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かんごふさん
かんごふさん
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今より少し前の時代。
看護婦という言葉をやめ、看護師という言葉が出来た頃の時代。
その頃の、ただのよくある噂話、子供の間だけで流行る噂話の一つだ。
「かんごふさんの噂? あー、だめだよー、今は看護師って言わなきゃダメなんだよー」
その友人は得意げな顔をしてそう言った。
そう言われた少女は少し怒った顔を見せる。
「そのかんごふさんとは違うの。病院にいるかんごふさんじゃないの」
とは言ってみたものの、恐らくはその看護婦である。
その事は少女にも分かっている。
分かっていても友人にそう言われると腹立たしいものがあった。
だから、病院の看護婦じゃないということにした。
「えー、じゃあ、どのかんごふさんなの?」
友人が怪訝そうな顔でそう聞いてくる。
「だから、噂、噂のだよ」
少女は慌ててそう言っているが、自分でもちゃんと理解できてはいない。
「どんな噂なの?」
「私も詳しくは知らなよ。でも、その噂を聞いて夜にトイレに行くと、トイレの天井にかんごふさんが張り付いているんだって」
それだけが少女が聞いた噂の一部だ。
それを想像すると少女には不気味に思えた。
「ええー、なにそれ」
と言って、友人は少し怖がるそぶりを見せた。
少女はそれに気を良くする。
「それでそれに気づくと殺されちゃうんだってさ」
今度は少女のほうが得意げになりそう言って見せる。
「気づかなければいいの?」
と、友人が恐る恐る聞いてくる。
少女はさらに気分を良くする。
「らしいよ。まあ、肝心のかんごふさんの噂の内容を私も知らないんだけど……」
そう、少女もその噂の内容を知らない。
もしかしたら、誰も知らないのかもしれない。
「なによ、知らないんじゃない」
そう言って友人はため息をついた。
「でも、夜中にトイレの天井にじっと張り付いていてこっちをじっと見ているんだって、怖くない?」
少女はその様子を鮮明に想像してしまい身を震わせる。
「んー、怖いっていうより変質者じゃないの?」
友人は呆れたようにそう言った。
「言われてみれば、そうかも……」
少女も言われてみてそう思った。
その夜、寝る前に少女はトイレに行く。
ふと、昼間友人に話したかんごふの噂話を思い出す。
もし仮に、天井に何かいても見て見ぬふりをすればいいだけだ、と少女は自分に言い聞かせる。
トイレの電気をつけて、ゆっくりとトイレのドアを開ける。
恐る恐るトイレの中を確認する。
もちろん誰もいない。
天井に誰かが張り付いているはずもない。
ただトイレの窓から真っ暗な闇が見えるだけだった。
少女は用を足すために便座に腰掛ける。
誰もいないのはわかっていても、なぜか視線を感じる。
窓の外の暗闇から。
誰もいないはずの天井から。
少女は恐る恐るトイレの天井を見る。
どれもいない。
いるわけもない。
少女は手早く用をすまし、トイレを後にする。
トイレのドアを閉めるとき、何かが落ちる音が聞こえる。
少女はギョッとして、トイレのドアを閉める手を止める。
まだトイレの中の電気はついている。
恐怖で高鳴る鼓動を抑えつつ、少女は再びトイレのドアを開ける。
そこには、トイレットペーパーが袋ごと落ちていた。
これが落ちた音だったと、少女は安堵する。
トイレの棚からこれが落ちただけと。
少女はトイレットペーパーの袋を棚に戻し、自分の部屋へと戻った。
なぜトイレットペーパーの袋が落ちたのか、それを気にしなかったことは幸運だったのかもしれない。
看護婦という言葉をやめ、看護師という言葉が出来た頃の時代。
その頃の、ただのよくある噂話、子供の間だけで流行る噂話の一つだ。
「かんごふさんの噂? あー、だめだよー、今は看護師って言わなきゃダメなんだよー」
その友人は得意げな顔をしてそう言った。
そう言われた少女は少し怒った顔を見せる。
「そのかんごふさんとは違うの。病院にいるかんごふさんじゃないの」
とは言ってみたものの、恐らくはその看護婦である。
その事は少女にも分かっている。
分かっていても友人にそう言われると腹立たしいものがあった。
だから、病院の看護婦じゃないということにした。
「えー、じゃあ、どのかんごふさんなの?」
友人が怪訝そうな顔でそう聞いてくる。
「だから、噂、噂のだよ」
少女は慌ててそう言っているが、自分でもちゃんと理解できてはいない。
「どんな噂なの?」
「私も詳しくは知らなよ。でも、その噂を聞いて夜にトイレに行くと、トイレの天井にかんごふさんが張り付いているんだって」
それだけが少女が聞いた噂の一部だ。
それを想像すると少女には不気味に思えた。
「ええー、なにそれ」
と言って、友人は少し怖がるそぶりを見せた。
少女はそれに気を良くする。
「それでそれに気づくと殺されちゃうんだってさ」
今度は少女のほうが得意げになりそう言って見せる。
「気づかなければいいの?」
と、友人が恐る恐る聞いてくる。
少女はさらに気分を良くする。
「らしいよ。まあ、肝心のかんごふさんの噂の内容を私も知らないんだけど……」
そう、少女もその噂の内容を知らない。
もしかしたら、誰も知らないのかもしれない。
「なによ、知らないんじゃない」
そう言って友人はため息をついた。
「でも、夜中にトイレの天井にじっと張り付いていてこっちをじっと見ているんだって、怖くない?」
少女はその様子を鮮明に想像してしまい身を震わせる。
「んー、怖いっていうより変質者じゃないの?」
友人は呆れたようにそう言った。
「言われてみれば、そうかも……」
少女も言われてみてそう思った。
その夜、寝る前に少女はトイレに行く。
ふと、昼間友人に話したかんごふの噂話を思い出す。
もし仮に、天井に何かいても見て見ぬふりをすればいいだけだ、と少女は自分に言い聞かせる。
トイレの電気をつけて、ゆっくりとトイレのドアを開ける。
恐る恐るトイレの中を確認する。
もちろん誰もいない。
天井に誰かが張り付いているはずもない。
ただトイレの窓から真っ暗な闇が見えるだけだった。
少女は用を足すために便座に腰掛ける。
誰もいないのはわかっていても、なぜか視線を感じる。
窓の外の暗闇から。
誰もいないはずの天井から。
少女は恐る恐るトイレの天井を見る。
どれもいない。
いるわけもない。
少女は手早く用をすまし、トイレを後にする。
トイレのドアを閉めるとき、何かが落ちる音が聞こえる。
少女はギョッとして、トイレのドアを閉める手を止める。
まだトイレの中の電気はついている。
恐怖で高鳴る鼓動を抑えつつ、少女は再びトイレのドアを開ける。
そこには、トイレットペーパーが袋ごと落ちていた。
これが落ちた音だったと、少女は安堵する。
トイレの棚からこれが落ちただけと。
少女はトイレットペーパーの袋を棚に戻し、自分の部屋へと戻った。
なぜトイレットペーパーの袋が落ちたのか、それを気にしなかったことは幸運だったのかもしれない。
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