それなりに怖い話。

只野誠

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にんぎょう

にんぎょう

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 少年が学校から家に帰る途中、道の真ん中に人形が落ちていた。
 少年の身長のちょうど半分くらい。一メートルは確実にないと一目でわかるような人形だ。
 しかも、美術で使うような、デッサン人形だ。
 それが道の真ん中に足を投げ出すように座り込んでいたのだ。

 少年が来た道は建物の影になっていたが、人形が座っている位置はちょうど夕日が当たり、輝いているようにも見える。
 そのせいもあって、人形が妙に目につく。

 少年が人形まであと五から六メートルといったところだろうか。
 人形の顔が独りでに動き少年のほうを向いた、そんな様に少年には見えた。
 ただ、その顔は卵型の顔で、目や鼻があるわけでもない。
 本当に独りでに動いたのか、判断がつかないところがある。

 ただ、少年にはそう見えたので、少年は足を止めた。
 そして、警戒したようにその人形を見る。
 恐らくは木製の人形で、デッサン人形ならではの関節も稼働するような作りになっている。

 少年はしばらくその人形と睨み合う。
 そんな感覚を味わう。

 しばらくすると人形が動く。今度は手がゆっくりと上がっていく。
 今度は人形が間違いなく独りでに動いたのだと、少年はそれを実感した。
 だが、少年が本当に恐怖するのは次からだ。

 人形の手が上がるのと同時に、その手の後ろにもう一本の手があった。
 その手も上に向かい動き出し、後ろにはもう一本の手が隠されていた。
 それがさらに繰り返される。

 一番最初の手に隠れていただけで、合計四対、八本もの手がその人形にはついていたのだ。
 その八本の手、一つ一つにまるで意思があるように、それでいて統一されたように動く。
 まるで蝶々が羽をはばたかせるように手を動かしたのだ。

 なんともその不気味な光景に、少年は怖気ずく。
 少年は逃げようにも足がガクガクと震え振り返ることすらできず、立ち尽くすことしかできなくなっていた。

 八本もの手で羽ばたき、ゆっくりと人形が立ち上がる。
 そして、手の洗練された動きとは逆に、おぼつかない足取りで少年に向かい歩き出す。
 まるで本当に羽でそれを宙を舞うように可憐で規則正しく手が動き、足はただの飾りのようにぎこちなく歩くのだ。
 その手と足のアンバランス差がとても不気味で少年の恐怖をさらに駆り立てる。

 だがやはり足がよくないのか、その人形は少年のところにたどり着く前に倒れ、そのまま動かなくなる。

 それを見た少年は少し安心したのか、冷静さを取り戻し、足の震えも消えて動けるようになっていた。
 少年はその人形とすれ違うように、走ってその道を駆け抜けた。
 しばらく走ったところで少年が振り返ると人形は倒れたままだ。
 しかも、四対あったはずの手が一対しか見えなかった。

 少年は無事、家に帰ることができた。
 だが、その日、少年の通う学校の生徒が事故に遭い両足を失って死んだということを聞いた。

 少年はなんとなく次あの人形に出会ったら、今度は助からない。
 あの人形は今度はしっかりと動く足を手に入れているはずだと。
 そんな気がしてならなかった。



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