それなりに怖い話。

只野誠

文字の大きさ
767 / 769
ねこ

ねこ

しおりを挟む
 少女が小学校から帰る途中に猫と出会う。
 全身真っ黒な黒猫だ。
 目だけが黄色い。

 少女も始めは、影の中に黄色い宝石が二つ浮いている、そう錯覚する程真っ黒な猫だ。

 その猫はブロック塀でできた影の中にちょこんと座り込んでいる。
 少女が駆け寄っても動きもしないし、鳴きもしない。

 あまりにも動かないので、実は人形じゃないかと少女が猫に触れるとちゃんとぬくもりがあり、撫でたら黒猫は気持ちよさそうにその宝石のような目を細めた。
 猫を一通り撫でた後、少女は黒猫に何かあげられるような食べ物はないかと、自身の荷物を探るが、そんなものは持っていなかった。

 少女は黒猫に別れを告げて、再び帰路に就く。
 撫でられた黒猫はしなやかに立ち上がり少女の後についていく。
 少女もついてくる黒猫に気づき、ゆっくりと黒猫を見ながら歩く。

 けれど、道が十字路にあたりブロック塀が、それが作る影が途切れたところで、黒猫は立ち止まる。
 まるで影から出るのが嫌だと言っているかのようだ。

 少女はついてきていた黒猫が立ち止まったことを少しだけ残念に思い黒猫に振り返り、手を振ってから前方を向く。

 そして、唖然とする。
 それは真っ黒な影、いや、闇だった。
 人型をした黒い塊だった。
 腐敗臭とも違う嫌な臭いを漂わせた、人型をした黒い闇だった。

 少女は恐怖よりも理解できない存在に呆然と立ち尽くしてしまう。

 逃げることも思いつかない少女に黒い塊が手を伸ばす。
 少女にその手が触れようとした瞬間、甲高い鳴き声が背後から聞こえてくる。
 後をついてきた黒猫だ。
 黒猫が闇を威嚇するように鋭く鳴き声を上げる。

 そうすると人型をした黒い塊は少女から離れ、空間に溶けるように消えていった。

 そこでやっと少女に恐怖がやってくる。
 少女は助けてくれた猫を抱き上げて、わんわんと泣いた。

 少女が落ち着いた後、猫はするりと少女の腕から抜け出して、少女に向かい確かに、人の言葉で言ったのだ。

 助けてやったんだから、死んだらおまえの死体は喰わせろ。

 と。
 確かに黒猫はそう言ったのだ。
 そしてその黒猫はニヤリと笑い、影の中へと消えていった。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

洒落にならない怖い話【短編集】

鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。 意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。 隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

きさらぎ駅

水野華奈
ホラー
親友から電話があった。 きさらぎ駅という場所にいるらしい… 日常の中の小さな恐怖が今始まる。 触れてしまったが最後。 二度と戻れない。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

『ショート怪談』訪れるもの

見崎志念
ホラー
一話完結のお話をぽつぽつとしたためております。ドロッとしたよくわからないものに対しての恐怖をお楽しみください

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

処理中です...