それなりに怖い話。

只野誠

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つかまれる

つかまれる

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 女はそこそこ人がいる、けど、混んでいるとまではいかない程度、座席は埋まっているが、立っている人もまばら、そんな電車に乗っていた。
 座席に座りつつ、それなりに荷物を持っているので、その荷物を膝の上にのせていた。
 そして、その荷物を落とさないように、眠気を抑えて座っていた。
 外は寒く、電車の中は暖かい。しかも、定期的な揺れが女を眠りへといざなう。

 現実とうたた寝の合間を行き来していると、寝ぼけ眼で女は見てしまう。
 自分の席の対面に座っている乗客。
 乗客と乗客の間から出てきている何者かの手が、女の対面に座っている乗客の二の腕を掴もうとしているのだ。

 女ははじめ、誰の手? と思い、二の腕を掴まれようとしている乗客の回りを見る。
 だが、掴まれようとしている乗客を含め、全員が両手を前に出していた。
 後ろから手を回しているなんてことはない。
 じゃあ、誰の手なんだろう、と思うが、答えは出ない。

 子供など体格の小さな者が後ろに隠れている、なんてこともなさそうだ。
 もしかしてこれは夢か、と女は思い出す。

 女の見ている前で、その手は、白くそして老人のようにふしくれだった手は、女の対面にいる乗客の二の腕をゆっくりと掴む。
 そのまま、力を込め、その手が震えるほどだ。

 だが、掴まれている乗客は特に気にした様子もない。
 二の腕を強く掴まれつつも気にすることなくスマホをいじっている。

 なんなのだろう、と女が思っていると、自分の左腕、しかも二の腕のあたりに違和感を覚える。

 女が恐る恐る見てみると、自分の脇の辺りからも白くふしくれだった手が出て来て、自分の二の腕を掴もうとしたのだ。

 悲鳴を上げようとしたが声が出ない。
 それどころか体が上手く動かない、息苦しく、いつの間にか体が凍えるほど寒い。
 指すら凍えたように動かせない中、脇の下から出て来た手は女の二の腕をゆっくりと掴む。

 すると、しびれるような痛さが二の腕に走る。
 まるで氷でも押し当てられているかのような痛さだ。

 声も出せずに女は痛みに耐える。
 自分の対面に座っている客は同じように手に掴まれているのに、気にも留めていない。だけど、自分は痛いどころの騒ぎではない。
 あまりにも痛みが強く気を失いかけた時、ハッ、と女は目覚める。

 何もかもが夢だったのだ。

 その証拠に、女が自分の二の腕を見るが手などない。
 無論、対面に座っている客の二の腕を握っている手などない。

 女は一息ついて、そのまま帰路についた。

 その夜、お風呂に入る時に気づく、夢の中で握られた方の二の腕に、青紫の痣がくっきりと残っていた。
 まるで人の手で強く握られたような。

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