俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太

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第百九話 リルクスの理想

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「何が夢だ……寄生虫!!」

 ミラナの怒りが空気を震わせる。

「とっとと、その体から出てきなよ、ぶち殺して焼いてやるから」

「ご立腹だな、お嬢さん」

 怒るミラナに対して、嘲笑うようにリルクスはそう言った。

「それ以上、エルの口で喋るな。クソ野郎が」

「おー怖い怖い」

 そう言って薄っすらと笑みを浮かべる。リルクス。
 するとクレーターを眺めながら、リルクスは息を吸い込んだ。

「最高だな……やはりこの世界は……」

 リルクスは惚けている。
 顔には達成感が滲み、愉悦と安堵が身体中から漏れ出ている。

「もう勝った気でいるのか?」

 そんな様子のリルクスにドンキホーテは剣を構えながら言う。
 明確な殺意と敵意がみなぎった剣の切先がリルクスに向けられた。

「勝った気でいる?」

 だが、そんなものを歯牙にもかけずにリルクスは眉を顰める。

「何を言っているかわからないが、私は目的を達した」

「何?」

 理解ができていないドンキホーテに対してリルクスは冷笑を交えながら言った。

「私の目的はこの肉体を手に入れること、目標はかなった」

「逃すと思うのか、妾達が!!」

 ダナノニウナがリルクスを睨む。
 しかしリルクスは再び眉を顰めた。

「なぜ怒っているのだ? ドラゴン? 私は君にもう用はない。ああ、すまないそういえば謝罪が未だだったか? 申し訳ない。謝礼ならばいくらでも払う。ああ、あと君の子ども無事だ。もう一件落着だろう?」

「貴様ッ……! 私たちがエルマーを見捨てるとでも思っているのか?!」

 ダナノニウナのその言葉を聞いてリルクスはさらに首まで傾けた。
 そして、さも当然だと言わんばかりに、その男は言った。

「出会って、少ししか経っていないのにか? そこのお嬢さんなら未だしも……そうか、そこまで我が子を気に入ってくれたか……。ではこうしよう!」

 途端に妙案が出たとばかりにリルクスは笑った。そして、まるで全てのピースをそろえパズルを完成させたような達成感を醸し出しながらこう言った。

「お嬢さん、ダナノニウナ。あとで住所を教えてくれ、そこにこの君たちがエルマーと呼ぶ、我が子と瓜二つのホムンクルスを送ろう!! ああ、心配するな、大丈夫だ(笑)記憶ならば半分くらいは再現できる、ほらこの紙に定着させてほしい記憶を書け──」

 そこまでリルクスが喋った時、ミラナはリルクスに飛びかかっていた。
 その眉間に怒りを、食いしばった歯には殺意を滲ませながら、刀を振り抜く。

「返せぇぇ!!」

 しかし、リルクスはその一撃を難なく防御する。
 ミラナの背後からダナノニウナやドンキホーテの制止する声がしたが、怒りのあまりミラナは雑音と判断した。

「何をそこまで怒っている? ああ、心配するな大事に扱うさ、私の子どもだぞ? せいぜい傷がつかない程度に──」

 こいつの言葉が態度が思想が所作が挙動が想いが笑みが指先の動きの一つ一つが、全てが腹立たしい。
 ミラナもはや、何も語らなかった斬撃をただリルクスに刻み続ける、

「おいおい、エルマーとやらを助けたいのか? 殺したいのか?」

「殺してぇわけねぇだろボケが!!」

 ミラナは怒りのあまり唯一リルクスが吐いた、言葉だと思しきものに噛みついた。

「でもテメェが気絶しないとエルマーと分離させらんないだろうが!!」 

 そしてミラナは刀を上段からリルクスに振り下ろした。

「口調が荒いなぁ、そんなに大事に思ってくれて正直嬉しさがある。嘘ではない、自身の作品に高評価をもらった時ほど嬉しいものはないからな」

 だが、とリルクスは続ける。

「この体は私の夢のために必要だ」

「寄生虫が……! 人間らしくするな!」

 ミラナの怒りと斬撃を羽虫のように払いながら、リルクスは喋り続ける。

「まあ、聞け」

 リルクスはニヤけながら語り始める。

「昔のことだ、私の見る世界は皆と違った」

 斬撃を交わし、受け止めながらリルクスは上の空で語る。

「何かの比喩表現ではない、私の目は生まれつき、色を上手く捉えられなくてな、まあ、正確には光を受容する視神経が人とは違って多かったのだが、とにかく私の見えている色と他人の見えている色は違ったのだ」

 剣から火花が撒き散らされる。

「ミラナさん、前にですぎだ!」

「ミラナ!」

 激昂し無闇矢鱈に刀を振り回す、ミラナを援護するべく、ダナノニウナとドンキホーテも攻撃に参加し始めるが、まるで気に留めることもなく、三人の攻撃をリルクスは躱し防ぎ続ける。

「そのせいでな……いらんトラブルを起こしたものだ、もちろん友人とも話は合わないし、父や母にも不思議がれたものだ」

 リルクスの語りは止まらない。

「その時、思ったのだ。これではダメだと」

 リルクスは酔いしれながら、空を見上げる。
 攻撃の雨を掻い潜りながら、想いに耽る。

「生まれた瞬間から人々は、平等ではない、同じ視点にすら人々は立てない。同じ景色を、人々は見ることはできない」

 故に、リルクスがそう呟いた時だった。
 リルクスを中心に大規模な衝撃波が迸った。

「くっ!」

 突然の出来事で、受け身が取れないままミラナ達は吹き飛ばされた。
 砂や土のカケラが口に入る。
 ミラナはそれを口から吐き出し、衝撃波のその中心を見る、そこには異形の人影が立っていた。

 尻尾を携え、純白の羽を生やしたその異形の顔は角が複雑に重なり合い、まるで仮面のように顔面に張り付いていた。

 その角の隙間から、覗く光り輝く、黄色の双眸を細め異形は笑う。

「神獣の血を……!」

 ミラナのその言葉をまるで正解だと言わんばかりに高らかにその異形は、いやリルクスは笑う。

「故に……」

 そしてリルクスは語る。

「人々は、私の作り出した完全なる新たなる遺伝子によって統一される!!」

 高らかに歌うように。

「劣り、醜い遺伝子は淘汰され!」

 酔いしれながら、彼は叫ぶ。

「真なる人と我々はなるのだ!」

 己が夢を。



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