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かわぞいのみち
かわぞいのみち
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男が川沿いの道を歩いていると、向こうから真っ黒な人が歩いてくる。
男も大柄な方だが、その男よりもさらに大柄な人だ。
しかも全身が真っ黒だ。
真冬の時期だ、黒い服を着込めばそんな感じにはなる。
なので異様というほどではないが、不気味ではあった。
男は少し道の端に寄り、その黒い人物と距離を取った。
だが、それがいけなかったのかもしれない。
全身黒い人物は、男が自分を避けたのだと、そう気づいてしまったのだ。
男はその黒い人物とすれ違う寸前に声を掛けられてしまう。
そこで男も気づく、この黒く大きなモノは人ではないと。
人の形はしている。
だが、明らかに人ではない。
少なくとも男にはそう感じられていたのだ。
なにが? と聞かれても上手く説明はできないが、黒く人型の何かとその周りの境界線が曖昧だったり、ものすごい獣臭がしたりと。
部分的なものであれば挙げていけるが、それらは決定的なものでなく、それが人間ではないと決定づけられる核心的なものは言葉では言い表せない。
その存在が持つ雰囲気とでもいうのだろうか、とにかく人間ではない、そう感じさせる何かがそれにはあったのだ。
そんな存在が男に聞いてくる。
川上はどっちだ、と。
案外聞きやすい声で、とても印象深い。
男は体の震えを抑えることができずに、震える手で川上の方を指さした。
そうするとその存在は男が指さした方へと、それが元々向かっていた方で方向を変えたわけではないが、歩いて行ってしまった。
周囲にはものすごい獣臭さだけが残っていた。
しばらく男はその場に立ち尽くし、体の震えが収まるのを待った。
そうしなければまともに歩けないほど体が震えていたのだ。
暑くもないのに全身に汗をかき、浅い呼吸を震えながら繰り返していたのだ。
なんとか男が持ち直し、歩き始めようとした時だ。
川下のほうから、また黒く大きな何かが歩いてきた。
今度はその姿を見ただけで男は腰を抜かしてしまう。
そして全身がどうしようもないほどガタガタと震えだした。
とにかくその黒い存在が男は怖くて仕方なかった。
その黒い存在はへたり込んだ男を見て、声をかけてくる。
似たような者、兄がここを通ったはずだ、どちらへ行った?
それはそうと男に聞いてきた。
男は震える手で川上を指さす。
そうすると、それはさらに男に声をかける。
また似たような者がくる。妹だ。妹には行き場所を伝えるな。
そう言い残してそれは川上へと歩いて行った。
男はまた似たようなものが来ると聞いて、今すぐにでも逃げたかったが足が震え、まともに立つこともできなかった。
全身がガタガタと震え、へたり込んだまま、まともに動くこともできない。
そうこうしていると、また、いや、今度は黒い塊がやってくる。
今度は人の形すらしていない。
闇そのもののひと塊で、その闇の中に何かが蠢いているように男には見えた。
その塊は男に声をかけたが、何を言っているのか理解できなかった。
恐らくは日本語なのだろうが、なぜか聞き取れない。
何人もの人が同時に別々のことを喋っているかのように、何を言っているのかも分からなかった。
なので、男は全身を震わせながらもなんとか、わからない、という言葉だけを繰り返した。
気づけば男は道の端で石のように丸まりながら、わからない、という言葉だけをうわごとのように繰り返していた。
男が次に気が付いた時、そこは病院のベッドの上だった。
道で倒れていたと、男は病院へと運ばれていた。
男は何だかんだで、妹という存在に行き場所を教えなかったから自分は助かったのだと、そう思っていた。
その夜、男がまだ病院に念のための検査ということで泊まっていた、ベッドで横になっていた時のことだ。
そこからともなく数人で話しかけられてくるような声が聞こえて来た。
今度はその全員が同じことを言っていて男にも聞き取れた。
どこへ行った?
