それなりに怖い話。

只野誠

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あさ

あさ

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 女はなかなか寝付けなかった。
 それでも明日も仕事がある。
 寝れなくても横にならなければならない。

 ベッドの上でゴロゴロしながら、眠れるのを待つ。

 ふと、窓の隙間から光が射しこんでいるのが目に付く。
 ああ、寝れないうちにもう朝が来てしまった、そう、女は考えた。
 もう少しすれば、けたたましくも頼もしい、目覚ましが鳴りだすのだと。

 その少しの間のまどろみくらいは楽しもうと、女は起きずにベッドの身を任せる。
 気温はまだ寒く布団のぬくもりが頼もしい時期のはずなのだが、今の女にとってはそのぬくもりですら煩わしかった。
 だから、女は眠れなかったのだ。

 結構な間、まどろみに身を任せていても、目覚ましは一向に鳴らない。
 女は念のために、目覚まし代わりのスマホを手に取る。
 時刻は六時前だった。
 あと三十分くらいはこうしていられる。

 思ったよりも早く日が昇っていた、女はそう思ってベッドの上で寝がえりを打つ。

 それからまたしばらく時間が経つ。
 もうそろそろ目覚ましが鳴ってもおかしくない頃だが、一向に鳴る気配はない。

 そこで女はもう一度、スマホの時刻を確認する。
 そうすると朝の六時を僅かに過ぎたくらいだった。

 女はおかしいと思いつつも、眠れなかったから感覚がおかしくなっているのだろうと考えた。
 意識はあるがはっきりとしない。
 眠るほど意識は混濁していない。
 そんな狭間で女は目覚まし時計が鳴るのを待っていた。

 寝れなかったせいで、体自体はだるい。
 少しでも長く横になっていたいのだ。
 少し煩わしく感じる布団のぬくもりを感じながら、スマホのアラームが鳴るのを女は待っている。

 だが、眠れずにベッドの上で朝を迎えたのに、スマホのアラームは一向に鳴らない。
 女は薄目を開け、もうスマホの画面を見る。
 そこにはデジタルで、六時五分と表示されている。

 しばらくその数字を見つめていると、意識を一瞬だけ失い、そして、時計を見る。
 どういうわけか、スマホの時刻は五時五十七分を表示していた。

 女は夢でも見ていたのかと、そう思った。
 そして、時計を見続ける。
 気が付くと目が閉じていて、目を開ける。
 電源が切れたスマホを握っている自分の手が見える。
 スマホの電源を入れる。
 画面に表示されたのは五時五十九分だ。
 女は明らかにおかしい、そう思い身を起こす。
 スマホが故障でもしているのではないかと疑ったてのことだ。
 身を起こした後、部屋の寒気に体を震わせて、部屋の壁掛け時計を見る。
 ちょうど六時を指し示している。

 スマホの時刻表示がおかしいわけではない。
 ただ、女はもう一度ベッドに横になる気はなかったので、トイレへいき、そして、洗面台の前に立つ。
 そこで一息つく。
 鏡を見つめ、寝不足で酷い自分の顔を見る。
 我ながら酷い顔だと、女がそう思った時だ。
 遠くでスマホのアラームが鳴りだしているのに気づく。
 やっと鳴ったか、と女は慌てて自室に戻りベッドの上に投げ出されているスマホを手に取る。
 そして、アラームを止めた時、スマホに表示されている時刻に驚く。
 スマホの時刻は既に七時を指し示している。
 慌てて、壁掛け時計も確認するが、朝の七時を指し示している。

 鏡の前で一時間近くも自分の顔を見ていたことになる。

 女は慌てて身支度をし始める。
 まだ遅刻するような時刻ではない。

 女は今朝の出来事はいったい何だったのか、理解はできなかったが、会社に遅刻もしなかった。

 ただそれだけの話だ。




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