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ゆぶね
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女は独り暮らしだ。
だから、シャワーは浴びても毎日湯船にお湯を張るようなことはしなかった。
ただ、その日はとても寒かったので、湯船にお湯を入れることにした。
とはいえ、もともと掃除はしてあったので、適当に湯船にお湯を流してボタンを押すだけだ。
しばらくすると電子音声がお湯を入れ終えたことを教えてくれる。
女は風呂場へ行き、体を洗う。
そして、湯船の蓋を開けたところで、顔を歪める。
湯船に張ったお湯から何とも言えない嫌な臭いがしてきたからだ。
それだけではない。
見るからにお湯が濁っている。
お湯が灰色に見え、手を突っ込んでみると、妙な粘り気すら感じる。
しばらくお湯を入れてなかったから、そのせいかも、と女は思う。
さすがにそのお湯に入る気にはなれない。
本当に、生臭いとも腐敗臭とも、どこか違う嫌な臭いがするのだ。
それによくよく見れば長い髪の毛まで、たくさん漂っている。
その漂っている髪の毛も女の髪の毛でもない。
明らかに女の髪よりも長く、また色も違うのだ。
それを見た女は首を傾げ疑問に思うものの、風呂の蓋を閉めてため息を吐き出す。
せっかく久しぶりに湯につかろうと思ったのに、と。
だが、蓋を閉めた後、ピチャン、ピチャン、チャポンとお風呂の中で水音がしだす。
水滴が落ちるような小さな音ではない。
それなりに大きなものが、水面を揺らすような音だ。
女はその音が気になったので、再度お風呂の蓋を開ける。
そして、そこにあったものを見て、背筋を凍らせる。
それは髪の毛だった。
一本や二本ではない。
髪の毛というよりもカツラといった方がわかりやすいかもしれない。
長い黒髪の塊が、お風呂の水面をユラユラと漂っていたのだ。
女はパニックになりながらも、お風呂の栓につながるボールチェーンを力の限り引っ張った。
お湯が流れ出す。
だが、カツラのような髪の毛の塊がそのまま流れていくとも女には思えない。
それほどまでその髪の毛の塊は大きかったのだ。
しかし、女の予想を超えて、もしくは実体がなかったのか、それは栓の抜けた排水溝からお湯とともに流れていってしまった。
お湯が少なくなり、音を立ててお湯が流れていく。
その音が女には、誰かの悲鳴のように聞こえていた。
髪の毛は絡まることも、詰まることもなく、まるでお湯と同じように排水口へと流れていった。
すべてが流れていったあと、お風呂の栓を固く閉め、もう二度とその浴槽にお湯が入れられることはなくなった。
それだけの話と言えば、それだけの話だ。
だから、シャワーは浴びても毎日湯船にお湯を張るようなことはしなかった。
ただ、その日はとても寒かったので、湯船にお湯を入れることにした。
とはいえ、もともと掃除はしてあったので、適当に湯船にお湯を流してボタンを押すだけだ。
しばらくすると電子音声がお湯を入れ終えたことを教えてくれる。
女は風呂場へ行き、体を洗う。
そして、湯船の蓋を開けたところで、顔を歪める。
湯船に張ったお湯から何とも言えない嫌な臭いがしてきたからだ。
それだけではない。
見るからにお湯が濁っている。
お湯が灰色に見え、手を突っ込んでみると、妙な粘り気すら感じる。
しばらくお湯を入れてなかったから、そのせいかも、と女は思う。
さすがにそのお湯に入る気にはなれない。
本当に、生臭いとも腐敗臭とも、どこか違う嫌な臭いがするのだ。
それによくよく見れば長い髪の毛まで、たくさん漂っている。
その漂っている髪の毛も女の髪の毛でもない。
明らかに女の髪よりも長く、また色も違うのだ。
それを見た女は首を傾げ疑問に思うものの、風呂の蓋を閉めてため息を吐き出す。
せっかく久しぶりに湯につかろうと思ったのに、と。
だが、蓋を閉めた後、ピチャン、ピチャン、チャポンとお風呂の中で水音がしだす。
水滴が落ちるような小さな音ではない。
それなりに大きなものが、水面を揺らすような音だ。
女はその音が気になったので、再度お風呂の蓋を開ける。
そして、そこにあったものを見て、背筋を凍らせる。
それは髪の毛だった。
一本や二本ではない。
髪の毛というよりもカツラといった方がわかりやすいかもしれない。
長い黒髪の塊が、お風呂の水面をユラユラと漂っていたのだ。
女はパニックになりながらも、お風呂の栓につながるボールチェーンを力の限り引っ張った。
お湯が流れ出す。
だが、カツラのような髪の毛の塊がそのまま流れていくとも女には思えない。
それほどまでその髪の毛の塊は大きかったのだ。
しかし、女の予想を超えて、もしくは実体がなかったのか、それは栓の抜けた排水溝からお湯とともに流れていってしまった。
お湯が少なくなり、音を立ててお湯が流れていく。
その音が女には、誰かの悲鳴のように聞こえていた。
髪の毛は絡まることも、詰まることもなく、まるでお湯と同じように排水口へと流れていった。
すべてが流れていったあと、お風呂の栓を固く閉め、もう二度とその浴槽にお湯が入れられることはなくなった。
それだけの話と言えば、それだけの話だ。
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