21 / 769
がっこうのといれ
がっこうのといれ
しおりを挟む
まだスマホもないような時代の話だ。
小学生の少年は放課後にお腹を壊していた。
ただ教室近くのトイレを使うことはできない。
小学生、特に男子がトイレの個室を使うと言うことは、あだ名が「ウンコマン」になる確率が高いからだ。
そして、それは無慈悲にも素早くクラス中に広がるし、お腹を壊している今であればより酷いあだ名になることは請け合いだ。
だから少年は特別教室のある、人通りの少ない校舎のトイレを選んだ。
放課後教室で集まった友人らから、こっそり抜け出し、渡り廊下を直走り、人気のない、少なくとも少年が駆け込んだトイレのある階は人気がない、そんな校舎へと来ていた。
ただ上の階に音楽室があるせいか、今も楽器の音が聞こえてくるので寂しさなどを感じることもない。
少年にとってはもっとも頼りがいのある場所だ。
少年はそのトイレで用を足す。
それは何事もなく終わる。
少年は出したものを流し、服を整える。
全てが無事に終わった。
少年がそう思った瞬間、トイレの扉を「コンコン」とノックされる。
返事をしそうになるが、ここで返事をしてしまえば、声で自分とバレるかもしれない。
そう考えた少年は返事をしなかった。
しばらく少年が様子を見ていると、再び「コンコン」と扉をノックされる。
もし点検に来ている先生だったら、とも少年は考えたが、少年には返事をした瞬間友人らに笑われる方が容易に想像できた。
だから、少年は押し黙った。
下の隙間から、扉の前に誰かいることは影でわかる。
その人間は微動出せずにトイレの前に立ち、いくら待とうが声を掛けるでもなく定期的にトイレの扉をノックしてくる。
流石に少年も少し不気味に思い始める。
そこへ、上の階で鳴っていた吹奏楽の演奏が止まる。
休憩だろうか、終わりの時間が来たからであろうか、少年にはわからない。
だが、それにより少年の恐怖心は一気に加速した。
なんの音もなくなった静かな夕方の、人気のないトイレで、定期的にノックの音だけが響き渡る。
少年がいくら押し黙って耐えていようが、そのノックをにしている主が立ち去る気配がない。
余りにも長い間ノックされ続けているので、少年はとりあえず先生ではない、と結論づけた。
流石に見回りの先生であればすぐに声を掛けるはずだ。
なら友人らか? と少年は考える。
確かにその線はある。
何かといたずら好きな友人らだ。
これくらいのことはやってくるはずだと。
少年は和式便器の配管に足をかけ、音もなくトイレの壁を器用に登る。
そしてトイレの壁の上から扉の前を見る。
そこには誰もいない。
少年が茫然とする中、隣の個室のドアが閉まる音がした。
少年は慌てて床に降りる。
その時、少年は視線を感じる。
隣のトイレの個室。
その壁の上から、何者かが自分を見下ろす視線を確かに少年は感じた。
少年はそちらに振り向きたくなる衝動を必死で抑え、トイレの鍵を開け放ち、トイレから飛び出し、駆け出した。
すぐ近くの階段を上り、人がいるはずである音楽室を目指して走る。
すぐに音楽室に着き、その扉を開ける。
そこには帰宅準備をし始めている吹奏楽部の生徒が数人いて、急に開けたな垂れた扉と少年の方に視線を送っていた。
「あっ、す、すいません、間違えました!」
少年は人と会ったことで落ちつきを取り戻した。そして、音楽室の扉を閉め自分の教室へと帰って行った。
ここからは少年の知らない話なのだが、吹奏楽部の生徒が帰るために音楽室の扉を開けたとき、水に濡れたような「素足」の足跡が下の階から点々と続いていたとのことだ。
吹奏楽部の生徒たちはあの少年のものだと思っていたが、少年はちゃんと上履きを履いていたことに気づいてはいない。
小学生の少年は放課後にお腹を壊していた。
ただ教室近くのトイレを使うことはできない。
小学生、特に男子がトイレの個室を使うと言うことは、あだ名が「ウンコマン」になる確率が高いからだ。
そして、それは無慈悲にも素早くクラス中に広がるし、お腹を壊している今であればより酷いあだ名になることは請け合いだ。
だから少年は特別教室のある、人通りの少ない校舎のトイレを選んだ。
放課後教室で集まった友人らから、こっそり抜け出し、渡り廊下を直走り、人気のない、少なくとも少年が駆け込んだトイレのある階は人気がない、そんな校舎へと来ていた。
ただ上の階に音楽室があるせいか、今も楽器の音が聞こえてくるので寂しさなどを感じることもない。
少年にとってはもっとも頼りがいのある場所だ。
少年はそのトイレで用を足す。
それは何事もなく終わる。
少年は出したものを流し、服を整える。
全てが無事に終わった。
少年がそう思った瞬間、トイレの扉を「コンコン」とノックされる。
返事をしそうになるが、ここで返事をしてしまえば、声で自分とバレるかもしれない。
そう考えた少年は返事をしなかった。
しばらく少年が様子を見ていると、再び「コンコン」と扉をノックされる。
もし点検に来ている先生だったら、とも少年は考えたが、少年には返事をした瞬間友人らに笑われる方が容易に想像できた。
だから、少年は押し黙った。
下の隙間から、扉の前に誰かいることは影でわかる。
その人間は微動出せずにトイレの前に立ち、いくら待とうが声を掛けるでもなく定期的にトイレの扉をノックしてくる。
流石に少年も少し不気味に思い始める。
そこへ、上の階で鳴っていた吹奏楽の演奏が止まる。
休憩だろうか、終わりの時間が来たからであろうか、少年にはわからない。
だが、それにより少年の恐怖心は一気に加速した。
なんの音もなくなった静かな夕方の、人気のないトイレで、定期的にノックの音だけが響き渡る。
少年がいくら押し黙って耐えていようが、そのノックをにしている主が立ち去る気配がない。
余りにも長い間ノックされ続けているので、少年はとりあえず先生ではない、と結論づけた。
流石に見回りの先生であればすぐに声を掛けるはずだ。
なら友人らか? と少年は考える。
確かにその線はある。
何かといたずら好きな友人らだ。
これくらいのことはやってくるはずだと。
少年は和式便器の配管に足をかけ、音もなくトイレの壁を器用に登る。
そしてトイレの壁の上から扉の前を見る。
そこには誰もいない。
少年が茫然とする中、隣の個室のドアが閉まる音がした。
少年は慌てて床に降りる。
その時、少年は視線を感じる。
隣のトイレの個室。
その壁の上から、何者かが自分を見下ろす視線を確かに少年は感じた。
少年はそちらに振り向きたくなる衝動を必死で抑え、トイレの鍵を開け放ち、トイレから飛び出し、駆け出した。
すぐ近くの階段を上り、人がいるはずである音楽室を目指して走る。
すぐに音楽室に着き、その扉を開ける。
そこには帰宅準備をし始めている吹奏楽部の生徒が数人いて、急に開けたな垂れた扉と少年の方に視線を送っていた。
「あっ、す、すいません、間違えました!」
少年は人と会ったことで落ちつきを取り戻した。そして、音楽室の扉を閉め自分の教室へと帰って行った。
ここからは少年の知らない話なのだが、吹奏楽部の生徒が帰るために音楽室の扉を開けたとき、水に濡れたような「素足」の足跡が下の階から点々と続いていたとのことだ。
吹奏楽部の生徒たちはあの少年のものだと思っていたが、少年はちゃんと上履きを履いていたことに気づいてはいない。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる