それなりに怖い話。

只野誠

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みずのおと

みずのおと

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 ジョボジョボジョボと水が流れるような音が聞こえてくる。
 音の大きさからして、かなりの量が流れる音だ。

 どこかそれなりに高いところから、水を流すような、そんな音だ。

 深夜、そんな音に起こされた女は、最初は夫がトイレに行っているのかと思った。

 だが、夫は隣に寝ている。
 それに水が流れる音は庭から聞こえて来ている。
 女はすぐに夫を起こし、音のことを伝える。

 夫も水の音に気づき、なんだなんだと言い始める。
 ただ、いきなり庭に出て確かめるのも怖い。
 もう深夜の一時過ぎだ。

 なので、夫はこっそりベランダから庭の様子を見てきた。
 それを女は家の中で待っていた。

 しばらくして夫が青い顔をして戻ってくる。
 そして、夫は言うのだ。

 見知らぬ女が大きなツボを持って庭に水を流していたと。

 それを聞いた女は意味が分からなかった。
 深夜一時過ぎに人の家の庭で、ツボから水を流す、さすがに常軌を逸している。
 そして、今度は懐中電灯を持ち、夫婦二人でベランダに出て、注意してみよう、それでダメなら警察を呼ぼう、という話になった。
 二人はベランダの戸をすぐ閉めて鍵をかけれる状態にしてから、ベランダへと出た。
 そして、今も大きなツボから庭に水を流している見知らぬ女を懐中電灯で照らしてみる。

 夫が言った言葉通りの光景がそこにはあった。
 見知らぬ女は一抱えもある大きなツボ、ツボというよりは水瓶とでもいうのか、そういった容器からジョボジョボと音を立てて水を流していた。

 夫がその見知らぬ女に向かい懐中電灯で照らし続け、何やってるんだ、そう声を張り上げた。
 すると、見知らぬ女がベランダを見上げる。

 その顔は、何もなかった。
 水瓶の一部かと思うほど、ツルツルで、懐中電灯の光を少し反射するほどだった。
 夫婦がその顔にあっけに取られていると、のっぺらぼうとでもいうべき女は、自らが流した水、それがたまってできた水たまりに、スルリと入っていった。

 よくわからない光景だ。

 今できたばかりの水たまりなのに、まるで底なしの井戸に降りてでも行くかのように、のっぺらぼうの女は水たまりの中へと消えていったのだ。

 そのあとには、静かな夜だけが残っていた。
 朝になってから、庭を確かめる。
 確かに水たまりはできている。
 だが、木の枝なので突っついても、底には硬い地面があるだけだ。

 昨日の夜のあれは何だったのだろう、と夫婦は話し合うが答えが出るわけもない。
 ついでにその時できた水たまりは一週間ほど乾くことはなかった。

 水たまりが干上がった後、その場所を夫が掘ってみたが、何かが出てくるようなこともなかった。

 だが、たまに深夜一時過ぎに、庭から水が流れる音がそれ以降聞こえるようになった。
 それは水たまりが干上がった夜に聞こえて来る。



 
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