俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太

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第七十二話 まあ、とりあえずシチューでもいかが?

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「……」

「……」

「…………なんか喋りなさいよエル」

「無理だよミラナ、今起こってる事にどう整理をつけて喋りゃあいいんだ?」

 エルマーはリーン達を向かい入れた、向かいれたはいいものの、居た堪れない雰囲気の中、沈黙が運河のように流れていた。

 テーブルを挟みカミネ達とエルマーとミラナの二人がただ見つめ合う。

 そんな耐え難いバックグラウンドミュージックの流れるシュールな世界にポツリと言葉が響き渡った。

「そんで……なんで半裸なんだアンタ?」

「正装である!」

 エルマーの問いに元気よく答えるラクレ。

「正装なんだ……」

 そうか、とエルマーは頷いた。
 沈黙。

「バカなの? 他に喋ることあるでしょ?」

 ミラナの最もな指摘が沈黙を破る。

「あ、そうだそうだ。皆んなシチュー食うか?」

「エル、違うでしょうが」

「なんだよ、じゃあ何を話すんだ? 混乱で頭が爆発しそうなんだよ……実際にはもう三分の一くらい吹き飛んでるかもしれない」

 エルマーはため息をつきながら天井を見た。

「はぁ……カミネを見た途端思い出したんだもんなぁ……この世界のこと……」

 そして、エルマーはカミネを見つめて言った。

「カミネ……ごめんな……!!!!」

 手をテーブルについてエルマーは頭をテーブルに擦り合わせる。

「いや、いいよ……その玄関で千回ぐらい謝られたし……」

「俺、君のこと忘れてここで楽しくやってた! 本当にすまない!!!」

「だ、だから良いって……」

 エルマーの謝罪はミラナが鋭利な手刀が彼の首に直撃するまで続いた。

「さて、アナタ達がきたと言うことはもう犯人の目星もついてるんでしょ?」

 ミラナはカミネ達に言う。

「君は……わかっているのか?」

「ええ……確か……アール騎士団長? でしょう?」

「ミラナ! このおじさん知ってんのか!?」

「エル、アンタが忘れてるのが可笑しいのよ、ほらレミーの……」

「え、ああ!? あの時の騎士団長さん!? なんでいんのよ!」

「……私のことはとりあえず置いておいてくれ……」

 そうね、とミラナはぼやくように言い、話を続ける。

「ここにいる私の妻、エルは気づいてなかったけど、私自身は気づいていた。この世界の異常性をね」

「ほう! 良い目を持っているのであるな!」

 ラクレは賞賛する。

「……そう、だから早期に気がつけた。本当はアナタ達と、接触したかったんだけど……この世界の脆弱性を探ることの方が先だと思ってね」

 ミラナは続ける。

「それで鍵を最近見つけた。特にスカーレットも気づいていない鍵を」

「カミネ、だろう父さん」

 リーンが口を挟む。

「そう、さすがリーン」

 へへ、とリーンは笑う。

「この世界は夢の世界だから……当然、心がかなり影響する……特にこの世界の創造主であるスカーレットの心はね……」

「なんだ? ミラナじゃあスカーレットはカミネを特別気にかけてたってことか?」

「逆よエル」

「「逆?」」

 思わず、エルマーとカミネの頭に同時に疑問符が浮かんだ。

「スカーレットはカミネが、この夢を破壊する存在だと思った。現に姿を見ただけでエルマーは夢から覚めちゃったでしょ?」

「ああ、なるほど!! 嫌いすぎて逆に意識ちゃう感じか?!」

「そう言うこと」

 そこまで聞いて、カミネは気がついた。
 時々見ていた恐らくスカーレットの夢、あれは恐らく……。

「じゃあスカーレットの夢を私が見ていたのも……」

「そう、カミネ。アナタを意識しすぎるあまり逆にスカーレットがアナタを自分の夢の世界に招いてしまったってことね」

 そこまでの説明を聞いて、「なるほど」とラクレは膝を打った。

「これでようやく謎が解けたのである! しかし、さすがカミネ姫の親御さんであるな!! めちゃくちゃ理知的である!」

「え? カミネは実子じゃないぞ?」

「え?」

 エルマーの言葉にその場にいる全員が固まってしまった。

 ─────────────

 僕はいつも、ように仕事を終えてあくびをする。
 全く幸せだ、いつもと変わらない日常。
 変化のない街の雰囲気。

 唯一変わるのは空模様だけ。

 美しい、砕けないダイヤがあったらどうだろうか、褪せない名画があったとしたら、変わらない愛がそこにあったなら……。

 永遠、それはどんなものよりも美しい。

 またこのドアを開ければ、変わらない日常が訪れる。

「ただいま」

 僕はドアを開けた。

「おかえりスカーレット」

「は?」

 変わらない日常が続いていくはずだった。
 そこにいたのは、いるはずの無い、兄弟の姿だった。

「リーン……!!」
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