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それはそこにいる
それはそこにいる:05
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その夜、昨日のような夢を千尋は見ることもなかった。
目覚めの良い朝だった。
お祓いとお札が効いたのだろう。
千尋は大学へ行く準備をし始めた。
昨日は玲子を巻き込んで講義をさぼってしまっている。
今日もさぼるわけにはいかない。
準備を終えて、アパートを後にする。
念のために電気はまだつけっぱなしにしておく。
例の廃神社の前を通る。
千尋には今でも不気味に思えるが何かあるわけでもない。
無事に通り過ごし最寄り駅につく。
そして、電車が来るのを待つ。
少し混んだ電車が到着し、千尋もそれに乗り込む。
数駅程度の我慢だ。
そう思って、電車の窓から向かいのホームを見たとき、それはいた。
向かいのホームに佇んでいた。
廃神社で見たときと同じ格好、同じポーズでそれはいた。
朝だろうと関係なく、それは向かい側のホームに佇んでいた。
千尋は悲鳴を上げてその場に腰を抜かした。
色々と騒ぎがあった後、錯乱状態となった千尋は大学にも行けず、途中の駅で降ろされ、その駅の駅員室に避難させられていた。
急に叫び出した理由を聞かれ、錯乱していた千尋は素直に、おばけを見たからと言ってしまい、駅員たちからは奇妙な目で見られた。
それも当たり前だ。
今は晴れた夏の暑い日差しの下なのだ。
そんな中でおばけを見た、と言われても駅員も困るだけだ。
ただ千尋はどうすることもできなった。
大学にそのまま行く気にはなれなかったし、部屋に帰るにはあの神社の前を通らないと行けない。
今の千尋にはそんなことはできない。
そんな精神状態ではなかった。
千尋からすれば、お祓いしたのに、朝なのに、こんなに日差しの強い晴れた日なのに、周りに他の人間もたくさんいたのに、それはそこにいた、と言う事実が酷くのしかかって来ていた。
もしこの場に玲子がいてくれたら、朝にもいたなら、おばけじゃなくて人間だったんじゃない? と笑い飛ばしてくれたかもしれない。
だが、千尋にはあれがどうしても生きた人間には思えなかった。
千尋は自分の部屋から出なければ良かった。
そう思うようになっていた。
あのお札に守られている部屋なら安全のはずだと。
でも部屋に帰るにはどうしてもあの廃神社の前を通らないと行けない。
今の千尋にはそれがどうしても怖くてできなかった。
時間がたち、ある程度落ち着いた千尋は途中で降りた駅からも追い出され、なんとなく人通りの多い場所を彷徨い歩いていた。
色々と考えるがいい案がまるで浮かばない。
そんな千尋が顔を上げると、街中なのに、人通りが多い場所なのに、やはりそれはそこにいた。
交差点の向こう側。
千尋と向かい合うように、千尋を待つように、横断歩道の向こう側に例のポーズで立っていた。
そこで千尋はやっぱりはあれは生きている存在ではないと確信する。
その存在以外にも横断歩道を待っている人間はいるのだが、誰一人として、その存在に気づいていない。
今初めて千尋も気づいたのだが、その存在は裸足なのだ。
流石に裸足でそんな女がいれば奇異な目で見る人は少なからずいるはずだ。
なのに、誰一人としてその存在に、千尋以外の誰もその存在に、気づいた様子がない。
だが、そんなこと千尋にとってはどうでもいいことだ。
震えだし腰砕けになる前に、信号機が変わる前にと千尋は走って逃げだしていた。
必死に走り、逃げ出していた。
思うようにうまく走れない。足は恐怖で震え、もたつき、絡み合いそうになる。
それを何とか、必死で動かして走った。
そして、行く先々に、それはいた。
目覚めの良い朝だった。
お祓いとお札が効いたのだろう。
千尋は大学へ行く準備をし始めた。
昨日は玲子を巻き込んで講義をさぼってしまっている。
今日もさぼるわけにはいかない。
準備を終えて、アパートを後にする。
念のために電気はまだつけっぱなしにしておく。
例の廃神社の前を通る。
千尋には今でも不気味に思えるが何かあるわけでもない。
無事に通り過ごし最寄り駅につく。
そして、電車が来るのを待つ。
少し混んだ電車が到着し、千尋もそれに乗り込む。
数駅程度の我慢だ。
そう思って、電車の窓から向かいのホームを見たとき、それはいた。
向かいのホームに佇んでいた。
廃神社で見たときと同じ格好、同じポーズでそれはいた。
朝だろうと関係なく、それは向かい側のホームに佇んでいた。
千尋は悲鳴を上げてその場に腰を抜かした。
色々と騒ぎがあった後、錯乱状態となった千尋は大学にも行けず、途中の駅で降ろされ、その駅の駅員室に避難させられていた。
急に叫び出した理由を聞かれ、錯乱していた千尋は素直に、おばけを見たからと言ってしまい、駅員たちからは奇妙な目で見られた。
それも当たり前だ。
今は晴れた夏の暑い日差しの下なのだ。
そんな中でおばけを見た、と言われても駅員も困るだけだ。
ただ千尋はどうすることもできなった。
大学にそのまま行く気にはなれなかったし、部屋に帰るにはあの神社の前を通らないと行けない。
今の千尋にはそんなことはできない。
そんな精神状態ではなかった。
千尋からすれば、お祓いしたのに、朝なのに、こんなに日差しの強い晴れた日なのに、周りに他の人間もたくさんいたのに、それはそこにいた、と言う事実が酷くのしかかって来ていた。
もしこの場に玲子がいてくれたら、朝にもいたなら、おばけじゃなくて人間だったんじゃない? と笑い飛ばしてくれたかもしれない。
だが、千尋にはあれがどうしても生きた人間には思えなかった。
千尋は自分の部屋から出なければ良かった。
そう思うようになっていた。
あのお札に守られている部屋なら安全のはずだと。
でも部屋に帰るにはどうしてもあの廃神社の前を通らないと行けない。
今の千尋にはそれがどうしても怖くてできなかった。
時間がたち、ある程度落ち着いた千尋は途中で降りた駅からも追い出され、なんとなく人通りの多い場所を彷徨い歩いていた。
色々と考えるがいい案がまるで浮かばない。
そんな千尋が顔を上げると、街中なのに、人通りが多い場所なのに、やはりそれはそこにいた。
交差点の向こう側。
千尋と向かい合うように、千尋を待つように、横断歩道の向こう側に例のポーズで立っていた。
そこで千尋はやっぱりはあれは生きている存在ではないと確信する。
その存在以外にも横断歩道を待っている人間はいるのだが、誰一人として、その存在に気づいていない。
今初めて千尋も気づいたのだが、その存在は裸足なのだ。
流石に裸足でそんな女がいれば奇異な目で見る人は少なからずいるはずだ。
なのに、誰一人としてその存在に、千尋以外の誰もその存在に、気づいた様子がない。
だが、そんなこと千尋にとってはどうでもいいことだ。
震えだし腰砕けになる前に、信号機が変わる前にと千尋は走って逃げだしていた。
必死に走り、逃げ出していた。
思うようにうまく走れない。足は恐怖で震え、もたつき、絡み合いそうになる。
それを何とか、必死で動かして走った。
そして、行く先々に、それはいた。
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