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第2章 ヤビコ迷宮の大騒乱
17:思いもしない襲撃
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◆◆20◆◆
本当の姿を現した白いモコモコことウィニスから迷宮の支配権を取り戻してほしいと頼まれたシャーリーは、略奪者を倒すためにさらなる奥へ進もうとしていた。その際にウィニスから〈ガラスの種〉を受け取り、思いもしないことに喜びを抱く。
ギルドマスターが探していた代物で特別報酬であるアメジストの原石をもらう約束されている。これに喜ばないなんておかしい話だ。
帰った時のことを想像し、緩みきった顔をするシャーリー。そんな彼女を見てドロシアが気を引き締めるような言葉をかけた。
「喜ぶのはまだ早いわよ、シャーリー。それにこれから暴れん坊を懲らしめに行くのよ?」
「そうだけど、でも帰った時のことを想像したら――」
「ちゃんと生きて帰らなきゃ意味ないのよ。死んじゃったら何もかもが終わり。特別報酬が手に入らないどころか、夢だって叶わない。それは嫌でしょ?」
「う、うん……」
「なら、しっかり今やることを見てね。ちゃんと全部解決して、いい思いをしましょう」
ドロシアに言われ、シャーリーは気を引き締める。死ぬのはゴメンだが、またさっきみたいに失敗して仲間を傷つけたくない。
だから彼女は前を向き、力強い目でウィニスを見る。
ウィニスはそんな彼女を見て優しく微笑み、敵に関する情報を話し始めた。
「この迷宮の支配権を奪った者。彼の名はヴァルゴと言います。かつて仲間だった彼は、力をつけたメドゥサ・リーサに魅入られ、僕達を裏切りました。以後、あいつの力の一部を受け入れ僕達の迷宮を管理権を奪ったんです」
「ひどい話だね。どうしてヴァルゴさんは裏切ったの?」
「わかりません。ただ、彼は力を求めていました。どうしてそこまで力を求めていたのかわかりませんが、今では仲間の誰よりも強い存在です」
「そ、そんなのに私が勝てるかな?」
「確かに個別でぶつかれば勝てないでしょう。ですが、そんなことはさせません。僕達があなたを援護しますし、それに頼もしい方がいます。だから心配しないでください」
ウィニスはシャーリーを励ますように言い放ち、ドロシアにウィンクした。そんなサインを受けた彼女はジトッとした目で見つめ返し、やれやれと頭を振る。
大きな期待をされているようだ、と感じ取りつつドロシアは口を開いた。
「それはどうも。それで、そいつはどこにいるの?」
「ここから北西にある塔を根城にしています。ただ厄介なことに、あいつはモンスターを配下に置いています。だから僕の仲間が気を引きます。その間に一緒に侵入してあいつを倒します」
「作戦もできているのね。わかった、じゃあ手伝うわ」
「ありがとうございます!」
「ただし、危険だと思ったらすぐに撤退するわ。それでもいい?」
「はい! お願いします!」
どうやら話がまとまったようだ。
ドロシアの言葉にウィニスが喜ぶ中、シャーリーは嬉しそうに笑った。
これからどうなるかわからない。
それでもどうにかなると、シャーリーは感じていた。
「では、作戦の細かい部分を詰めていきましょうか。まずは――」
「た、大変だぁー!」
ウィニスが仕切り、作戦の話し合いをしようとした時だった。彼の仲間が慌てて駆け寄り叫ぶ。
どうしたんだろう、と思い一同が振り返ると彼の仲間はこう叫んだ。
「ヴァ、ヴァルゴが攻めてきたー!」
「な、なんだって!」
思いもしないことにウィニスは顔を険しくさせた。すぐに迎撃へ向かおうとするが、なぜかシャーリーに振り返る。
キョトンとしながら見つめているとウィニスは、シャーリーの両肩を掴んでこう注意を言い放った。
「いいですか。先ほどの作戦はあなたが要です!」
「ふえっ!? そ、そうなの?」
「そうなんです。だから僕の合図があるまでここから出ないでください!」
ウィニスは仲間と共に走っていく。
シャーリーはその後ろ姿を見送るが、なんだか心配になった。
妙な胸騒ぎがする。そもそも態勢が整っていない状態で攻め入れられたんだ。もしかしたらこのままやられてしまうかもしれない。
そんな心配をしていると、ドロシアが彼女にこんなことを訊ねた。
「心配?」
「うん。でも合図があるまで出ちゃいけないって……」
「確かにあいつの言う通りなら、あなたが要のようね。でもあの作戦は何一つ欠けてはいけないと思うわ」
「え?」
「死なせたくないでしょ? ならやることは決まっているわ」
いたずらっ子のような笑顔を浮かべるドロシアを見て、シャーリーは力強く頷いた。
シャーリーはウィニスを死なせたくない。もちろん、彼の仲間達も。
だから彼女はみんなを助けるために動き出す。
「ま、怒られるでしょうね」
「えー! でも、仕方ないかな」
「そうね。怒られる時は、一緒に怒られよっか」
「うん!」
