女子大生の魔女裁判 第二審 ー生け花パクパク殺人事件ー

八木山

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カーテンコール

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幕がゆっくり閉まり、お辞儀をする女子高生俳優たちが視界から消えていく。
パチパチという拍手の中、不満げに舌打ちをするものが一人だけ。

「なんか俺様の役者、チビすぎないか?あれじゃまるで小学6年生だぜ?」

そう言ながら隣に座るおさげの女性を見る。
彼女もまた、複雑そうな顔で拍手していた。

「アカリは大して変わらないでしょ、元からマスコットキャラみたいな頭身なんだから」
「なんだお前、殺されたいのか?」

アカリの手刀をひらりと躱しながら、ヒカリは返す形で目玉にデコピンを食らわせる。

「いっでぇ!目は反則だろーが!」
「問題は私よ、私!なぁんであんな背の高いクールキャラになってるわけぇ?もっとかわいいでしょ!見た目の特徴もおさげくらいしか残ってないんだけど!」
「そうです?結果だけ見れば事件のキーマンだったじゃないですか」

さらにその隣の眼鏡のポニーテール女子、カイリは小さく拍手をしながら笑った。

「主人公さながらの大活躍で何が不満なんです」
「いやそうだけどさぁ・・・!なんか、途中まで影薄かった奴がポッと出の共犯になったようにしか見えなくない?私ってもっと正ヒロインって感じだと思うんだけど」
「まあ、ヒカリってエヴァで言うならアスカですけど、あれじゃあカヲル君ですよね・・・自分は遺憾なくインテリ美女として実物の76%は表現されていたので大満足です。流石従妹、キャラ造形の完成度が違いますね」

ふふん、とカイリは笑った。
その様子を見て、アカリはウェッと舌を出す。

「バカが何か言ってらぁ」
「何はともあれ、これでユカリたちも草葉の陰で喜んでくれているんじゃないでしょうか」

そのカイリの耳を、さらに隣の女子が引っ張った。

「いや、殺すなよ。逮捕な、逮捕」
「・・・でもユカリも完成度高かったですよ?」
「マジで言ってるなら自分を見直さないとなって思うね・・・」

ユカリは、くすんだ短い金髪の上にボーイッシュなキャップを目深に被り直す。
カイリの影から顔を出して、ヒカリが尋ねた。

「ってか、あれって本当なの?ルームシェアが百合地獄ってやつ」
「なわけねーでしょーが。ウチとアカリとポはそもそも地元が全然違うから」
「いやでも・・・なんかお前が女にもてる理由、わかったって言うか・・・」

アカリはあえてモジモジと自分の人差し指同士を突き合わせる。
それを見たユカリは、げんなりした顔でパイプ椅子の背もたれに体を預けた。

「キッショ・・・」
「そうぞういじょうにひいててくさw」

ケタケタ嗤いながら、容器からポップコーンを取り出し口へと放り込んだのは、ポカリだった。
ポップコーンを一つかみ奪い取りながら、ユカリは忌々し気に一つずつ口へ運ぶ。

「いや、オメーだろあのキャラ付け・・・確信犯のドブネズミが・・・」
「は?いつものとおりでしょ?『キスする?』っていってさ、おんなのこ かどわかしてるじゃん」
「いや、してないが?あと人のもの盗むキャラにしないで?」
「きゃらじゃないだろ」
「今度は本当に死にたいようだ」
「止めましょうよ二人とも、盛った猫じゃないんだから、みっともないですよ」

カイリに宥められ、5人の女子大生は席を立ち体育館から出ると、そこには宮古島ホトリが立っていた。
どうもご足労いただき~などと二三言葉を交わしてから、宮古島は本題を切り出した。

