それなりに怖い話。

只野誠

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かお

かお

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 少女は夜が怖かった。
 特に寝る前、自室からトイレに行く時が怖くて仕方なかった。
 その理由は顔だ。

 少女の自室はトイレのすぐそばにある。
 反対側に一階へと通じる階段があるのだが、そこから覗いて来るのだ。
 顔が。

 人の顔とは言えない。
 ただ人のような、部分的に人、いや、人と別の何かが交じり合ったような、異形の顔だ。

 では、別の何か、というのは何か?
 鳥、犬、蛇、その三種だろうか。
 鳥のくちばしを持ち、犬の顔だちをしていて、分かりにくいが蛇のような目を持っている。
 それらを無理やり人の顔の形に押し込めたような、まさしく異形の顔だ。

 その顔は、大体一瞬しか存在しない。
 少女が寝る前にトイレに行くとき、自室のドアを開けた瞬間に、トイレと反対方向の階段から顔だけを出し、少女を覗いて来るのだ。

 少女がハッとなって視線をそちらに向けるとそれはもういない。
 本当に一瞬だけだ。
 なら、なんでそんな異形の顔の詳細が分かるのかって?
 それは必ず、毎日少女が寝る前にトイレへと行く際、現れるからだ。
 それに大体はすぐ消えるが、三ヶ月に一度くらいの割合で一瞬で消えない時がある。
 といっても最長で五秒くらいだろうか、少女と目が合い、見つめ合うことがある。
 その場合も、数秒後には異形の顔の方から階段の物陰へと引っ込んでいくのだが。

 これは少女にとって、もう何年も続いていることだ。

 覗いて来るだけで何もしてこない。
 そもそも、すぐに姿を消してしまう。
 けれど毎日必ず同じ場所にいるのだ。

 それでも少女にとっては、決して、それは日常にはならず恐怖の対象だった。

 誰に言っても信じてもらえないし、それが写真や映像に残ることもない。
 長年その異形の顔は正体不明のままだった。

 だが、不意に少女はその正体、まあ、恐らくだが、知ることになる。

 それは母方の実家に行った時だ。
 少女からは祖母にあたる人物の部屋に案内された時だ。
 恐らくは外国の土産なのだろうか、あの異形とそっくりな仮面が部屋に飾ってあったのだ。
 祖母の話では、魔よけのお面という話だった。

 だが、少女はその仮面からも、底知れない恐怖を確かに感じた。
 魔よけどころか、これは呪いの仮面なんじゃないか、そう思えて仕方がなかった。

 ついでに、少女が大人になってからも、その異形の顔は、夜寝る前にトイレへ行こうとすると、物陰から覗いて来るというのだ。
 それは祖母がこの世を去るまで続いたという話だ。

 少女が祖母から愛されていたのか、もしくは憎まれていたのか、それも不明のままだ。



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