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第四十八話 夢の国アトス
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見たことのない街。
異様な天に届かんばかりの城。
そしてひとりぼっちで佇む自分自身。
夜に取り残された、カミネはただ困惑した。
エルマーはどこに行ったのか、ミラナはどこにいるのか。
二人ともまさか自分を見捨てていくようなそんな人間ではない。
そのことはカミネ自身もわかっていた。
(でも……もしかしたら本当に愛想を尽かして……)
ありえない、二人に限って。いやそうと言い切れるのだろうか。
この状況が物語っているのではないか。
そこまで考えて、カミネは思考を止めた。
とにかく何かがおかしい。
探しに行かなければならない、エルマーとカミネを。
そう思い立ったカミネは早速、足を動かした。
目指すは目の前にある王都アトスらしき都の入り口だ。
ちょうど視界の隅にガス灯の明かりが街と外界を分ける門を照らしていた。
今もその門は開いているらしい、門番らしき兵士が二人門の両端に立っている。
急いでカミネはそこに走って行った。
─────────────
「あ、あのすいません!」
「うん? どうしたのかなお嬢さんこんな夜中に」
カミネの問いかけに門番の男兵士が優しく返事をする。
「その……ここって王都アトスですか?」
カミネの質問に男兵士はニコリと笑った。
「ああ! 昔はね!」
「え? それはどう言う……」
「今は王都アトスじゃないんだ! この都は夢の国アトスとなったんだ!」
行っている意味がわからない、そんなカミネの困惑した様子に兵士はまた笑いながら門のその先を指差した。
その指の先にはどこまでも続く暗闇とそして小さな光の点が見える。
「この暗い道をまっすぐ行けば夢の国に入れる! いいかいまっすぐだ、ただまっすぐに進むんだよ」
笑顔で門番はそう言う。
おかしい、門番が指し示す門の向こう側に続く道は明らかに、数百メートルはくらいはある。
街と外界を繋ぐ門の外門と内門の距離がここまで長かった覚えはない。
ごくりとカミネは息を飲み干した。
明らかに異常だ。
そして今気がついたが、この門番の兵士も変だ、カミネは気がついた。
肩には軍用のライフル、腰にはサーベルを差し、頭は獣の毛皮のようにフワフワとした所謂ベアスキンなどとも呼ばれる、大きな帽子をかぶっているが、果たして王都アトスの門番の兵士はこのような格好だっただろうか。
明らかにまるで、子供たちが想像するようなおもちゃの兵士。それを再現して仮装したかのような出たちの門番にカミネは不信感を抱いていた。
「どうしたんだい? お嬢さん? 行かないのかい?」
「……あ、いえ! ありがとうございます!」
門番は心配そうに語りかける。
純朴、そして素朴な善意からの問いかけだったが、カミネにとっては心の表面をざらりと撫でられるような不安感を覚えさせられる。
しかし、どちらにしても、あのまま外にいるのも危険だ。魔物にも襲われるかもしれない。
カミネには選択肢が無かった。
カミネは歩き出した、王都アトスの中へと。
─────────────
長い長い暗闇の中カミネは、歩き続ける。
門番が言うにはずっと真っ直ぐ歩き続ければ王都アトス、いや夢の国アトスとやらに行けるらしいが、本当にそうなのだろうか、果たしてそれは真実なのであろうか。
不安が周りの闇の色を一層濃く、深くしていく。
そんな不安と同時に段々と広がっていく出口の光にカミネはより一層安心ができない
一体何が待ち受けているのか、エルマーはいるのかミラナはいるのか、さまざまな思考が湧水のように出てきては泡のように弾けて消えてを繰り返していく。
そしてついに、そんな思考を交えながらもカミネはついに、トンネルを抜けた。
「うわぁ……!」
カミネは眼を疑った。
目の前に広がるのはまさに祭りの光景だった。
ガス灯が爛々と輝き、レンガの歩道を道ゆく人々は様々な仮装をして、軒並み並んだ屋台で何かを買っている。
「なに……ここ……?」
少なくともカミネのよく知る王都アトスではない。
恐る恐るカミネは歩き出す。
異様で不思議な光景だ、子供も大人も様々な仮装をしている。
狼男に、吸血鬼、騎士、怪盗。多種多様な仮装であるが中にはカミネのわからないモチーフの仮装もちらほらある。
落ち着こう、カミネは深呼吸する。
まずはとりあえず聞き込みだ、見たところ人々は攻撃的な様子は見せていない。
「あ、あの!」
カミネは意を決して近くにいた狼男の仮装をしている男に尋ねた。
「ん? どうした? 君?」
「ひ、人を探しているんです!」
そこまで聞いたところで男はカミネのことを迷子だと思ったようだ。
早合点した男は腰を落としてカミネに話しかける。
「お母さんやお父さんとはぐれちゃったのかな?」
「……! そうです!」
とりあえずそうした方が話しがスムーズに進むだろうと察しあえて男の勘違いに便乗した。
「わかった、とりあえずお父さんとお母さんの名前を教えてくれる?」
男は親切にそう言った。
カミネは若干安心した良かった、都は異様な様子だったがそこに住む人々は善良なようだと。
「えっと、エルマーとミラナって言います!」
そう、思っていた。
カミネがその言葉を放ったその瞬間だった。
道ゆく人々が、屋台の店主が、先ほどまで仮装を楽しでいた歩行者が、そして目の前にいる男が、じっと一斉に、無表情にカミネを見た。
「……え、あ、あの……」