みんなを助けるためにシャーリー達は動き出す。
待ち受ける悲劇を、惨劇を、その全てを回避するために。
本当の姿を現した白いモコモコことウィニスから迷宮の支配権を取り戻してほしいと頼まれたシャーリーは、略奪者を倒すためにさらなる奥へ進もうとしていた。その際にウィニスから〈ガラスの種〉を受け取り、思いもしないことに喜びを抱く。
ギルドマスターが探していた代物で特別報酬であるアメジストの原石をもらう約束されている。これに喜ばないなんておかしい話だ。
帰った時のことを想像し、緩みきった顔をするシャーリー。そんな彼女を見てドロシアが気を引き締めるような言葉をかけた。
「喜ぶのはまだ早いわよ、シャーリー。それにこれから暴れん坊を懲らしめに行くのよ?」
「そうだけど、でも帰った時のことを想像したら――」
「ちゃんと生きて帰らなきゃ意味ないのよ。死んじゃったら何もかもが終わり。特別報酬が手に入らないどころか、夢だって叶わない。それは嫌でしょ?」
「う、うん……」
「なら、しっかり今やることを見てね。ちゃんと全部解決して、いい思いをしましょう」
ドロシアに言われ、シャーリーは気を引き締める。死ぬのはゴメンだが、またさっきみたいに失敗して仲間を傷つけたくない。
だから彼女は前を向き、力強い目でウィニスを見る。
ウィニスはそんな彼女を見て優しく微笑み、敵に関する情報を話し始めた。
「この迷宮の支配権を奪った者。彼の名はヴァルゴと言います。かつて仲間だった彼は、力をつけたメドゥサ・リーサに魅入られ、僕達を裏切りました。以後、あいつの力の一部を受け入れ僕達の迷宮を管理権を奪ったんです」
「ひどい話だね。どうしてヴァルゴさんは裏切ったの?」
「わかりません。ただ、彼は力を求めていました。どうしてそこまで力を求めていたのかわかりませんが、今では仲間の誰よりも強い存在です」
「そ、そんなのに私が勝てるかな?」
「確かに個別でぶつかれば勝てないでしょう。ですが、そんなことはさせません。僕達があなたを援護しますし、それに頼もしい方がいます。だから心配しないでください」
ウィニスはシャーリーを励ますように言い放ち、ドロシアにウィンクした。そんなサインを受けた彼女はジトッとした目で見つめ返し、やれやれと頭を振る。
大きな期待をされているようだ、と感じ取りつつドロシアは口を開いた。
「それはどうも。それで、そいつはどこにいるの?」
「ここから北西にある塔を根城にしています。ただ厄介なことに、あいつはモンスターを配下に置いています。だから僕の仲間が気を引きます。その間に一緒に侵入してあいつを倒します」
「作戦もできているのね。わかった、じゃあ手伝うわ」
「ありがとうございます!」
「ただし、危険だと思ったらすぐに撤退するわ。それでもいい?」
「はい! お願いします!」
どうやら話がまとまったようだ。
ドロシアの言葉にウィニスが喜ぶ中、シャーリーは嬉しそうに笑った。
これからどうなるかわからない。
それでもどうにかなると、シャーリーは感じていた。
「では、作戦の細かい部分を詰めていきましょうか。まずは――」
「た、大変だぁー!」
ウィニスが仕切り、作戦の話し合いをしようとした時だった。彼の仲間が慌てて駆け寄り叫ぶ。
どうしたんだろう、と思い一同が振り返ると彼の仲間はこう叫んだ。
「ヴァ、ヴァルゴが攻めてきたー!」
「な、なんだって!」
思いもしないことにウィニスは顔を険しくさせた。すぐに迎撃へ向かおうとするが、なぜかシャーリーに振り返る。
キョトンとしながら見つめているとウィニスは、シャーリーの両肩を掴んでこう注意を言い放った。
「いいですか。先ほどの作戦はあなたが要です!」
「ふえっ!? そ、そうなの?」
「そうなんです。だから僕の合図があるまでここから出ないでください!」
ウィニスは仲間と共に走っていく。
シャーリーはその後ろ姿を見送るが、なんだか心配になった。
妙な胸騒ぎがする。そもそも態勢が整っていない状態で攻め入れられたんだ。もしかしたらこのままやられてしまうかもしれない。
そんな心配をしていると、ドロシアが彼女にこんなことを訊ねた。
「心配?」
「うん。でも合図があるまで出ちゃいけないって……」
「確かにあいつの言う通りなら、あなたが要のようね。でもあの作戦は何一つ欠けてはいけないと思うわ」
「え?」
「死なせたくないでしょ? ならやることは決まっているわ」
いたずらっ子のような笑顔を浮かべるドロシアを見て、シャーリーは力強く頷いた。
シャーリーはウィニスを死なせたくない。もちろん、彼の仲間達も。
だから彼女はみんなを助けるために動き出す。
「ま、怒られるでしょうね」
「えー! でも、仕方ないかな」
「そうね。怒られる時は、一緒に怒られよっか」
「うん!」
みんなを助けるためにシャーリー達は動き出す。
待ち受ける悲劇を、惨劇を、その全てを回避するために。
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