それなりに怖い話。

只野誠

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はさみ

はさみ

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 少女はハサミが嫌いだった。
 ちゃんとしたハサミの閉じるときの感覚がとても嫌いだった。
 あのギィギィギィ…… ジョキンとしながら、重厚な金属が閉じていく感じが嫌いだった。

 少女が家に一人で留守番しているときだ。
 ギィギィギィ…… ジョキン、ギィギィギィ…… ジョキンと、大きなハサミを閉じるような音がどこからともなく聞こえてきた。
 少女はビクッとして、音の出どころを探る。

 少女は二階にいたのだが、どうも一階から聞こえてくるようだった。

 一階に行って少女は音の出どころを探る。
 その音は一階にある母の作業部屋から聞こえて来ていた。

 確かに、ハンドメイドを趣味とする母なら、大きなハサミを持っていてもおかしくはない。
 だが、今、家には少女一人なのだ。
 母がいるわけでもない。
 ハサミの音が鳴るのはおかしいのだ。

 しかも、ハサミの音は断続的に聞こえてきている。
 ギィギィギィ…… ジョキン、と。

 少女は作業部屋の戸を少しだけ開けて中を見る。
 そうすると、全身黒い洋服を着た少し小太りの老婆が、母のハサミを片手に、その切れ味を確かめるかのように開け閉めしていたのだ。

 少女は老婆に向かい、あなたは誰? と声を掛ける。
 老婆は少女の方を振り返る。
 その顔は笑顔なのだが、どこかおかしい。
 顔の表情が全く動かずに、笑顔のままのお面でも被っているかのような、そんな顔の老婆だったのだ。
 少女は怖くなる。

 老婆は少女に向かい、おまえもこれで私を切るのかい? と聞いてきた。
 少女は慌てて首を振る。
 そうすると老婆は、そうだったらあんたも今ここでちょん切ってやるところだったよ、と、ハサミを開け閉めしながらそう言った。
 少女は慌てて、作業部屋の戸を閉める。

 そして、自身は二階へと駆け上がりトイレの中に逃げ込んだ。

 しゃがれた老婆の笑う声。ゆっくりと階段を軋ませて上がる音。何度も何度もハサミを開け閉めする音が聞こえて来る。
 少女はトイレの中で泣きながらドアノブを掴み、立てこもった。

 トイレのドアをドンドンと叩き、ここを開けな、と老婆の声が聞こえて来る。
 少女は泣きながらドアノブを抑え続けた。

 夕方となり家に少女の母が帰ってくる。
 二階のトイレからは娘の泣き声がして、そのトイレの前には、母が作りかけの、笑顔で黒い服を着た老婆の人形と大きなハサミだけが落ちていた。

 ただそれだけの話だ。




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