カミネが困惑したその時だった。
男がカミネの首元に思い切りつかみ掛かった。
異様な天に届かんばかりの城。
そしてひとりぼっちで佇む自分自身。
夜に取り残された、カミネはただ困惑した。
エルマーはどこに行ったのか、ミラナはどこにいるのか。
二人ともまさか自分を見捨てていくようなそんな人間ではない。
そのことはカミネ自身もわかっていた。
(でも……もしかしたら本当に愛想を尽かして……)
ありえない、二人に限って。いやそうと言い切れるのだろうか。
この状況が物語っているのではないか。
そこまで考えて、カミネは思考を止めた。
とにかく何かがおかしい。
探しに行かなければならない、エルマーとカミネを。
そう思い立ったカミネは早速、足を動かした。
目指すは目の前にある王都アトスらしき都の入り口だ。
ちょうど視界の隅にガス灯の明かりが街と外界を分ける門を照らしていた。
今もその門は開いているらしい、門番らしき兵士が二人門の両端に立っている。
急いでカミネはそこに走って行った。
─────────────
「あ、あのすいません!」
「うん? どうしたのかなお嬢さんこんな夜中に」
カミネの問いかけに門番の男兵士が優しく返事をする。
「その……ここって王都アトスですか?」
カミネの質問に男兵士はニコリと笑った。
「ああ! 昔はね!」
「え? それはどう言う……」
「今は王都アトスじゃないんだ! この都は夢の国アトスとなったんだ!」
行っている意味がわからない、そんなカミネの困惑した様子に兵士はまた笑いながら門のその先を指差した。
その指の先にはどこまでも続く暗闇とそして小さな光の点が見える。
「この暗い道をまっすぐ行けば夢の国に入れる! いいかいまっすぐだ、ただまっすぐに進むんだよ」
笑顔で門番はそう言う。
おかしい、門番が指し示す門の向こう側に続く道は明らかに、数百メートルはくらいはある。
街と外界を繋ぐ門の外門と内門の距離がここまで長かった覚えはない。
ごくりとカミネは息を飲み干した。
明らかに異常だ。
そして今気がついたが、この門番の兵士も変だ、カミネは気がついた。
肩には軍用のライフル、腰にはサーベルを差し、頭は獣の毛皮のようにフワフワとした所謂ベアスキンなどとも呼ばれる、大きな帽子をかぶっているが、果たして王都アトスの門番の兵士はこのような格好だっただろうか。
明らかにまるで、子供たちが想像するようなおもちゃの兵士。それを再現して仮装したかのような出たちの門番にカミネは不信感を抱いていた。
「どうしたんだい? お嬢さん? 行かないのかい?」
「……あ、いえ! ありがとうございます!」
門番は心配そうに語りかける。
純朴、そして素朴な善意からの問いかけだったが、カミネにとっては心の表面をざらりと撫でられるような不安感を覚えさせられる。
しかし、どちらにしても、あのまま外にいるのも危険だ。魔物にも襲われるかもしれない。
カミネには選択肢が無かった。
カミネは歩き出した、王都アトスの中へと。
─────────────
長い長い暗闇の中カミネは、歩き続ける。
門番が言うにはずっと真っ直ぐ歩き続ければ王都アトス、いや夢の国アトスとやらに行けるらしいが、本当にそうなのだろうか、果たしてそれは真実なのであろうか。
不安が周りの闇の色を一層濃く、深くしていく。
そんな不安と同時に段々と広がっていく出口の光にカミネはより一層安心ができない
一体何が待ち受けているのか、エルマーはいるのかミラナはいるのか、さまざまな思考が湧水のように出てきては泡のように弾けて消えてを繰り返していく。
そしてついに、そんな思考を交えながらもカミネはついに、トンネルを抜けた。
「うわぁ……!」
カミネは眼を疑った。
目の前に広がるのはまさに祭りの光景だった。
ガス灯が爛々と輝き、レンガの歩道を道ゆく人々は様々な仮装をして、軒並み並んだ屋台で何かを買っている。
「なに……ここ……?」
少なくともカミネのよく知る王都アトスではない。
恐る恐るカミネは歩き出す。
異様で不思議な光景だ、子供も大人も様々な仮装をしている。
狼男に、吸血鬼、騎士、怪盗。多種多様な仮装であるが中にはカミネのわからないモチーフの仮装もちらほらある。
落ち着こう、カミネは深呼吸する。
まずはとりあえず聞き込みだ、見たところ人々は攻撃的な様子は見せていない。
「あ、あの!」
カミネは意を決して近くにいた狼男の仮装をしている男に尋ねた。
「ん? どうした? 君?」
「ひ、人を探しているんです!」
そこまで聞いたところで男はカミネのことを迷子だと思ったようだ。
早合点した男は腰を落としてカミネに話しかける。
「お母さんやお父さんとはぐれちゃったのかな?」
「……! そうです!」
とりあえずそうした方が話しがスムーズに進むだろうと察しあえて男の勘違いに便乗した。
「わかった、とりあえずお父さんとお母さんの名前を教えてくれる?」
男は親切にそう言った。
カミネは若干安心した良かった、都は異様な様子だったがそこに住む人々は善良なようだと。
「えっと、エルマーとミラナって言います!」
そう、思っていた。
カミネがその言葉を放ったその瞬間だった。
道ゆく人々が、屋台の店主が、先ほどまで仮装を楽しでいた歩行者が、そして目の前にいる男が、じっと一斉に、無表情にカミネを見た。
「……え、あ、あの……」
カミネが困惑したその時だった。
男がカミネの首元に思い切りつかみ掛かった。
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