「ど、どうだったッスか?先輩方」
「いいかんじだったとおもう」

ポカリがサムズアップで応える。
芸術系の学部に通っている彼女からお墨付きをもらえたのがよほど嬉しかったのだろう、不安そうな表情は消えて、満面の笑みが浮かんだ。
眼鏡を外して、少しだけ涙を拭ってさえいる。
それはそうだ、如何に宮古島が新進気鋭の美少女ギャル女子高生ミステリ小説家だとしても、初めての劇脚本執筆、それも諸々の都合で1か月での突貫作業だ。
何とか目に見えないように気を貼り続けてはいたものの、やはり心理的負担は大きかったのである。
カイリもその頭をなでながら「よくできてましたよ!」と誉め言葉を添えた。

「しかしよく形になったよな」と、アカリは腕を組みながら唸った。「テーブルゲームの流れをそのまま脚本にするって聞いた時は無理だと思ってたけど」
「アカリが一番ノリノリだったけどね」
「当然だ」ユカリの方を向いて、アカリは嫌味っぽく言った。「こういう時大体俺様はノケモノだからな」
「しょうがないだろ、お前頭いいんだから。ウチらなりのサプライズだよ」
「まさか私物の置いてある部屋をそのまま使うと聞いた時は流石に驚いたぜ」

そう、カイリがバカンスに誘ったのは、まさにホトリの脚本作りのためであった。


【そう言うお前はどうなんだ】

犯人が事前に決待っていない殺人事件について、参加者にランダムに与えられた証拠品カードをめくっていき、その場の流れで犯人を決める、と言う日本のテーブルゲームがあるのをご存じだろうか。

だがホトリは、よりリアルにするために、事前に部屋に証拠を隠しておき、プレイヤーは実際にそれ探す形式にしていた。
その準備のために、彼女だけ先んじて別荘に来ていたのだ。

見つけたものがホトリの仕込みかは関係なく、【証拠品】として必ず扱う。
かつ、全員に自分以外の役割を演じる。

この二つの追加ルールの結果、ちぐはぐながらもブッ飛んだストーリーになった。
そこまで含めてホトリの計画は大成功だった、と言うことになる。


「でも、よくあんなエンディング思いついたね、さすが小説家」

ユカリが言う通り、実際に別荘でやったゲームはユカリの逮捕で終わっていた。
ポカリの自殺と言うシナリオは、後付けで作ったものだった。
ホトリは照れくさそうに言った。

「そこは、ちょっと・・・にも手伝ってもらったんッス」
「先輩?」

いつもは細めている目がギラギラに輝いた状態で、ポカリが食いつく。

「何か今、ちょっと先輩の二文字に感情が入ってたよね?え、もしかして、憧れの・・・みたいな・・・」
「女子高生の恋話、聞かせてもらおうか」

同じくにじり寄るヒカリ。

「い、いやぁ、お世話になってるだけでそんな大層な関係デハ・・・」
「好きなんだ」「LOVEだべ」

目をグルグルと回しながら、助けを求めてカイリを見るが、彼女はすでに香ばしい匂いを漂わせている焼きそば屋の屋台へとフラフラと吸い寄せられているではないか。
場のめんどくさそうな空気を察して、そそくさとユカリもその後に続いてしまった。

「まあ、俺様達もノーギャラだったわけだしな、これくらいは給料として覚悟してくれや」

アカリはヘラヘラしながら、二人の獣を放置する始末。

「でどうなん?イケメン?」「あれでしょ、きっとメガネでしょ」「どこまでやったの?」「いいから教えてみ?」

ホトリは我慢できず、たまらず叫んだ。

「そ、そそそ、そう言うお前はどうなんだ!」
「いや、そういうのいいから」

女子大生は、時にズルく、時にサカった生き物である。
ホトリが走って逃げ出すまで、5秒前。




※エンドロール

ポカリ・・・(演)宮古島みやこじま歩鳥ほとり
ヒカリ・・・(演)夕月ゆうづきゆかり
ユカリ・・・(演)水無月みなづき火咖喱ぽかり
ホトリ・・・(演)明戸院めいどいん海李かいり
カイリ・・・(演)おおとりかいり
アカリ・・・(演)西城さいじょう光梨ひかり

脚本・・・宮古島みやこじま歩鳥ほとり
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