女子大生の魔女裁判 第二審 ー生け花パクパク殺人事件ー

八木山

文字の大きさ
26 / 26

スピンオフ:男子高校生の回顧

しおりを挟む
「いいのかよ、会ってかなくて」

顔見知りの女子高生小説家が知り合いらしき女子大生に揉みくちゃにされるのを尻目に、その男子は俺に口惜しそうに言った。

「いいんだよ、ああいうのは腕を組んで後方から眺めるに限る」

聖レーヌ女学院の百合百合しい恋模様を幾度見守ってきたであろう桜の木に背を預けて、俺は文字通り胸の前で腕を組んだ。

「文字通りの後方彼氏面じゃん」

と、わが悪友たる湯本は、同じ木陰にへたりこむようにして座ると、行き交う女子高生の生足を目で追いかけた。

髪を明るい茶色に染めたことで一層美男子振りを増したのに、うすら透ける下心のせいで彼女の一人もできやしない。
全く、哀れな奴だ。

そんなこいつと女子高の演劇を見に来たのには、ちゃんと理由がある。

まず、宮古島に脚本の添削を頼まれたのは俺だった。
だが受験勉強に勤しまなければならなかった俺は、已む無く湯本に任せたのだ。
元を正すと一度も役をもらえなかったなぐらも演劇部で役者をやっていたという事実と、かつて宮古島が解決した(ということになっている(ほんとに?))事件の関係者という縁があったので、顔見知りではあったし、当人も暇していたし、俺も面倒だったし、まあそういうことだ。

しかし湯本の低い国語力ではオチを作れなかったので、結局俺が出張る羽目になったのだが、実際に演じられてみるとどこか誇らしい。
俺は照れ隠しのように、湯本に移動を促した。

「それより視聴覚室でお笑いライブやってるぞ」
「それより~じゃないって。言わなくていいのかよ、あの中にがいるかもって話」

さぞ重大そうに言うが、俺はピリッともしない。
ここで警察沙汰未満のしょうもないオカルト話に巻き込まれるくらいなら英単語を覚えたい年頃だからね。

「憶測の域を出ないしな。別に実害も出てないし放っといていいだろ」
「お前が言い出したんじゃん」

ほわほわほわぁーん回想に入るSE

俺:
なぁ、気付いてるか湯本
この脚本、何か変だ

湯本:
本当は2巡で終わりにしようと思ってたのに3巡まで回ったんだし、多少は粗があるんじゃないの?

俺:
俺が言いたいのは犯人像についてだ
宮古島の想定だと、「愚行法師」と怨霊「丑三」の力を使ったのか、あるいはトリックかって議論になる予定だったのに、いつの間にか犯人は「かるみあ様」になってる
これには宮古島も相当焦ってただろ

湯本:
それを含めて、お前がちゃんと被害者の自殺って傑作なオチをつけてくれたじゃないか

俺:
このゲームのリプレイには、多分だが、が紛れ込んでる

湯本:
またそういうのかよ
で、ソースは?

俺:
宮古島がランダムに配った証拠以外に、物騒なものが見つかってる
いいか?ゲームのリプレイをよく見ればわかる通り、仕込んだアイテムが見つかったら宮古島がト書きでその詳細な説明をする、そういうルールだったんだ
一方で、1巡目の3ターン目と5ターン目なんかは、冒頭の説明が「見たまま」程度になってる
最初からその別荘にあった、仕込みにない謎のオブジェクトってことだ

湯本:
水盆の儀式も写真の蛇使い「かるみあ様」も実在した、って言いたいわけだ
でもただのオカルト好きだっただけかもしれないじゃないか

俺:
いや、ちゃんと確かめよう
もしかしたら、宮古島が危ないかもしれない

*:
俺は宮古島を呼び出し、脚本の最終調整のためにも、実際にゲームの行われた別荘を見たいと申し出た。
彼女は喜んで俺と湯本を割尾村まで連れ立った。
そして俺は、ゲーム中にポカリ嬢を模したマネキンが倒れていたというカーペットに違和感を感じたのだ。

俺:
このカーペット、なんか黒いシミがないか?