と。
男は震えながら、川上へ、川上へ行きました、と言ってしまう。
そうすると、声は少しずつ遠ざかっていった。
それ以来、男は川に近づくことは避けている。
もし次にあれに出会ってしまったら、自分がどうなるかわからないからだ。
男も大柄な方だが、その男よりもさらに大柄な人だ。
しかも全身が真っ黒だ。
真冬の時期だ、黒い服を着込めばそんな感じにはなる。
なので異様というほどではないが、不気味ではあった。
男は少し道の端に寄り、その黒い人物と距離を取った。
だが、それがいけなかったのかもしれない。
全身黒い人物は、男が自分を避けたのだと、そう気づいてしまったのだ。
男はその黒い人物とすれ違う寸前に声を掛けられてしまう。
そこで男も気づく、この黒く大きなモノは人ではないと。
人の形はしている。
だが、明らかに人ではない。
少なくとも男にはそう感じられていたのだ。
なにが? と聞かれても上手く説明はできないが、黒く人型の何かとその周りの境界線が曖昧だったり、ものすごい獣臭がしたりと。
部分的なものであれば挙げていけるが、それらは決定的なものでなく、それが人間ではないと決定づけられる核心的なものは言葉では言い表せない。
その存在が持つ雰囲気とでもいうのだろうか、とにかく人間ではない、そう感じさせる何かがそれにはあったのだ。
そんな存在が男に聞いてくる。
川上はどっちだ、と。
案外聞きやすい声で、とても印象深い。
男は体の震えを抑えることができずに、震える手で川上の方を指さした。
そうするとその存在は男が指さした方へと、それが元々向かっていた方で方向を変えたわけではないが、歩いて行ってしまった。
周囲にはものすごい獣臭さだけが残っていた。
しばらく男はその場に立ち尽くし、体の震えが収まるのを待った。
そうしなければまともに歩けないほど体が震えていたのだ。
暑くもないのに全身に汗をかき、浅い呼吸を震えながら繰り返していたのだ。
なんとか男が持ち直し、歩き始めようとした時だ。
川下のほうから、また黒く大きな何かが歩いてきた。
今度はその姿を見ただけで男は腰を抜かしてしまう。
そして全身がどうしようもないほどガタガタと震えだした。
とにかくその黒い存在が男は怖くて仕方なかった。
その黒い存在はへたり込んだ男を見て、声をかけてくる。
似たような者、兄がここを通ったはずだ、どちらへ行った?
それはそうと男に聞いてきた。
男は震える手で川上を指さす。
そうすると、それはさらに男に声をかける。
また似たような者がくる。妹だ。妹には行き場所を伝えるな。
そう言い残してそれは川上へと歩いて行った。
男はまた似たようなものが来ると聞いて、今すぐにでも逃げたかったが足が震え、まともに立つこともできなかった。
全身がガタガタと震え、へたり込んだまま、まともに動くこともできない。
そうこうしていると、また、いや、今度は黒い塊がやってくる。
今度は人の形すらしていない。
闇そのもののひと塊で、その闇の中に何かが蠢いているように男には見えた。
その塊は男に声をかけたが、何を言っているのか理解できなかった。
恐らくは日本語なのだろうが、なぜか聞き取れない。
何人もの人が同時に別々のことを喋っているかのように、何を言っているのかも分からなかった。
なので、男は全身を震わせながらもなんとか、わからない、という言葉だけを繰り返した。
気づけば男は道の端で石のように丸まりながら、わからない、という言葉だけをうわごとのように繰り返していた。
男が次に気が付いた時、そこは病院のベッドの上だった。
道で倒れていたと、男は病院へと運ばれていた。
男は何だかんだで、妹という存在に行き場所を教えなかったから自分は助かったのだと、そう思っていた。
その夜、男がまだ病院に念のための検査ということで泊まっていた、ベッドで横になっていた時のことだ。
そこからともなく数人で話しかけられてくるような声が聞こえて来た。
今度はその全員が同じことを言っていて男にも聞き取れた。
どこへ行った?
と。
男は震えながら、川上へ、川上へ行きました、と言ってしまう。
そうすると、声は少しずつ遠ざかっていった。
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もし次にあれに出会ってしまったら、自分がどうなるかわからないからだ。
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