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第七十六話 学校
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カミネは学校に向かっていく。
いつもの大通り。馬車が走り露店が並ぶ王都アトスのメインストリートには主婦や学校に行くには幼い子供、店主達が物品のやり取りをしている。
この光景がカミネにとって堪らなく心苦しかった。
真面目に働き、真面目に生きている人々と比べたら、自分はいかに浅ましくそしてどうしようもない人間に見えているだろうか。
だがだからと言って学校に行きたいと思えるほど、カミネは強くもなかった。
真っ当に生きる人々の目を掻い潜りながら、カミネは学校に向かう。
カミネは学校が好きではなかった。
クラスメートはカミネを異物として扱った。
カミネの父は有名な商人の家系であり社交界でも有名だった。
それ故に噂が広がるのも早かったのだろう。
カミネは妾の子だとしてまるで鼻つまみもののような扱いを受けていた。
カミネは他のクラスメートにとって排除してもいい大義名分のある異常な子供だったのである。
そしてそれは子供の理屈。理不尽で覆しようのないものだった。
どんなにカミネが上品にそして誠実に振る舞っても、子供達は決してカミネを認めたり、あらためてカミネを優しく扱おうなどと思う者はいなかったのだ。
子供特有のモラルのなさ、そして何より等の排除に加担している子供本人達は半分遊びのつもりでやっていた為、それが尚更カミネの心を傷つけた。
だがだからと言って学校をサボると言う選択肢をカミネは取れなかった。それは不真面目な気がするしどうしてもそんな選択肢が心の中に浮かぶ自分を責めずにはいられなかった。
──世の中には学校に行けない恵まれないの子もいるのだよ?
父の何回聞いたかわからない説教の言葉をカミネは反芻する。
だがカミネはどうしても、不謹慎だと、不誠実だとわかっていてもそんな恵まれず自分の力で働く子供になりたかった。
もっと言えばカミネは鳥になりたかった。
社会は、人間の世界はしがらみが多すぎる。
しかしそんな夢のようなことを考えても仕方がない。
そう、そんな夢のような──。
「なれる」
誰かの声が頭に響く。
「鳥になろうよ」
聞いたことのある声だった。最近聞いたことのあるような、しかし明確に思い出せない男の声だ。
「夢の中なら、その世界なら君はどこまでも自由になれる」
そうだ、カミネは思い至った。
なぜ自分は朝ベッドから体を起こしたのだろう。
なぜ父の言葉に従って学校に行ったのだろう。
あの時、あの時点で全部を無視して引き篭もって仕舞えば……夢を見ていればよかったのになんで、自分は起きたのだろう。
カミネはいつしか立ち止まっていた。
もう眠たい。
そうだ、また夢を見よう。
カミネが近くの民家の壁にもたれかかったその時だった。
「ミラナ飛ばせぇ!!」
また、誰かの声が聞こえた。
馬なしの馬車が走ってくる。鉄の棺桶のような馬車が。
トランクからは複数の白い腕が伸びてカミネを捕まえてしまった。
「うああ!!」
思わずカミネは叫び声を上げて白い腕に掴まれる。
そしてカミネは学校に行くことなく、王都アトスの外へと連れ出されて行った。
いつもの大通り。馬車が走り露店が並ぶ王都アトスのメインストリートには主婦や学校に行くには幼い子供、店主達が物品のやり取りをしている。
この光景がカミネにとって堪らなく心苦しかった。
真面目に働き、真面目に生きている人々と比べたら、自分はいかに浅ましくそしてどうしようもない人間に見えているだろうか。
だがだからと言って学校に行きたいと思えるほど、カミネは強くもなかった。
真っ当に生きる人々の目を掻い潜りながら、カミネは学校に向かう。
カミネは学校が好きではなかった。
クラスメートはカミネを異物として扱った。
カミネの父は有名な商人の家系であり社交界でも有名だった。
それ故に噂が広がるのも早かったのだろう。
カミネは妾の子だとしてまるで鼻つまみもののような扱いを受けていた。
カミネは他のクラスメートにとって排除してもいい大義名分のある異常な子供だったのである。
そしてそれは子供の理屈。理不尽で覆しようのないものだった。
どんなにカミネが上品にそして誠実に振る舞っても、子供達は決してカミネを認めたり、あらためてカミネを優しく扱おうなどと思う者はいなかったのだ。
子供特有のモラルのなさ、そして何より等の排除に加担している子供本人達は半分遊びのつもりでやっていた為、それが尚更カミネの心を傷つけた。
だがだからと言って学校をサボると言う選択肢をカミネは取れなかった。それは不真面目な気がするしどうしてもそんな選択肢が心の中に浮かぶ自分を責めずにはいられなかった。
──世の中には学校に行けない恵まれないの子もいるのだよ?
父の何回聞いたかわからない説教の言葉をカミネは反芻する。
だがカミネはどうしても、不謹慎だと、不誠実だとわかっていてもそんな恵まれず自分の力で働く子供になりたかった。
もっと言えばカミネは鳥になりたかった。
社会は、人間の世界はしがらみが多すぎる。
しかしそんな夢のようなことを考えても仕方がない。
そう、そんな夢のような──。
「なれる」
誰かの声が頭に響く。
「鳥になろうよ」
聞いたことのある声だった。最近聞いたことのあるような、しかし明確に思い出せない男の声だ。
「夢の中なら、その世界なら君はどこまでも自由になれる」
そうだ、カミネは思い至った。
なぜ自分は朝ベッドから体を起こしたのだろう。
なぜ父の言葉に従って学校に行ったのだろう。
あの時、あの時点で全部を無視して引き篭もって仕舞えば……夢を見ていればよかったのになんで、自分は起きたのだろう。
カミネはいつしか立ち止まっていた。
もう眠たい。
そうだ、また夢を見よう。
カミネが近くの民家の壁にもたれかかったその時だった。
「ミラナ飛ばせぇ!!」
また、誰かの声が聞こえた。
馬なしの馬車が走ってくる。鉄の棺桶のような馬車が。
トランクからは複数の白い腕が伸びてカミネを捕まえてしまった。
「うああ!!」
思わずカミネは叫び声を上げて白い腕に掴まれる。
そしてカミネは学校に行くことなく、王都アトスの外へと連れ出されて行った。
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