80 / 115
第八十話 グッドモーニング③
しおりを挟む
「おいおいおい……!」
エルマーは思わず、拳を握りしめる。
──随分と厄介なことをしてくれたな、スカーレット。
チラリと辺りを見回す。エルマーの近くにいるのは寝ているアールとラクレ、そしてミラナだ。
起きているのは、エルマー自身とカミネだけだ。
やはり、目の前にいる漆黒のミラナはやはりスカーレットの言う通り、偽物。
つまりは彼女の力を再現したミラナの影、なのだろう。
「喧嘩したのはいつだったかな……」
エルマーは思い出す、本気で喧嘩したことなどいつ以来だろう。
昔はよくしていた、特にエルマーの子供達が幼い時だが。
しかしその時はつまりエルマーもミラナも幼かった時の話だ。
つまり今の歳で、本気で喧嘩したことなどなかった。
──今の俺ってミラナに敵うのか?
少なくとも口論はいつも劣勢に追い込まれている。
エルマーはそんなことを考えながら拳を構える。
「行け」
エルマーが戦闘の意思を感じたスカーレットは影に命令を下す。
するとミラナの影は腰の刀をふとおもむろに抜く。
影と同じく、黒く染められた刀身の切先をミラナの影はエルマーに向ける。
そしてスカーレットの指示通り、影は大地を蹴った、
「!!」
一瞬の加速、エルマーでも目で捉え切るのがやっとなほどの、速度で影は迫っていく。
「うおおおおお!!」
若干、怖気付きながらもエルマーは腕をクロスさせる。
防御の体勢をとる、自分の体の頑丈さなら刀の一本でも受け止められるだろうと、思い立ったエルマーの策であったが。結果的にそれは愚策だった。
思わず両手をクロスさせたことにより若干遮られた視界にうまくミラナの影はその視界の死角に刀を隠す。
「まず……ッ!!」
後悔を、してももう遅い。死角から一撃をエルマーは受ける。
脇腹に刀が深く突き刺さった。
「エルマー!」
カミネの叫び声が響く。
「……ッ! 大丈夫だ! カミネ! 下がってろ皆んなを頼む!」
そのまま、偽のミラナを蹴り飛ばし、傷口を抑える。しまった、膂力や頑丈さならミラナに勝るとタカを括っていたが、戦闘のセンスはずば抜けてミラナが上だ。
そんな厄介なところまで再現しているのかと、舌打ちしつつエルマーは傷口を見る、幸い蹴り飛ばした際に刀ごとミラナの影は吹き飛ばされ、刀は抜けている。
そのおかげでもう傷口は若干塞がりかけていた。
神獣の血に感謝しつつ、エルマーはスカーレットを見つめる。
「ママ、ショックだぜ、まさか自分の息子に刺されるなんてな」
「……母さんを傷つけることになっても僕は母さんを守りたいだけだ」
「そうかい、だったら俺も覚悟を決める」
エルマーは息を吐き、そして吸う。蹴り飛ばされ大地に背をつけていたミラナの影が起き上がる。
そしてエルマーはただ口角を釣り上げた。
「スカーレット、俺が、ママがお前を止める」
「やってみなよ、母さん……!!」
その瞬間だった、エルマーの姿から光が漏れ出す、そしてエルマーの白髪が伸び、爪が鋭くなっていく。
「天喰狼・発動!!」
蒼白い光の毛皮を腕と肩にエルマーは身に纏い。スカーレットを射抜くように見つめる。
「……母さん、本気のようだね」
エルマーが神獣の血を解放したのを確認し、「ならば」とスカーレットはエルマーを睨み返す。
「魔眼の力を再現する」
黒いミラナの影の全身に目が現れる。
その瞳に全て現れている紋様を見てエルマーは思わず苦笑する。
百を超えるであろう、影の全身に現れたその瞳は全て──。
「おいおい……」
魔眼であった。
エルマーは思わず、拳を握りしめる。
──随分と厄介なことをしてくれたな、スカーレット。
チラリと辺りを見回す。エルマーの近くにいるのは寝ているアールとラクレ、そしてミラナだ。
起きているのは、エルマー自身とカミネだけだ。
やはり、目の前にいる漆黒のミラナはやはりスカーレットの言う通り、偽物。
つまりは彼女の力を再現したミラナの影、なのだろう。
「喧嘩したのはいつだったかな……」
エルマーは思い出す、本気で喧嘩したことなどいつ以来だろう。
昔はよくしていた、特にエルマーの子供達が幼い時だが。
しかしその時はつまりエルマーもミラナも幼かった時の話だ。
つまり今の歳で、本気で喧嘩したことなどなかった。
──今の俺ってミラナに敵うのか?
