異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした？！〜

飛び立った飛空艇

　 アレン先生は、目の前にひろがる爆煙を瞳に移しながら、ため息をつく。

「やれやれ防がれたかの。」

　爆煙がはれ、中からカミルとアン、ベールニギスそしてカミルが召喚したのであろう。ぼろぼろに崩れた石の巨人が現れた。

「これでも、ドラゴンのブレスを完全に防げる防御力を持った分霊を召喚したのだけれど。」

「このざまね」とカミルが言い放つとほぼ同時に、石の巨人は崩れ落ち、砂と化した。

「恐ろしい力ね魔女アレン」

　カミルはそう言いながら若干デルタレイによって火傷した左腕をかばう。

「まだやるかカミルとやら」

　アレン先生は魔法を詠唱し、氷柱を周囲に出現させ、氷柱の先端をカミルとアンに向ける。

「カミル、あまり無理はしないで、そろそろ…」

　アンはカミルに話しかけた。

「ええ…そうね。」

「何をコソコソと話しておる！」

　アレン先生は氷柱をアンとカミルに向けて発射する。 氷柱はまるで矢のように飛び空気と大地を凍らせながら、排除すべき敵の元へ飛んでいく。

「ベールニギス！」

　カミルの号令とともにベールニギスはアンとカミルの盾となった。氷柱はベールニギスの皮膚を貫くことなく、表面で砕け散った。

「チッ！」

　氷属性の魔法は耐性があるようだ、アレン先生は火炎の球を空中に出現させる。ベールニギスめがけ火炎の塊が大気を焦がしながら進む。ベールニギスはその火炎を避けられずそのまま、炎に包まれる。犬とも、狼とも違う、おぞましい断末魔をあげながらベールニギスは焼かれそして死んでいった。

「逃げられたか…」

　アレン先生は呟く、ベールニギスを囮にいつのまにか、アンとカミルは逃げ出したようだ。「やれやれ」そう言いながらアレン先生は元の猫の姿へと戻っていく。

「さてとドンキホーテ達を探さねばな。一体どこに飛ばされたんじゃ。」

　その時だ、突如地面が揺れ出したのは。

「な、なんじゃ！」

　思わず、アレン先生はたじろいだが、すぐさま状況を確認する。この地震は何かがおかしい、その何かをアレン先生は具体的な説明はできなかったが、直感として感じていた。するとしばらく揺れが続いたと思いきや、今度はピタリと揺れが止まり、アレン先生の頭上を飛空挺が飛んでいった。あの飛空挺には見覚えがある。アン達に奪われた軍事用の飛空挺だ。飛空挺になにかが飛び乗る、それも大きなワシのようなものが2匹とも。

（やられた！）

　先ほどまでの戦闘は飛空挺のエンジンに火が入るまでの時間稼ぎだったのだとアレン先生は気がつく。恐らくグレン卿もあの飛空挺に乗っているのだろう。だとするともうこの地でのグレン卿の目的はもう終わってしまったのだ。この地を離れられるということは再び、手がかりを失うということ、それだけはなんとしてでも阻止しなければならない。そう思っても、すでに飛空挺はまだ目視できる範囲にいるものの上空に飛び立って行ってしまった。

「くそなんとかできんのか！」

　アレン先生が、悔しそうにそう言う。

「先生、落ち着いてくれ。手立てならある。」

　すると後ろから声がした。アレン先生が振り向くとそこには、マリデに支えられながら立っているドンキホーテがいた。

「マリデに…ドンキホーテ！お主、どうした？！珍しく怪我でもしたのか？！」

「ああ、下手をこいてなこのざまさ、それより、あの飛空挺にはさっき追跡用の魔法が込められたルーン石をぶん投げておいた。多分命中してるから、追いかけられるぜ。」

「なんと！良くやったドンキホーテ！で追跡はどうするのじゃ。」

「僕に考えがある」とマリデがいう。

「急いで馬車に戻ろう。まずはそれからだ。ところでエイダ君はどうしたんだい？アレン先生。」

「お主らも見てないとなると、居場所は一つしかないの…恐らくあそこに飛ばされたんじゃろう。」

　アレン先生の言葉にドンキホーテが歯ぎしりをする

「あの飛空挺かよ…！！」



　ドンキホーテ達はラバのロシナンテが引いてきた馬車にたどり着くと、マリデが魔法を唱え始めた、そのこの世のものとは思えない醜悪な詠唱が終わると馬車には黒いカラスのような羽が生えた。

「これでよし！あとはロシナンテの魔力を使って…ドンキホーテ、ロシナンテの魔力を使いたい。ロシナンテを説得してくれ！」

　もう肩を借りずとも歩けるようになった、ドンキホーテは自信満々にいう。

「大丈夫だぜ、ロシナンテは肝が座っているどんな魔法だって使いこなしてやるって、ロシナンテは言っているぜ。」

　その、主人の無茶振りは若干、ラバのロシナンテは冷や汗をかきながらも、緊急事態であることは察しているのか、マリデに素直に従った。マリデはロシナンテに触れると。

「いいかいロシナンテ、今から君にかけるのは空中歩行の魔法だ、一度発動さえしてしまえば、しばらくは飛んでいられる。いいかい？あとは僕たちの馬車を引っ張るだけだ！」

　そういうとロシナンテの4本の足が光り輝く魔力を纏った。ロシナンテは動揺し暴れそうになる。

「どうどう、俺がついてる安心しろロシナンテ！」

　ドンキホーテのその言葉でいくらか安心をしたのか、ロシナンテは少々興奮しながらも暴れることはなかった。

「アレン先生馬車に乗ってくれ！ドンキホーテは一応僕とともにロシナンテを興奮しないようにコントロールを！」

「わかったぜ、ボス！」

「やれやれ不安じゃのう！空の旅にいい思い出はないわい！」

　マリデの掛け声でアレン先生が馬車に乗り、ドンキホーテとマリデは御者台に座った。

「さあ行こうぜ！エイダを助けに！」

　馬車が飛び立った。エイダを載せていると思われるあの飛空挺に。



　お姉ちゃん

「誰……？」

　悔しいよね、許さないよね

「ゆる、せない…」

　だったら復讐しようよ、あのおじいさんに。

　僕が力を貸してあげる。