それなりに怖い話。

只野誠

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あまなつ

あまなつ

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 寒い時期、家の庭では甘夏が大きく実っている。
 黄色く大きく実った実は酸っぱくて、そのまま食べるのに向かない。

 少女は家の庭で採れた甘夏だからだと思っていたが、実際は少し違う。
 酸味抜きのための熟成貯蔵をしなければならないのだが、少女はそんなことは知る由もない。

 ただ少女の家では、母親がその甘夏でマーマレードを作るので、寒いこの時期には収穫することになる。

 その日は週末だったが、少女の父親は仕事でいない。
 だから、少女とその母は、庭に出て黄色く大きく実った甘夏を収穫する。
 高枝切りばさみで、実を切り、落ちてきたそれを母が拾うといった感じだ。
 特に肥料などもあげたわけでもないのに、毎年大きく実る。

 休日に数時間ほど作業していると、寒いのにも関わらず、少女の頬に汗が流れていく。
 特に高い位置に実っている実を取るのは大変だ。

 それを見て母親が、今日はこれくらいで、と言った。
 少女は、まだまだ頑張れると言ったが、一度にマーマレードを作れる量があるから、とそれを断る。
 実際、かなりの量の甘夏が収穫できている。
 確かに十分な量だ。
 この量を、マーマレードにするのも大変な作業だ。

 明日はそっちを手伝わないと、と少女が思っていると、ちょうどいい場所に濃く黄色く実った実を一つ見つける。
 最後にあれだけ、と言って、高枝切りばさみを巧みに操り、鋏の部分をヘタの少し上へと誘導する。

 すると、その実がくるりと回り少女の方へ向かい正面を向く。

 なぜ、甘夏に正面があると思ったのかって?

 顔があったからだ。
 目と口、それと鼻。
 人間のようなそれらの部位が甘夏についていたのだ。

 少女はそんな人面甘夏と目が合い、高枝切りばさみを持つ手を驚いて離してしまう。
 すると、その甘夏が口を開き、それでいい、私は神様の物だ、とそう言ったのだ。

 少女が悲鳴をあげると母親がやってきて、少女を心配する。
 今あったことを、甘夏に顔があり喋ったことを言うと、母親は笑った。

 そして、じゃあ、あの一個は残しておかないとね、とそう言った。

 その実はいつの間にか無くなっていた。
 大きな実なので、落ちればわかるはずなのだが。
 神様が取っていったのだろうか。


 
 
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