俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太

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第百十五話 めでたし、めでたし

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 懐かしい、匂いがする。
 焼けたりんごと、香ばしい小麦の甘い匂い。

 夢にしては明瞭で、確かな香りでやがてそれが本物の匂いだと気がついたレミーラムは目を覚ました。

「ここは……?」

 時間がどれくらい流れたのか、わからない。屋根がある部屋に寝かされていたようだ、どうやら自分の仲間のスライムがここに連れてきてくれたのだと。レミーラムは理解すると早速、体を起こす。

「うん?」

 体が軽い、理由がわからないが、自分を蝕んでいた呪いの効力が消えていた。

「そうか、だからか……」

 レミーラムは笑った、確信があった。
 自分の父と母が成し遂げたのだと。
 その時だった。

「おわぁぁぁ!!」

 何かしらの陶器のような何かが割れる音共に、聞き覚えのある声が響き渡る。
 半分笑いながら、レミーラムはその叫び声の方へと向かうべく歩き出した。

 ─────────────

「ダナノさん! うろちょろしないでくれ! 料理なら俺がやるから!」

「アホ! 貴様は寝ていろというのがわからんのか! 料理ぐらい妾でもできるわ!」

「5枚目の皿を割る前に吐くべきなんだよそのセリフは!」

 そして通路を抜けドアを2回潜りおそらくキッチンにたどり着いたレミーラムが見た光景は、焦りながら砕け散った皿を片付けするエルマーと見知らぬ女性。
 その二人が口論する様子だった。

「全く、客人なんだから休んでればいいんだよ、ダナノさんは俺が招待したんだし!」

「馬鹿者! あんな動き回って休まず料理などするものではない!」

 どうやら別に敵対してるわけではないらしい、レミーラムはそんなわかりきった事を確認し、ため息をついた。
 二人は自分に気づかず、言い争いをしている。

 なんだか邪魔をしてはならない雰囲気だと、感じたレミーラムは静かにそこを立ち去ろうとした。

「あ! お兄ちゃん!」

「何してるの? レミー」

 聞き覚えのある二つの声に呼び止められるまでは。
 レミーラムが振り返るとそこにいたのは、父のミラナと末っ子のケイトネールだった。

「ケイト、父さん……!」

 その時だった、ガシャン、と6枚目の皿が割れる音がした。

「レミー?」

 すると、再びレミーはその音につられて振り返る。
 エルマーが皿を落としていた。その表情は驚きと喜びで固まっていた。

「れ、レミー!? 起きたのか!?」

 エルマーは思わずレミーラムに駆け寄る。肩を触り、頬に触れてエルマーはレミーラムの容態を確認する。

「もう良いのか!? 熱は? だるさは!?」

 心配そうに言う、エルマーにレミーラムはたじろぎながら笑う。

「大丈夫だよ、母さん心配性だな」

「心配するだろ! 心配しないわけないだろ!」

 そう言う、エルマー涙目になりながらそう言う。

「レミー、本当に──!」

 エルマーが何かを言いかけたその時だった。

「おい! エルマー! パイが!」

 ダナノさんと呼ばれた女性の声が響き渡る。
 石造りのオーブンから、焦げ臭い匂いが漂っていた。

「おわぁ! アップルパイがぁ!!」

 焦る、エルマーを見てミラナはため息をつく。

「ケイト、おとなしくできる?」

「うん!」

「良い子」とケイトを撫でた後、ミラナは誰にもバレないように頬を綻ばせながら、エルマーの元へ向かっていく。

「エル? 何すれば?」

「とりあえず……えーとサラダもあるし……料理持っててくれ! あと──」

 エルマーが指示を出していたその時だった。

「レミー兄さんの気配が──ああ! 兄さん!」

 猫の神獣のスカーレットと、

「急にどうした、スカーレット……レミー兄さん!?」

 そのスカーレットを追いかけてきたであろ天馬の神獣のリーンがミラナたちが入ってきた、ドアから顔を出す。
 二人とも人間体の姿で一瞬、レミーラムは困惑したが一瞬で、自身の兄弟だと直感で感じ取り、レミーは頷いた。

「え?! レミー兄さんですか?!」

 そしてそれと同時に、ドアに挟まる勢いで不死鳥のファムファームが部屋の中に入ってくる。

「おい! キッチンそんなに入れねぇって!」

 エルマーの叫びがキッチンに木霊する。そんな姿を見てレミーラムは声をあげて笑ってしまった。
 騒がしいがいつもの日常だ、かつて当たり前にあって忘れていたものだ。

 そして、そういえばまだ言っていないことがあると思い出したレミーラムは慌てるエルマーに向かってこう言った。

「母さん」

「ん? なんだ? レミーラム? ごめん、今ちょっと──!」

「おはよう……!」

 少し焦げたパイ、騒がしい調理場、そんな完璧とはいえないこの日常。それを噛み締めて、レミーラムはそう言った。

 その言葉にエルマーは手をとめ、ただ微笑む。
 そうだまた再び日常を始めるならきっとこの言葉が必要なのだ。

「そうだな……おはよう、レミーラム」

 ─────────────

 日常は続いていく、たとえそれが不完全だとしても、完璧なものでないとしても、たとえ何もかもが相容れないこと出しても、俺と君はきっと何もかも違う。
 だからこそ、その違いを愛して生きていくのだ。
 それが家族だってことなんだと思う。だからそうだな、俺は今でも、傲慢だと言われてもこう名乗れる。そう成りたいと思う。

「俺、神獣達のママなんです」

 ってさ
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