それなりに怖い話。

只野誠

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せきゆすとーぶ

せきゆすとーぶ

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 年老いた祖母から石油ストーブの灯油の補給を頼まれた。
 少年はめんどくさいと思いつつも、もう祖母では灯油を入れるタンクすら持ち運べないので、ストーブからタンクを取り出し、外の物置まで行く。

 時刻はもう夕暮れだ。
 冬でも午後四時ごろはまだ明るい。
 もう日は暮れ始めているが。

 そんな中、物置を開け、中から灯油の入ったポリタンクを取り出す。
 ポリタンクには灯油がしみ込んでいて手で触るだけで灯油が手につく。
 少年は灯油が服につかないように注意しながらポリタンクを取り出し、石油ポンプ、正式名称は少年は知らないだろうが石油燃焼器具用注油ポンプを使いポリタンクからストーブの灯油タンクへと灯油を移していく。

 最初こそ上のポンプ部分を押して勢いをつけるが後は勝手に灯油が移動してくれるのを待つだけだ。

 そのしばしの間、少年は物置を見る。
 随分と古い物置だ。
 ただ灯油や庭掃除の道具なんかだけを入れて置くだけのもので、古くても問題ない。
 それほど大きくなく大人が入れる隙間もないような小さな物置なのだが、ポリタンクを入れてある方と反対、今は戸で暗がりになっているほうにふと視線を感じ、そして、目が合った。

 その狭い暗がりに誰かがいる。
 子供のようだった。
 隠れるように物置の奥に、両手で膝を包み込むように体育座りしていた。

 少年は驚き、慌てて、反対側の戸を開ける。
 きっとこの辺りでかくれんぼうでもしていたのだろうと。
 そんな子供が勝手に入り込んでいたのだろうと。

 だが、戸が開いたそこには誰もいなかった。
 庭掃除用の箒や熊手などが数本押し込まれていて、しかも子供ですら入り込むスペース自体がなかった。

 少年は掃除用具側の戸を閉め、もう一度ポリタンク側の戸を開けて、そちらから暗がりを覗き込む。
 すると、小さな子供が暗がりに座り込んでいるのだ。

 少年が驚いて固まっていると、暗がりの子供が抑揚のない声で、溢れるよ、と一言少年に忠告する。

 石油ストーブのタンクがすでに満杯になっていて、少年はすぐにポンプを止める。
 それから慌てて、物置の暗がりを確認するのだが、そこに人影はもうなくなっていた。

 ポリタンクをしまい、石油ストーブのタンクを家に持って帰って来て、少年は祖母にそのことを話す。
 すると、祖母は、ああ、最近はとんと見なかったけどまだいるのね、とそう言った。

 祖母もその正体は何者か分かってはいないが、灯油の匂いが好きでたまにあの物置に入り込んでいるそうだ。
 ついでに灯油の匂いが好きというのは、本人から祖母が直接聞いたという話だ。

 祖母は座敷童的なものじゃないかしら、と言っていた。
 確かに灯油を溢れるのを教えてくれた、と少年も納得した。

 ところで、油を舐める妖怪は、よく油を盗んだ者をの成れ果てという話がある。
 少年の家では灯油の消費量がとても多い。
 灯油の消費量なんて普段気にすることでもないし、比べることも稀だろうから、少年の一家は気づいてはないが。



 
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