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第百十二話 再戦
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「何だ?」
リルクスは呟く。その呟きを聞く者は誰もいない、先ほどまで全能感が身体中を駆け巡っていたはずだった。
その全能感はいつのまにか、てからこぼれ落ちる絹のようにリルクスから抜けていった。
元からあった全能感を入れてあった心の余白だけ。
その空白はやがて喪失感と一抹の不安に変わっていく。
「まさか……」
そうしてようやくリルクスは気がつく。
「主導権を……失って──!!」
だが気づきはあまりにも遅かった。
視覚が、聴覚が、触覚が、リルクスのコントロールから離れていく。
支配権を取り戻そうとリルクスは、手を……いや実際には自分の体の感覚すらなかったが、もがくように手を伸ばす。自分がどこにいるのかすらわからないのにも関わらず。
だが、もはや体を支配する権利は大地と星ほど離れて行った。
─────────────
引き剥がす。引き剥がす。
「うあああッ!!」
アイツを、しがらみを血の因果を、支配を、俺は引き剥がす。
俺は引き剥がす。
俺を取り戻すために。
「やめろぉぉ!!」
奴の声が、叫び声が頭の中にこだまする。
「俺は──!!」
無視しろ、引き剥がすのだ。
「俺はぁ──!!」
簒奪しろ、自分自身を。
「俺は、ママなんだよ!!」
そう言ってまるで己の皮を引き剥がすように、仮面のようにまとわりつく角を破壊して、そして同時にリルクスを押し出す。
「貴様……!!」
まるで人肌色のスライムのような肉塊が俺の体内から放出される。
直感でわかる、その肉塊はリルクスの本体だと、そして同時に実感できる俺は……。
「ただいま、ミラナ」
俺はエルマーだ。
「……はぁ、やっと帰ってきた?」
「悪い、ちょっと手間取った」
「まあいい、何度でも乗っ取られようが助けてあげるから」
思わず俺は吹き出す。
久しぶりに余裕のないミラナを見れた。
「ありがとな、パパ」
「……からかうな」
そして俺は、ドンキホーテさんたちに向き直る。
「ダナノさん、ドンキホーテさん! 悪いもう完全に復活だ!! 迷惑かけた!」
「マジか、君、コントロールを自力で取り戻したのか?」
ドンキホーテさんは、呆れ半分驚愕半分を口元に滲ませた。
「はぁ……心配したぞ……」
ダナノさんに至っては腰を抜かして尻餅をついた。
そんな彼女に俺は親指を立てる。
はっ、と少し呆れた笑いがダナノさんの口から漏れた。
「何をした……」
すると人肌色のスライムの怨みのこもった声が響いた。
「どうして私から……奪う……」
「あ?」
何言ってんだこのクソスライム野郎は?
「今、貴様が息をできるのも、くだらない家族ごっこを享受できるのも! 全部私が産んでやってからだろう? なぜ私にその恩を還元しない?! 貴様は私がいるから存在できるのだぞ!!」
「こいつ、救えんぞ」
ダナノさんがリルクスに対して俺が言いたいことを簡潔にまとめる。
「ダナノ? 何が言いたい?」
するとスライムはせせら笑う。
「貴様も世継ぎのため、竜の世界のためにくだらない出来損ないのガキを産んだのだろう?」
「黙れ」
今度はダナノさんの代わりに俺が静かに言葉を捻り出す。
「この人は周りの反対を押し切ってまでも、ケイトネールを、アルバを探した。お前みたいな人手なしと違ってな」
「何が違う? 私とその竜と? 所詮自身の子供に対して愛玩としての価値を感じてるかどうかの違いだろう?」
「バカだなテメェ」
今度は俺がリルクスを笑う。
「愛玩? そんなチープな覚悟で、親が子を育てられるわけないだろうが」
俺はリルクスに向かって突きつけるように指を刺す。
「俺を……いや、俺だけじゃない色んなものを不要と捨てた腑抜けが! ダナノさんと同じわけないだろうが!」
その言葉を聞いて肌色のスライムは心底どうでも良さそうに──。
「くだらん」
と呟いた。そして、肌色のスライムは、リルクスは己の体を肥大させていく。
「遺伝子のコピーはかろうじて取れた」
そう言ってスライムの不定形から、形が、輪郭が定まっていく。
獅子のような足に、熊と人の手が融合したかのような異常な攻撃性を感じさせる手、山のような体躯に、犬と羊の頭蓋骨が融合したかのような頭部、そして青い瞳。
リルクスは二足歩行の化け物へと変身した。
「ふむ、咄嗟に神獣の血の情報をコピーしたとはいえ、及第点だな」
そう言いながら、自身の手のひらを見つめた後、リルクスは俺を見つめる。
「今度こそ、殺してやる出来損ないの失敗作が」
どうやら案外頭に来ているらしい。
