それなりに怖い話。

只野誠

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ものおと

ものおと

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 男が寝ていると物音がする。
 嫌な物音だ。
 カサカサカサっと、何かが床を這いずる音だ。

 まだ冬だというのに、あの虫かと男は思う。
 だが、寒いので布団から出たくはないし、あの虫だったとして、今電気をつけたところで発見はできないだろう。
 明日にでも設置型の駆除剤でも買って来ないとなんてことを布団の中で考える。

 だが、それはそれとして、カサカサカサという物音が気にならないわけはない。
 それにやけに物音も大きい。

 男も本当にあの虫か? と思い始める。
 音の大きさからしてネズミか何かではないのか? と。

 寒い中、男はやっと布団から出る勇気を持つ。
 身を起こし、夜の寒さに身を震わしながら、枕近くのライトの電源を入れる。

 その光は奇妙な物を映し出す。

 それは頭蓋骨だった。
 頭蓋骨が部屋の床の真ん中に転がっていたのだ。

 男は最初それを頭蓋骨だとは理解できなかった。
 だが、すぐにそれが人間の頭蓋骨だと理解できて、ベッドの上でビクッと反応をする。

 その音に反応して、頭蓋骨が動いた。そして何かが出てくる。
 辺りを探るように動くそれは、まごうことなき触覚だった。
 男は理解できなかった。
 頭蓋骨の中にカニがいたのだ。
 いや、カニではない、ヤドカリだ。
 そんなような生物が頭蓋骨を巻貝のように背負っているのだ。

 大きなハサミを持ち、髭のような触覚を動かし、辺りの様子を伺っている。
 頭蓋骨を背負える程の大きさのヤドカリだ。
 それなりに大きい。

 男は何も理解できなかった。
 なんで頭蓋骨が真夜中に部屋の真ん中にいてヤドカリに背負われているのか、何一つ理解できなかった。
 けれど、そのヤドカリが男の存在に気づく。

 すると、カサカサカサと音を立てて、床の上を歩き、物陰へと、本棚と本棚の間へと消えていった。
 どう見ても背負っている頭蓋骨が入れる隙間ではなかったのだが、本棚と本棚の間に吸い込まれるように入って行った。

 男も慌ててベッドから起きだし、本棚と本棚の間を覗くが既に何もいない。
 その後、本棚を動かしてみるが、もちろん、そんなヤドカリはいない。
 いるわけもない。

 あのヤドカリが何だったのか、男には理解できなかったが、あのヤドカリを見たきっかり三ヶ月後、男の親戚が死んだ。
 あの頭蓋骨は、その親戚のものだったのかもしれない。
 男は誰に言うでもなくそんなことが頭に浮かんできた。



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