それなりに怖い話。

只野誠

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ひとつのせかい

ひとつのせかい

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 男はひきこもりだった。
 高校時代にいじめられ、そこからひきこもり、自室の部屋が男にとって世界の全てになった。

 男は部屋の中だけでほとんど暮らしている。
 そこだけが男の世界であり、全てだ。

 たまに窓の外を男が見る。
 隣の家がいつの間にかに分譲住宅になっていた。

 そう言えば、少し前か、かなり前か、工事で五月蠅かったのを男は思い出す。

 今、外の世界はどうなっているのか。
 男にはそれも分からない。
 だが、男にとってはどうでもよい事だ。

 男の私物は、もう起動するのも重くなった古いスマホ一つだ。
 それだけが男と外の世界を繋ぐ唯一の物で男の持ち物だ。

 電気もつけない暗い部屋の中で男はスマホで外の情報を得る。
 だが、それらの情報は男には関係のない情報ばかりだ。
 男の世界は自分の部屋でほぼ完結しているのだ。
 外の世界の事など関係がないのだ。

 関係がないので、男はスマホを見るのを止め、布団の中に潜り込む。
 男にとって外の世界の事など興味がない。だから、外の世界がどうなっているのか、その情報にすら疎い。

 けど、変化があった。
 一日三食、部屋の前に置かれていたご飯が二食になり、そして、一食になった。

 それでも男は外の世界のことが気にならなかった。
 自分の部屋に篭り続けた。

 もう、男にとってこの部屋の外は未知の世界なのだ。
 別の世界なのだ。
 それに、男には希望もない。
 腹がすくから飯を食べているだけで、それを美味しいとも思えない。
 そう思っていた。

 そのうち、一食だったご飯も二日に一度になり、三日に一度と減っていった。
 男はそれにすら文句はなかった。
 逆にご飯をまだ用意してくれることに感謝すらしていた。

 男がベッドで腹が空いて目覚めると、枕元に黒い人影が立っていた。
 男にはそれが死神に思えた。

 連れて行くならさっさと連れてってくれ、と、男はその人影にそう言った。

 人影が何か言っていたが、男にはもう聞こえない。
 そうして、一つの世界が終わりを迎えたのだ。



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