それなりに怖い話。

只野誠

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ついてきたもの

ついてきたもの

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 恐らくは初日の出を見に元日に海を見に行った時だ。
 その時に連れて帰ってきてしまったのだと、女は考えていた。
 そして、それは恐らく正しい。

 なにを?
 なにかをだ。
 女自身何を連れて帰って来てしまったのかよくわからない。
 だが、初日の出を見に行って帰ってきた時から、視線を感じ、何者かの気配を家の中でも感じるのだ。

 霊感のない女でもなんとなくわかる。
 それはあまり良くないものなのだと。

 海で連れてきてしまったそれは、まず非常に磯の臭いをさせていた。
 それに加え、腐敗臭までさせている。

 家のあちらこちらにそんな臭いのする水、しかも恐らくは海水で水浸しにする。
 その上で、少し離れていた位置で女をじっと観察するように物陰に立っているのだ。

 女が近づこうとすると、それは闇の中へサッと消えてしまい、どんな相手なのかも確認することができない。

 いろんな意味で迷惑だし、非常に不安だ。
 ただそれでも、その何かに直接的な被害を加えられたわけではない。

 にしても、日々の掃除は大変だし、臭いも臭いで厄介だ。

 そんな不安な日々を過ごすなか、女が寝ていると、それがすぐ近くにまで来ていて、女に寄り添うように寝ていた。
 女が目覚めると、それは真っ黒な闇のような体から、闇よりも少しだけ仄暗い目で女をまっすぐに見ていた。

 それに気づいた女が悲鳴を上げるとそれは、闇の中へ逃げるように消えていった。
 まるで真っ黒な煙のような存在に目だけがあるような存在だった。
 後にはもちろん、磯の臭いのする水をまき散らしてだ。

 女がそのことを友人に話すと、その友人は信じていないのか、笑いながら、添い寝してるのは丸のみできるかどうか図ってたからじゃない? なんてことを冗談で返してきた。

 それは友人の冗談だったのだが、女はそれを信じてしまう。
 女は自分はあの闇のような真っ黒な何かに丸のみされてしまう、そう考えるようになって女は怖くて怖くて仕方がなくなってしまった。
 迷惑な存在から、明確に恐怖の対象に変わったのだ。

 怖くて仕方なかった女は結局有名な神社でお祓いをしてもらった。
 お祓いも恙なく終わり、女も気分が晴れ、家に戻ることができた。
 貰って来たお札も家の玄関に張っておいた。

 疑心暗鬼になりつつも、家では少なくともお祓い以来、磯臭い臭いや水たまりなどを見ることもなくなった。
 お祓いが本当に効果があるんだと、女が思っていた時、視線を感じる。
 視線を感じたほうを、窓の方を見ると、窓の外には恨めしそうに女を見る黒いそれが立っていた。
 黒い靄、それに大きな二つの目だけが、窓の外から見ていた。
 その目は確かに怒りに満ちており、恨めしそうに女を見ていたのだ。

 今まで見られるようなことはあっても、これほど恨めしそうに見られることはなかった。
 確かにお祓いは効果があって、それは家には入れなくなった。

 だが、それを怒らせてしまったことも事実なようだ。



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