俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太

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第四十五話 帰ろうぜ?

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「が、ああ!」

 胴体が言霊の剣の光により胴体が吹き飛び、首だけになったバルバザールは叫んだ。

 死にたくない、生きたい。私がこんなふうに終わっていいはずがない。

 違う、違う、違う、間違いだ。
 夢だ、夢だ!!

 だがぼとりと自身の首が落ちた衝撃を感じ取ったその時、実感する、ああ己の命は終わったのだと。
 冷たい絶望が消し飛んだはずのバルバザールの胸を締め付けた。

 ただ、消えゆくバルバザールが思うことは一つ。

「こんなことに、なるなら……なんで……私は、神よ……」

 ああ、なぜ私は吸血鬼になったのか、どうして私は生きてきたのか。

「母さん……」

 そのバルバザールの言葉は空に吸い込まれ消えていった。

 ─────────────

 母さん、と誰かが呟く声がした。
 誰かが望んだ声がした。

「……」

 俺はただ祈りを捧げる。
 それしかできなかった。
 目の前で灰となり崩れ去っていく吸血鬼にただ、憐憫の情を僅かに滲ませ祈ることしか。

「やったぞ! 吸血鬼を倒したんだ!!」

 カロロスの部下の一人がそう叫ぶそれが呼び水となり、一気に完成が上がった。
 珍しくミラナでさえも、笑みをこぼし俺に近づいてくる。

「エル、大丈夫?」

「大丈夫に見えるかよ、もうダメだ指一本も動かせねぇ」

「そう、口が動くなら充分元気でしょ。安心した」

「そうだろ……? 肩貸せよ、足腰も元気なところ見せてやっから」

「はいはい」

 俺はミラナの手を取り、そのまま肩に手を回す。

 俺たちにはまだやることがある。
 ミラナに支えられながら、ゆっくりとゆっくりと、俺は我が子ファムファームの場所まで近づいた。

「ファムファーム」

 俺の呼び声に俺の娘はピクリと羽を震わせる。

「お母様、お父様……!」

 瞳に涙を滲ませながら、ファムファームは二本の足で俺たちに近づいてきた。

「ごめんなさい……ごめんなさい……私……私怖くて、人を……信じられなくなって……母様と父様に20年も会えなかったから……なんだ今更って」

「大丈夫だ、全部。わかってるよ」

 おそらく、ファムファームには己が過去に飛ばされたことさえもわかってないんだろう。

 俺はファムファームの頬に手を添える。

「随分と立派に成長したな……! こんなに大きくなって……」

 子の成長を喜ぶべきことなのだろうが、だがしかし同時にそれほどまでに長い年月をこの子に孤独に過ごさせてしまった。

 それが俺には悔しかった。でもそうだ。言わねばならないことがある。

「おかえり……ファムファーム」

「……! はい! お母様! お父様!」

 すると、背後に人の気配がした。
 忘れていた、まだ終わっていない俺たちは不死鳥狩りの真っ最中ではないか。

「くっ!」

 急いで、俺は背後を見る。
 足に力を入れて震える両足で立ちミラナから肩から手を離した。
 まず最初に目に入ったのがアンヌ。明らかに怒気が顔に刻まれている、マズい!

「エルマー!」

「は、はい!!」

 思わずアンヌから飛び出した大きな声が俺の肩をびくつかせる。

「事情はなんとなく察しがつきました!」

「はい……?」

「不死鳥さんを助けたいのならばなぜそう言わないんですの!? 私に!!」

 アンヌは怒っていた。
 あんなにのほほんとしていたお嬢様の初めて見る怒りに若干戸惑いつつ俺は言う。

「あ、あ……すまない……! その俺……皆んな不死鳥を狩ろうとしてたから……そのわかってくれないと……」

「もう! 危うくあなたの大切な家族を全身タンコブまみれにするところでしたのよ!? ちゃんと言ってくださいまし!!」

「あ、はい! すいません! すいません!」

 平謝りする俺にふふっとミラナは笑う。
 笑ってる場合か! 大体、アンヌはわかってくれたとしても他の奴らが……!

「ってあれ?」 

 いつの間にかカロロス達がいない。

「カロロスならもう帰ったぞ」

 いつの間にかいた隣にいたキリエモンがそう言う。

「え、帰った?」

「吸血鬼の灰を持ってな、抜け目ない男だ」

 キリエモンの言う通り吸血鬼の灰がどこにもない、あいつ咄嗟に標的をファムファームから吸血鬼に変えやがった!

 多分俺たちの目的を知った上でこれ以上、めんどくさくならないようにするための折衷案だろうが……よくマシラウスなんかの冒険者を説得できたな……。

 と言うか、それだけじゃない。

「キリエモン、お前はもうファムファームは襲わない……んだよな……?」

「拙者はもういい……母上とはもう会えた……」

「そうかい……」

 俺たちは笑った。
 おかしなパーティだったが、間違いなくこれだけは言える。

「ありがとうな、お前らとパーティ組めて良かった……」

「こちらこそ!!」

 アンヌはそう言って微笑む。

「ごめんな、アンヌ……結局騙しちまって……」

「いいですわ、自分の恋の一つや二つ、己の拳で勝ち取る物……そうでしょう?」

「そうなのか? いや……そうなんだろうな」

「そうですとも!」と胸を張るアンヌ。
 そんなアンヌを見てキリエモンも若干、頬を綻ばせる。

「じゃあ……帰るか、ミラナ……ファムファーム」

「……そう……そうしましょう」

 ミラナが頷き、ファムファームも小さく「はい」と返事をした。

 どこに帰るかなんてわからない。でも自然に出た言葉だった。
 それでも……きっとこの言葉は何も間違っちゃいない気がした。

 そうだ俺たちはこれから帰るんだ、あの頃みたいに。
 また、家族となって。

 ─────────────

「ボス!! 本当にいいんですか!?」

「あ? なんだよマック?」

 
 ひと足先に白銀の森を後にし、首都ローゼカールへと足を運ぶカロロスは部下のマックにぶっきらぼうにそう言った。

「だって不死鳥ですよ!? ビジネスチャンスがぁ……」

 部下と協力関係にあった冒険者達も同じような気持ちなのだろういかにも不満であると言う顔を隠そうともしない。

 それを代弁するかのように発言した部下のマックに対してカロロスはいった。

「マックいいかぁ? 不死鳥よりも吸血鬼の方が報酬が高い、そして何よりも、金よりも有り余るものが俺たちには手に入る」

「なんすか?」

「わからねぇか? マック?」

 カロロスはニヤリと笑い、行軍するように歩いている部下や協力関係の冒険者達に向かって叫んだ。

「栄光だよ栄光!! それに信頼! 信用! 俺たちはついに世間一般から認められる優良会社となる!! 冒険者のテメェらも身に余る栄光を受けるぞ! 何せ手土産は国落としの吸血鬼『バルバザール』だからなぁ!」

 そのカロロスの言葉に「なるほど!」「さすがボス!」などと完成の声が上がる、おまけに先ほどのスピーチで冒険者も納得したらしい。

「それによ……」

 その熱狂の中、カロロスは思い出す。
 不死鳥とそれに寄り添うエルマーとミラナの姿を。

「あれに割って入るほど俺も野暮じゃねえよ」

 そう言ってカロロスは歩んでいく。
 吸血鬼の灰を手土産にカルミナ国、首都ローゼカールへと。
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