異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太

文字の大きさ
127 / 130

信じて

しおりを挟む
「待たせたのぅ! エイダ!」

 そう言ってエイダの元に降り立ったのは、黒い髪をたなびかせる、白いローブをまとった美女だった。

「アレン先生! よかったきてくれたんだね!」
「まさか、こんな世界に訪れることになるとはの、いやはや、お主の魔力を体に流しておいてよかったわい、お陰で、存在を感じ取れたしのぅ」
「全くだ、君と合流できてよかったよ」

 そう言いながらローブの腕の裾の中から見知った黒蛇が顔を出した。

「マリデさん!」
「これで全員そろったというわけじゃ、さあどうする?ライジェル王」

 アレン先生の言葉を耳にしながら、ちぎり飛ばされた、腕を再生しているライジェル王は、エイダ達を睨みつける。

「舐めるな……貴様らが、増えたところで私の勝ちは揺らがない!」

 そう言って、両手に光の剣を生成し、白い地面を蹴り、放たれた矢の如く、エイダ達に突進していく。

「アレン先生、接近戦は私が!」
「まかせたぞ! エイダ!」

 エイダは地面を蹴り、妖精の剣で二本の光の剣を受け止めた。
 ライジェル王は、剣を受け止められるやいなや、バックステップで、エイダから3歩ほど距離をとる、そのまま後退するかと見せかけ、王はテレポートを使用した。
 エイダの視界からライジェル王が消える。エイダは振り返り剣を構えた、するとちょうど振り返った瞬間に王は目の前に現れ、上段から二つの剣を振り下ろす。
 あらかじめ構えていた剣のお陰で、二つの光の剣はエイダに届くことはなく、妖精の剣に遮れる。

「ほう、見切ったか!」
「あいにく、貴方よりもこの魔法の使い方が上手い人のこと知ってるから!」

 エイダはライジェル王にそう返すも実際のところはただの勘であった。エイダは剣を力強く、打ち上げるように押す、ライジェル王の体は、上空に吹き飛ばされた。

「くっ! このパワーは!」

 打ち上げられたライジェル王は、苦悶の声を上げ体勢を立て直す、そして再びエイダに向かい攻撃を仕掛けようとしたその時。

「デルタ・レイ!!」

 白銀の光線が、ライジェル王を襲う。王は咄嗟に水晶の盾を出現させ、光線を防いだ。舌打ちをしながら王は言う。

「チッ! 魔女アレン、厄介な……」
「あれは…確かエールといったか……エイダの兄弟の技ではないか」

 アレン先生は、水晶の盾の正体を一瞬で看破し、顔をしかめ思う。

 ――あれがあるのでは、まともに攻撃など通らぬぞ……!

 そう悩む、アレン先生にマリデは話しかける。

「アレン、あの水晶、僕ならなんとかできるかもしれない」
「なんじゃと?!」
「僕の魔力をデルタ・レイに乗せるんだ、前回、あの僕の魔力の触手は、あの水晶を防いだことがある、逆にいえば……」
「貫くことも可能かもしれんと言うことか!」

 アレン先生は、急いでそのことをテレパシーの魔法で、エイダに伝える。

 ――エイダ! そう言うわけじゃ、奴に隙を作ってくれ!

 エイダはアレン先生を見て頷き、再びライジェル王に向かって飛ぶ。

「何か、策があるな、エイダ!」

 ライジェル王は以前にも増して警戒心を強め、迫り来るエイダを待ち構えていた。エイダの剣がライジェル王の体に届く寸前ライジェル王は再びエイダの視界から姿を消した。
 またテレポートか、とエイダは思ったが違う、付近から風切り音がしている。辺りを見回す、そこには高速で飛行している王の姿があった。

「アルの技!」

 エイダは、この技に見覚えがあった、自身を加速させるアルの技だ。エイダは速度の上がった、ライジェル王を視界に捉えることができない。
 このままでは、ライジェル王に隙を作ることなどできるはずもなかった。それどころか逆にエイダは、高速で動き回る、王に手も足も出ず一方的に、光の剣で切りつけられる。

「くう!」

 エイダはかろうじて体を魔法障壁で包み、光の剣の斬撃を無効化していたが、それもただの時間稼ぎにしかならない、魔法障壁もいずれは破られてしまうだろう。

 ――なんとかして隙を作らないと!

 エイダのその想いだけが、大きくなっていき、それは焦りへと転じていた。エイダはどんどん壊れていく、魔法障壁の中で考えに考える。
 そしてついに、ある一つの考えに至った。

「私にだって!」

 エイダは魔法障壁を解く。

「血迷ったか! エイダ!」

 ライジェル王は目にも留まらぬ速度で光の剣の切っ先を、エイダに向ける、狙うは心臓だ。だが光の剣はエイダに届くことはなかった。

「何?!」

 ライジェル王の視界からエイダが消える、瞬間いつのまにかエイダはライジェル王の後ろに回り込み、羽交い締めをかけ、地面に自分ごと王を叩き落とす。

「貴様! 貴様も加速の力を! ええい、放せ!」

 ライジェル王は必死にもがくも力はエイダの方が上だ。そして何よりエイダはドンキホーテから敵を取り押さえるための技術を学んでいる。ライジェル王ではエイダから逃れられない。
 エイダはライジェル王を押さえつけたまま、王の全身が見えるようにアレン先生に向ける。

「アレン先生!」

 エイダの呼びかけにアレン先生は一瞬、戸惑う、このままではエイダごと貫いてしまうからだ。しかしエイダは口を動かした。

「信じて」と。

 アレン先生は、頷き「わかった」と言い、必殺の光線の名を叫んだ。

「デルタ・レイ!」

 マリデの魔力が混じった、デルタ・レイは白銀の中に、黒い稲妻を迸らせ、ライジェル王のもとに向かう。
 ライジェル王は直撃する瞬間に、テレポートの魔法で転移しようとするも、この白銀の光線はその隙を許すほどの猶予は与えてくれない。

「おのれぇぇぇ!」

 ライジェル王は水晶の盾を展開し防ぐが一瞬、耐えた後粉々に砕けた。
 そしてライジェル王の体にアレン先生のデルタ・レイが直撃する。とてつもない爆炎がエイダとライジェル王を飲み込んだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/466596284/episode/5320962 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/84576624/episode/5093144 https://www.alphapolis.co.jp/novel/793391534/786307039/episode/2285646

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】男爵令嬢は冒険者生活を満喫する

影清
ファンタジー
英雄の両親を持つ男爵令嬢のサラは、十歳の頃から冒険者として活動している。優秀な両親、優秀な兄に恥じない娘であろうと努力するサラの前に、たくさんのメイドや護衛に囲まれた侯爵令嬢が現れた。「卒業イベントまでに、立派な冒険者になっておきたいの」。一人でも生きていけるようにだとか、追放なんてごめんだわなど、意味の分からぬことを言う令嬢と関わりたくないサラだが、同じ学園に入学することになって――。 ※残酷な描写は予告なく出てきます。 ※小説家になろう、アルファポリス、カクヨムに掲載中です。 ※106話完結。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...