私のお猫さま 25歳を迎えて猫又さまになりました

月見こだま

文字の大きさ
19 / 58
第二部

01:猫又さま、新たな食事

しおりを挟む


 ドサッ袋の大きさのわりに重い音。
 お母さんの手から滑り落ちた買い物袋がフローリングに落ちた。

「あら! まあ、まあ、まああああ!! 可愛らしい!!」
「恐縮です、お母さま」
「まああああ!! 妖精ってこの世にいるのね!?」

 気付けばもうお母さんの仕事が終わる時間だった。わたしが身支度するよりも早いと思って、お使いをお願いした。
 ――のだけど。

「お母さんも浮気ものにゃあ!!」
「あら、ミケったらヤキモチ!? かわいい!!」

 えーっと、再放送かな? さすが親子。わたしと反応がそっくり。
 ルナちゃんを目にしたお母さんはもう語尾にハートが付きまくってる。当然、ミケは拗ねるけど、そんなミケも可愛いとずっとデレデレしてる。

「ルナちゃんが妖精ならミケは天使よ!!」
「ふにゃあ~!!」

 買い物袋を放り投げたまま、ミケを抱き上げて頬ずりしてる。
 そんなことしてる場合じゃないんだけど。

「ねえ、お母さん。わたしが送ったメッセージちゃんと読んだ?」
「もちろん! 頼まれてたものも買ってきたわよ!」

 ミケを抱えたまま、袋は拾わない。わかってた。
 わたしは袋を拾って、中身を取り出す。

「ルナちゃん、これで大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ」

 ルナちゃんに頼まれていたものを確認してもらう。
 正しく伝わっていたようで、一安心した。

 ――とはいえ。

「にぼし、食べるかなあ……」
「にゃあ?」

 お母さんに甘やかされて喉をゴロゴロ言わせていたミケが顔を上げた。
 確かに、猫=にぼしのイメージはあるけど。
 人間用ではないから塩分の心配はないだろうけど、ミケは子猫の時から決まったものしか食べない。たまに茹でたササミをあげるぐらい。

「好みもあると思いますので、量の調整はしましょう。基本的なお食事は今まで通りで構いませんよ」
「ごはんにゃ?」
「まだ早いからちょっと待ってね」
「にゃう」
「今までお魚あげたことなかったもんね。フードもチキン味だし」

 お母さんが満足したのか、そう言ってミケを下す。わたしの元に寄ってきて、見慣れない袋に鼻を寄せた。

「美味しそうなにおいにゃ」

 ミケはそう言ってペロンと袋をなめる。

「あ、コラ。まだだって」
「いえ。こちらは今食べて頂きましょう。ミケさま、人の姿になっていただけますか?」

 ルナちゃんの言葉に、わたしとお母さんは首を傾げた。どうやらただのおやつではないらしい。

「にゃう!」

 ぽふんと軽い音と共に、ミケは人間の姿になった。こちらも相変わらず可愛い。

「どうにゃ!!」

 ふふん! とふんぞり返るミケに、ルナちゃんは首を縦に振る。

「はい、お上手です」
「もっと褒めるにゃ!!」
「ミケさまは素晴らしい猫又さまです」
「ふふん!」

 わたしとお母さんはそのやり取りでもう尊死しそうだった。ふたりとも大声を出さないように口を塞いで震えているのだから、本当に親子だ。
 てのひらサイズのルナちゃんが健康的な成猫サイズのミケをよしよししてる。

「さて、では桜さま」
「ふ、ふぁい!?」
「そちらの袋から、ひとつミケさまにお渡しいただけますか?」
「は、はい!!」

 わたしは震えたままの手でにぼしの袋を破る。ちょっと失敗したかも。
 ひとつ取り出して、ミケの手に渡した。

「ありがとうございます。あ、ミケさま! まだお口に入れないでくださいね」
「にゃ?」

 渡した瞬間、口に入れようとしたミケをルナちゃんが止める。
 ミケは首を傾げたが、仮にも『先生』となるルナちゃんの言うことをちゃんと聞いている。

(はああああ、ミケ賢い、可愛い……って、そうじゃなくて)

「これからどうするの?」
「はい。まず、座っていただきます。今日は初日ですのでどんな座り方でも構いませんよ」
「じゃあ、わたしの膝でもいい?」
「はい、構いません」

 わたしはミケを抱き上げて椅子に座る。その膝にミケを乗せた。

「それで?」
「はい。まずは、そのにぼしをひとつの『命』と認識していただきます」
「いのち……?」
「今のミケさまは無意識に他者の命を奪ってしまう体質です。なので、まずはその無意識を改善していただくのです」

 ルナちゃんの言っていることがよくわからない。ミケもわたしと同じように首を傾げているし、隣に座ったお母さんも頬に手を添えて首を傾げている。




「頭から尾まで。その小さな『命』を意識的に栄養として取り入れられるよう頑張りましょう」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

他国ならうまくいったかもしれない話

章槻雅希
ファンタジー
入り婿が爵位を継いで、第二夫人を迎えて後継者作り。 他国であれば、それが許される国もありましょうが、我が国では法律違反ですわよ。 そう、カヌーン魔導王国には王国特殊法がございますから。   『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...