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第百十四話 ただいま
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──私は、間違っていたのか?
己の失敗作に拳を叩きつけられ、その衝撃で粉々になっていく最中、リルクスは夢想する。
──何がいけなかった、完璧だったはずだ、美しかったはずだ、誰よりも何よりも、先を歩んでいた!
リルクス・カルマール。113歳、類稀なる頭脳と斬新な発想を持ち、若干の12歳という、若さで魔人たちの住む星、エーテラウスにて名門魔法大学、ブルーカレッジを卒業。専門は遺伝子操作によるキメラの生育。
──そうだ、この世に絶対の黄金比というものがあるのならば、それに近い人類を、生物を作り出されるのは私だけ──!
その後、ソール国、アトランタ王国等の国がある人間の星、ガイアリオンに移住。独自の研究を開始。
──私は正しい、私は誰よりも正解に近かった!
しかし、遺伝子の魔法研究の担い手としては、あまりにも倫理を無視した振る舞いが多く、そして優生思想とも呼べる偏った観点から多くの"研究とも呼べない研究"を量産していく。
──なのに、なぜ間違いである失敗作に私は負けている?!
故に次第に、他の魔法使いや研究者から疎まれ、避けられ。碌な研究結果を生み出せないまま彼は研究者ではなく、悪質なテロリストとして名を馳せていく。
そして、真なる人間を生み出すなどと嘯き机上の空論を振りかざす、中身のないリルクスをかつての仲間は侮蔑してこう呼んだ。
──私は……!?
空の魔法使いと。
─────────────
リルクスの破片が燃え盛り、空に霧散していく中、神獣の血の全てを解放したエルマーは再びクレーターの中心に降り立った。
返事も言葉もないただ黙り直立不動でエルマーは佇んでいる。
「エル……?」
不安げに、ミラナが呟く。今目の前に立っている、人物はエルマ─は正気なのか? それとも、神獣の血が暴走し理性の失っているのか?
判別がつかなかった。
「ミラナ君、これが……」
「……神獣の血を解放させたエルマー。暴走してるかもしれない、油断しないで」
一触即発の張り詰めた空気が流れる中、その時、一つの影がエルマーに近づいていった。
「母さぁん!!」
「あ?!」
「アルバ?!、」
忘れていた、子竜のケイトネールだ。思わず、場違いな声をあげてしまったミラナとダナノニウナが声をあげてしまう
リルクスがいなくなったのを察して、安全だと思い込み、近寄ってしまったのだろう。
だが、向かう先のエルマー本当に神獣の血を制御できているかどうかすらわからない、危険だ。
そのことを伝える前にケイトネールはエルマーに近寄る。
危ないと、ミラナたちが言おうとした瞬間、エルマーの手がケイトネールに伸びる。
間に合わない。
「アルバぁ!」
ダナノニウナの叫びが木霊する。
「……ケイト」
その時だった、エルマーの纏っていた角の仮面が割れる。
そして、彼の瞳にあるのは──。
「ケイトじゃねぇか! 悪い心配かけたな!」
──理性と優しさの光だった。
神獣の血によって、肥大化していた筋肉も徐々におさまり、血の象徴たる炎のような毛皮も消えていく。
「エル、アンタ……」
間違いなかった。エルマーは成し遂げたのだ。
「よう、ただいまミラナ」
己が血を、乗り越えたのだ。
己の失敗作に拳を叩きつけられ、その衝撃で粉々になっていく最中、リルクスは夢想する。
──何がいけなかった、完璧だったはずだ、美しかったはずだ、誰よりも何よりも、先を歩んでいた!
リルクス・カルマール。113歳、類稀なる頭脳と斬新な発想を持ち、若干の12歳という、若さで魔人たちの住む星、エーテラウスにて名門魔法大学、ブルーカレッジを卒業。専門は遺伝子操作によるキメラの生育。
──そうだ、この世に絶対の黄金比というものがあるのならば、それに近い人類を、生物を作り出されるのは私だけ──!
その後、ソール国、アトランタ王国等の国がある人間の星、ガイアリオンに移住。独自の研究を開始。
──私は正しい、私は誰よりも正解に近かった!
しかし、遺伝子の魔法研究の担い手としては、あまりにも倫理を無視した振る舞いが多く、そして優生思想とも呼べる偏った観点から多くの"研究とも呼べない研究"を量産していく。
──なのに、なぜ間違いである失敗作に私は負けている?!
故に次第に、他の魔法使いや研究者から疎まれ、避けられ。碌な研究結果を生み出せないまま彼は研究者ではなく、悪質なテロリストとして名を馳せていく。
そして、真なる人間を生み出すなどと嘯き机上の空論を振りかざす、中身のないリルクスをかつての仲間は侮蔑してこう呼んだ。
──私は……!?
空の魔法使いと。
─────────────
リルクスの破片が燃え盛り、空に霧散していく中、神獣の血の全てを解放したエルマーは再びクレーターの中心に降り立った。
返事も言葉もないただ黙り直立不動でエルマーは佇んでいる。
「エル……?」
不安げに、ミラナが呟く。今目の前に立っている、人物はエルマ─は正気なのか? それとも、神獣の血が暴走し理性の失っているのか?
判別がつかなかった。
「ミラナ君、これが……」
「……神獣の血を解放させたエルマー。暴走してるかもしれない、油断しないで」
一触即発の張り詰めた空気が流れる中、その時、一つの影がエルマーに近づいていった。
「母さぁん!!」
「あ?!」
「アルバ?!、」
忘れていた、子竜のケイトネールだ。思わず、場違いな声をあげてしまったミラナとダナノニウナが声をあげてしまう
リルクスがいなくなったのを察して、安全だと思い込み、近寄ってしまったのだろう。
だが、向かう先のエルマー本当に神獣の血を制御できているかどうかすらわからない、危険だ。
そのことを伝える前にケイトネールはエルマーに近寄る。
危ないと、ミラナたちが言おうとした瞬間、エルマーの手がケイトネールに伸びる。
間に合わない。
「アルバぁ!」
ダナノニウナの叫びが木霊する。
「……ケイト」
その時だった、エルマーの纏っていた角の仮面が割れる。
そして、彼の瞳にあるのは──。
「ケイトじゃねぇか! 悪い心配かけたな!」
──理性と優しさの光だった。
神獣の血によって、肥大化していた筋肉も徐々におさまり、血の象徴たる炎のような毛皮も消えていく。
「エル、アンタ……」
間違いなかった。エルマーは成し遂げたのだ。
「よう、ただいまミラナ」
己が血を、乗り越えたのだ。
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