「良い加減、子離れしろよ、パパ」
俺はそんなリルクスを笑ってやった。
リルクスは呟く。その呟きを聞く者は誰もいない、先ほどまで全能感が身体中を駆け巡っていたはずだった。
その全能感はいつのまにか、てからこぼれ落ちる絹のようにリルクスから抜けていった。
元からあった全能感を入れてあった心の余白だけ。
その空白はやがて喪失感と一抹の不安に変わっていく。
「まさか……」
そうしてようやくリルクスは気がつく。
「主導権を……失って──!!」
だが気づきはあまりにも遅かった。
視覚が、聴覚が、触覚が、リルクスのコントロールから離れていく。
支配権を取り戻そうとリルクスは、手を……いや実際には自分の体の感覚すらなかったが、もがくように手を伸ばす。自分がどこにいるのかすらわからないのにも関わらず。
だが、もはや体を支配する権利は大地と星ほど離れて行った。
─────────────
引き剥がす。引き剥がす。
「うあああッ!!」
アイツを、しがらみを血の因果を、支配を、俺は引き剥がす。
俺は引き剥がす。
俺を取り戻すために。
「やめろぉぉ!!」
奴の声が、叫び声が頭の中にこだまする。
「俺は──!!」
無視しろ、引き剥がすのだ。
「俺はぁ──!!」
簒奪しろ、自分自身を。
「俺は、ママなんだよ!!」
そう言ってまるで己の皮を引き剥がすように、仮面のようにまとわりつく角を破壊して、そして同時にリルクスを押し出す。
「貴様……!!」
まるで人肌色のスライムのような肉塊が俺の体内から放出される。
直感でわかる、その肉塊はリルクスの本体だと、そして同時に実感できる俺は……。
「ただいま、ミラナ」
俺はエルマーだ。
「……はぁ、やっと帰ってきた?」
「悪い、ちょっと手間取った」
「まあいい、何度でも乗っ取られようが助けてあげるから」
思わず俺は吹き出す。
久しぶりに余裕のないミラナを見れた。
「ありがとな、パパ」
「……からかうな」
そして俺は、ドンキホーテさんたちに向き直る。
「ダナノさん、ドンキホーテさん! 悪いもう完全に復活だ!! 迷惑かけた!」
「マジか、君、コントロールを自力で取り戻したのか?」
ドンキホーテさんは、呆れ半分驚愕半分を口元に滲ませた。
「はぁ……心配したぞ……」
ダナノさんに至っては腰を抜かして尻餅をついた。
そんな彼女に俺は親指を立てる。
はっ、と少し呆れた笑いがダナノさんの口から漏れた。
「何をした……」
すると人肌色のスライムの怨みのこもった声が響いた。
「どうして私から……奪う……」
「あ?」
何言ってんだこのクソスライム野郎は?
「今、貴様が息をできるのも、くだらない家族ごっこを享受できるのも! 全部私が産んでやってからだろう? なぜ私にその恩を還元しない?! 貴様は私がいるから存在できるのだぞ!!」
「こいつ、救えんぞ」
ダナノさんがリルクスに対して俺が言いたいことを簡潔にまとめる。
「ダナノ? 何が言いたい?」
するとスライムはせせら笑う。
「貴様も世継ぎのため、竜の世界のためにくだらない出来損ないのガキを産んだのだろう?」
「黙れ」
今度はダナノさんの代わりに俺が静かに言葉を捻り出す。
「この人は周りの反対を押し切ってまでも、ケイトネールを、アルバを探した。お前みたいな人手なしと違ってな」
「何が違う? 私とその竜と? 所詮自身の子供に対して愛玩としての価値を感じてるかどうかの違いだろう?」
「バカだなテメェ」
今度は俺がリルクスを笑う。
「愛玩? そんなチープな覚悟で、親が子を育てられるわけないだろうが」
俺はリルクスに向かって突きつけるように指を刺す。
「俺を……いや、俺だけじゃない色んなものを不要と捨てた腑抜けが! ダナノさんと同じわけないだろうが!」
その言葉を聞いて肌色のスライムは心底どうでも良さそうに──。
「くだらん」
と呟いた。そして、肌色のスライムは、リルクスは己の体を肥大させていく。
「遺伝子のコピーはかろうじて取れた」
そう言ってスライムの不定形から、形が、輪郭が定まっていく。
獅子のような足に、熊と人の手が融合したかのような異常な攻撃性を感じさせる手、山のような体躯に、犬と羊の頭蓋骨が融合したかのような頭部、そして青い瞳。
リルクスは二足歩行の化け物へと変身した。
「ふむ、咄嗟に神獣の血の情報をコピーしたとはいえ、及第点だな」
そう言いながら、自身の手のひらを見つめた後、リルクスは俺を見つめる。
「今度こそ、殺してやる出来損ないの失敗作が」
どうやら案外頭に来ているらしい。
「良い加減、子離れしろよ、パパ」
俺はそんなリルクスを笑ってやった。
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