と電話口に告げる。
 そうすると電話口から低い男性の声で、お届け物があるのですが、お届け物があるのですが、と二度ほど、同じ言葉を繰り返す声が聞こえてきた。
 それに対して少女は、私でよければいます、と返事をする。

 今から参ります、今から参ります、と、また同じ言葉を復唱し、プツッと電話がそれで切れた。

 少女は少し不気味なものを感じつつも、お届け物とはなんだろう、と考える。
 それからしばらくすると、また家の黒電話が、ジリリリリリン、ジリリリリリンと鳴り出す。

 少女が電話に出ると、家の近くまで来ています、家の近くまで来ています、と少女が、もしもしという前に伝えてきた。
 慌てながら少女は、わかりました、お待ちしています、と、丁寧に返す。
 そうすると、プツッと電話が切れる。

 少女はやはり少し不気味だと感じる。
 電話口でのしゃべり方も、なんというか抑揚がないのだ。
 電子音ではないのだけれど、感情が感じられないような、そんな声なのだ。

 先ほどの電話があってから、まだ一分もたっていない。
 なのに黒電話が鳴り出す。

 まだ黒電話の前に立っていた少女はすぐに出る。
 やはり少女が何か言うよりも早く、つきました、つきました、と、言ってきた。
 少女はおびえながらも、今玄関に行きます、と答える。
 すると、いれてください、いれてください、と受話器から催促される。

 少女は電話を切り、玄関に行く。
 少女の住む家は古い。
 玄関の戸も引き戸で曇りガラスで外が見れるようになっている。

 その曇りガラスには黒い大きな影が曇りガラス越しに家の中を覗き込んできた。
 目に当たる部分が、中を覗き込むようにギョロリギョロリと動いているのが、曇りガラス越しにも見て取れた。

 少女にはそれがどう見ても人間には思えなかった。
 だから、少女は玄関の前で腰を抜かしてしまい、その場にへたり込んだ。
 玄関の外にいる存在は、玄関の戸に手を触れて揺らすようなことはしてこない。
 それどころか声すらかけてこない。
 ただただ玄関の前にいて佇んでいるように少女には思えた。

 少女が玄関で腰を抜かしていると、ジリリリリリン、ジリリリリリンと黒電話が鳴り出す。
 少女は泣きながら這いつくばって、電話のところまで行き、受話器を取る。

 すると受話器からすぐに、いれてください、いれてください、と、抑揚のない低い声が聞こえてくる。
 それに対して、少女は、帰ってください、と大きな声で返事をした。

 わかりました、わかりました、と、やはり二度繰り返し、電話はプツッと切れた。
 少女が玄関に戻ると、もう黒い影は消えていた。

 あれが何だったのか、何を届けに来たのか、少女には想像もつかない。





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