湯本:
ただのコーヒーのシミなんじゃないの?
あんまり勝手に障らない方がいいと思うけどな~

*:
俺は湯本の制止も聞かずに、カーペットを思い切って捲ってしまった。
そこには、赤黒く変色した血だまりと、炭で書かれた円形の模様が書かれていた。
カーペットの裏側が血を吸いって、後から湧いたウジ虫を潰してしまっている。
そのせいで、吐き気を催す異臭が部屋中に充満し、俺たちはたまらず廊下へと逃げ出した。

湯本:
なんだよあれ、オレイカルコスの結界か・・・?
俺の言語力じゃあ「igu」って所々に書かれてることくらいしかわかんねえけど・・・

俺:
そうか・・・
これが「竜神」の正体で、「かるみあ様」も大方この儀式で蛇使いの英知を授かったんだ

湯本:
いやー、でもこれって昔の事だろ?
殺人事件の証拠品って言っても・・・

俺:
だから、そうじゃないんだって
あの日、その「かるみあ様」になぞらえて儀式を起こそうとしてたやつがいるかもしれないんだよ
思い出してくれ、3週目の「黒い瓶」のこと

湯本:
「毒薬」って言ってるけど・・・でもそれはゲームの中の設定に合わせた・・・んじゃないの?

俺:
儀式はその最中に人を殺す必要があった
その時に抵抗されないように使う「睡眠薬」だったとしたらどうだ?
しかもそれが偶然見つかってしまった

湯本:
それをあえて致死毒ってわかりやすい「ミステリの小道具」として扱うことで、『本当に儀式を起こそうとしている』という真実から注意を逸らしたってことか
確かに・・・「儀式には使えない」って誰かが言ってたけど、でも、それだけだろ?

俺:
・・・宮古島に脚本を返してからこの「割尾村」の「竜神」個人的に調べたんだ
スペインによる開拓期に奪われた中南米に伝わる「蛇神伝説」の祭具を調べている学者がいたよ
名前をララクラフトって言うんだが、ソイツによれば「知の蛇神イグ」にまつわる祭具として知られたアーティファクトは、最終的に明治初期に日本人に買い取られたそうだ

湯本:
それが、あの「写真」の一族ってことか・・・?

俺:
明戸院家がどんな歴史を経て名家になったのかはわからない
問題は、そのララクラフトの手記は彼女たちの通ってる大学の図書館にもあって、それを借りていた人があのゲームの参加者の中にいたってことなんだよ

湯本:
蛇神が与える知恵なんてものがあるとマジで信じちゃった、ってことかよ!?

GAME!! スマブラ英語版特有のSE

「水盆自体は俺が海に捨ててきちゃったし、あんなにほのぼのされると水を差すのも悪い気がしてさ」

そう言って俺は、背の小さい短い赤髪が目立つ女性を目で追った。
幼さの残る顔立ちの彼女は、宮古島に詰め寄る他二人の後ろでケタケタと笑っている。
俺はなんとなく、興味本位で人を殺しそうだとも、すぐに飽きて他のことに目移りしそうだとも思った。

「やっぱり俺、行ってこようかな」

決意確かに、スクリと湯本は立ち上がった。
その目には、確かに同じ女子大生が目に映っている。

「湯本やめとけよ。そんなこと言って、女子大生のお姉さまの弱みを握ってどうこうしたいとか考えてんだろ」
「・・・・・・ちがうもん」
「悪いこと言わないから漫才ライブ、見に行こうぜ」

湯本は暫く黙っていたが、観念したようにため息を吐いて、彼女たちに背を向けて歩き出す。

「そう言うお前はどうなの?」
「何が」
「ホトリちゃんのこと。どうこうなりたいとかはないわけ?」
「そういうのいいから」

俺はまだ3つ押していないスタンプの残る、文化祭のパンフレットを広げた。
宮古島より、このスタンプがどこにあるのかという謎の方が俺にとってはよほど面白い。
今はまだ、それでいいのだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...