少なくとも口論はいつも劣勢に追い込まれている。
エルマーはそんなことを考えながら拳を構える。
「行け」
エルマーが戦闘の意思を感じたスカーレットは影に命令を下す。
するとミラナの影は腰の刀をふとおもむろに抜く。
影と同じく、黒く染められた刀身の切先をミラナの影はエルマーに向ける。
そしてスカーレットの指示通り、影は大地を蹴った、
「!!」
一瞬の加速、エルマーでも目で捉え切るのがやっとなほどの、速度で影は迫っていく。
「うおおおおお!!」
若干、怖気付きながらもエルマーは腕をクロスさせる。
防御の体勢をとる、自分の体の頑丈さなら刀の一本でも受け止められるだろうと、思い立ったエルマーの策であったが。結果的にそれは愚策だった。
思わず両手をクロスさせたことにより若干遮られた視界にうまくミラナの影はその視界の死角に刀を隠す。
「まず……ッ!!」
後悔を、してももう遅い。死角から一撃をエルマーは受ける。
脇腹に刀が深く突き刺さった。
「エルマー!」
カミネの叫び声が響く。
「……ッ! 大丈夫だ! カミネ! 下がってろ皆んなを頼む!」
そのまま、偽のミラナを蹴り飛ばし、傷口を抑える。しまった、膂力や頑丈さならミラナに勝るとタカを括っていたが、戦闘のセンスはずば抜けてミラナが上だ。
そんな厄介なところまで再現しているのかと、舌打ちしつつエルマーは傷口を見る、幸い蹴り飛ばした際に刀ごとミラナの影は吹き飛ばされ、刀は抜けている。
そのおかげでもう傷口は若干塞がりかけていた。
神獣の血に感謝しつつ、エルマーはスカーレットを見つめる。
「ママ、ショックだぜ、まさか自分の息子に刺されるなんてな」
「……母さんを傷つけることになっても僕は母さんを守りたいだけだ」
「そうかい、だったら俺も覚悟を決める」
エルマーは息を吐き、そして吸う。蹴り飛ばされ大地に背をつけていたミラナの影が起き上がる。
そしてエルマーはただ口角を釣り上げた。
「スカーレット、俺が、ママがお前を止める」
「やってみなよ、母さん……!!」
その瞬間だった、エルマーの姿から光が漏れ出す、そしてエルマーの白髪が伸び、爪が鋭くなっていく。
「天喰狼・発動!!」
蒼白い光の毛皮を腕と肩にエルマーは身に纏い。スカーレットを射抜くように見つめる。
「……母さん、本気のようだね」
エルマーが神獣の血を解放したのを確認し、「ならば」とスカーレットはエルマーを睨み返す。
「魔眼の力を再現する」
黒いミラナの影の全身に目が現れる。
その瞳に全て現れている紋様を見てエルマーは思わず苦笑する。
百を超えるであろう、影の全身に現れたその瞳は全て──。
「おいおい……」
魔眼であった。
1
あなたにおすすめの小説
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~
とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。
先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。
龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。
魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。
バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる