俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太

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第六十七話 反撃開始

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「みんな! 任務成功おめでとうである!」

 ラクレはカミネ達に向かってジョッキを掲げる。
 リーンを救い出した、カミネ達一向は無事、あのアジトである酒場に戻ってきていた。

「いやぁ! めでたいであるな!」

 ジョッキの中の酒を立ったまま飲み干してラクレはそう言った。
 それぞれ席につき、飲み物を手に取っているカミネ達はラクレに続いてごくりと飲み物を飲み干した。

「ぷは……」

 カミネは、ラクレからもらった葡萄のジュースを飲み干し一息ついた後で、じっとラクレを見つめた。

「ラクレさん?」

「なんであるか? カミネ姫」

「アジトに戻って、パーティなんていいの?」

 もっともな質問にラクレは笑う。

「いいのである! どのみち吾輩達はアイツの手の内にいるのであるからな!」

「アタシがいうのもなんだが、相変わらず気楽だなお前」

 リーンが呆れるように言った。そして彼女もラクレから渡されていたグラスを傾けて飲み干すと、目を細めてじっとカミネの隣に座るアールを見つめる。

「で、まさかの騎士団長様がここにいるとはな。ラクレどういうことだこれは?」

「アール殿は仲間である」

「わかってる、でもアタシの敵であることも、理解してるよな? そしてアタシはコイツの敵だ」

 射抜くようにアールを見つめるリーン。
 灰色の髪の向こう側に敵意が垣間見える。

「リーン殿……」

 アールは小さく、しかし毅然とした態度で口を開いた。

「貴様ら騎士団がアタシ達にした事は忘れてないぞ、母さんと父さんを牢屋に入れて、虐待紛いの洗脳をしたことも覚えている」

 リーンは背中から翼を出現させる。
 明らかな怒りとともにアールを睨みつけたリーンは一歩踏み出し、手を翳した。

「リーン!」

 ラクレの叫びに似た声にも彼女は止まらない。

「あの頃のような若造じゃないんだよ! アタシはもう人型の形態に変化するほどまでに力をつけた!!」

「……私に何を望む……」

 そんな怒りを発するリーンに対してアールは問うた。

「望み? そんなのないね。私が言っているのは、私たちは因縁のある宿敵同士だってことだ。アタシはアンタに恨みがあるし力もある、それはアンタも同じだろ? アタシは王都を滅ぼした神獣の一体なんだ! アンタは私に──」

「恨みなど、もうない」

 その一言に、場が静まり返る。
 カロンとアールのジョッキに入っていた。氷が音を立てて崩れた。

「王都の崩壊は私たち国の上層部が招いたことだ。無理に神獣をコントロールしようとし、失敗した」

 フッ、とアールは笑う。

「もうこの夢の世界に入って何十年になる……この王都アトスの探索時にな……夢の都になる前の当時の裁判の記録をたまたま手に入れた、その時に君の父の……いや母だったか? エルマーの記録も見た」

 いつのまにか、リーンは背中から広げた翼をたたんだ。
 手も下ろし同時に片方の手で肘を抑え俯く。

「彼は、訴え続けていた。神獣達は自分以外には懐かない、お互いが不幸になるだけだ、家族と一緒にいさせてくれと。数にして3回、1か月間で3回だ、裁判を起こしている」

 アールはリーンを見つめた。

「彼は知識があった、アトランタ王国の法律を良く知っていた……いや正確には神獣たちと……君たちと暮らすために得た知識なのだろう、その結果裁判は長引いたんだ。だが結果は知っての通りだ」

 ジョッキの中の氷が再び音を立てる。

「王都は壊滅した。当たり前だ、神獣達の心を良く理解する人間の言葉にも耳を傾けず、無理にコントロールしようとしたツケを払った……」

「だから」とアールはリーンを見つめる。

「許して欲しいとは言わん、だがこの都の人々には罪はない! あるのは私たち国の上層の軍部や政に関わるもの達だ、だから……どうか都の人々だけは……!」

 アールは深々と頭を下げた。
 騎士団長のプライドなどもはやどこにもなかった。
 そこにはただこの都を愛するただ一人の男がいた。

「……すまない、アタシも感情的だった」

 リーンもまたアールに向かって頭を下げる。

「そんで、アタシ達も無垢な被害者とはいえない……王都を破壊した……母さんと父さんを探すために……母さん達もひどいことされてると思ったから……人死を出さないようにしたが、それでも住む家を失った人たちには、その……申し訳なく思ってる」

 お互いに交わした謝罪の言葉しかし、それ以降に続く言葉もなくただ沈黙が流れていく。

「じゃあ……そ、その!!」

 そんな時、そんな沈黙を打破したのはカミネだった。

「私がいうのもなんだけどその……! みんなで王都を取り戻そうよ!! そうすれば王都も元の姿に戻る、また……そうまた一からやり直そうよ! 皆んなで、一から!」

「その通りである!」

 カミネの言葉にラクレも同様に声を上げた。

「また、前を見て進んでいけばいいのである! 罪とか責任とか、因縁とか宿敵とかは一旦置いておこう! なのである!」

 その言葉に、その提案にリーンは思い詰めた顔をしつつアールに向かって手を差し出す。

「……これは」

 アールの不思議そうな顔を見てリーンは言った。

「その、今度はその……謝罪とか贖罪のための握手じゃない……共闘を誓うための、あ、握手だ」

 しどろもどろな彼女にアールは苦笑いを浮かべつつ、だが彼女の顔を見据えて差し出された手を力強く掴んだ。

「ああ、よろしく頼むリーン殿……!」
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