それなりに怖い話。

只野誠

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かいもの

かいもの

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 男はスーパーに買い物に来ていた。
 普段は妻任せだったのだが、その妻が風邪で寝込んでしまったからだ。

 スーパーに来たのはいつぐらいだろうか、と男は考える。
 大人になってから、このスーパーに来るのは初めてかもしれない。
 普段は買い物に行っても駅前の新しいスーパーまで行っていたからだ。
 男が子供の頃来た時と、そう変わらないので懐かしさすら感じられる。
 久しぶりに来ると様々な食品や日用品が売っていて少しワクワクする。
 コンビニとも違う高い棚にぎっしりと商品が詰め込まれている。

 生鮮食品があるためか、離れた位置でも少し寒く湿った冷気を感じる。

 男はそんなスーパーを色々と見て回る。
 まずは食パンが切れていたので、食パンをかごに入れる。
 卵ももうなかったはずだと、ワンパックを手に取りかごに入れる。
 そのあと、歩き回っていてキャベツが目についたのでキャベツを手に取る。
 とりあえず家にはもうなかったはずだし、キャベツならあっても無駄にならないはずだと、かごに入れる。

 それと病気の妻のために、パウチされたパックのおかゆを選ぶ。
 栄養をつけるために中華がゆにするか、食欲がないだろうからさっぱりとした梅干しがゆを買うか迷い、その両方をかごに入れる。
 中華がゆがダメだったら、梅干しがゆを食べさせればいい。

 それと風邪の時は水分補給が大事と、普段買わないスポーツ飲料も買う。

 気が付けば買い物かごも大分重くなった。
 最後に体にいいからと、玉ねぎを一袋入れて、レジへと並ぶ。
 無人レジもあったが、やり方に不安があった男は有人のレジへと並んだ。

 無人レジはすいていたが、有人のレジのほうは客が結構並んでいる。
 男はやっぱりみんなやり方がわからないのか、とそう思い列に並んでいた。

 だが、何かがおかしい。
 並んでいる客もレジを打つ店員もどこか生気がない。
 青白い血色の悪い顔をして、無表情で覇気がなく、フラフラとしている。
 心ここにあらずといった感じだ。
 レジを打つ店員の手も非常にゆっくりだ。

 それでも長いこと待ち、やっと男の番がくる。
 レジ横の一番大きなビニール袋をとり、最後にかごの上にかぶせ、これもお願いします、と、男はレジの店員に言った。

 そうすると、レジの店員はゆっくりとうなずく。
 その時、店員の顔から何かがポトポトと落ちる。

 レジ台の上に落ちたそれを見て、男は寒気がした。
 それは蛆虫だったのだ。
 どこから、と男がレジ係の店員をよく見ると、店員の死んだような黄色い白目の横から蛆虫が這い出てきているのが見えて、男は短い悲鳴を上げる。
 その後、その店員が口を開くと、そこにも蛆虫が数匹蠢いていた。

 そこで助けを求めるために、男が周りを見てみると、並んでいた客も他の店員も全員そんな感じだったのだ。
 ここで正常なのは自分だけだと、理解した男はレジの店員に向かい、すいません、無人のレジを試してみたいのですがいいですか? と、質問する。
 すると、レジの店員はぎこちない動きで無人レジの方を指さす。
 その際にも蛆虫がポトポトと落ちていく。
 その様子はまるで亡者のようだ。

 男は震える手を、いや、震える体を何とか支えて、買い物かごを持ち、無人レジの場所まで行き、商品を何とか通していく。
 慣れないながらも何とか会計を終えた男は走って家まで帰った。
 特に亡者のような連中に襲われることも追いかけられることもなかった。

 ついでにスーパーで買ったものは、すべてが賞味期限切れだし、食パンはカビの塊だったし、キャベツなどは化石のように乾ききっていた。
 家に帰った男は買ってきた物を即座にゴミ箱に袋ごと捨てた。

 そのことを、風邪で寝込んでいる妻に話すと、妻は、どこのスーパーに行ってきたのよ、とあきれながら半信半疑でそう言った。
 男が、大通りに昔からあるあのスーパーだよ、と言うと、妻はさらに呆れて、あのスーパーはもう十年以上前に潰れている、とそう言ったのだ。

 後日男がそのスーパーを訪れると、確かに空き地になっており売地の看板が立っていた。

 何でも曰くつきの土地だったらしく中々売れないのだとか、そんな話だ。
 そんな土地で男の知っているスーパーは、二十年以上も営業していたんだな、とそう思ったが、もうその空き地には近寄らないことにした。

 ところで、そんなスーパーで買い物をしてしまった男が、そのまま無事でいられると、あなたは思いますか?




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