俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太

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第八十話 グッドモーニング③

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「おいおいおい……!」 

 エルマーは思わず、拳を握りしめる。

 ──随分と厄介なことをしてくれたな、スカーレット。

 チラリと辺りを見回す。エルマーの近くにいるのは寝ているアールとラクレ、そしてミラナだ。

 起きているのは、エルマー自身とカミネだけだ。
 やはり、目の前にいる漆黒のミラナはやはりスカーレットの言う通り、偽物。
 つまりは彼女の力を再現したミラナの影、なのだろう。

「喧嘩したのはいつだったかな……」

 エルマーは思い出す、本気で喧嘩したことなどいつ以来だろう。
 昔はよくしていた、特にエルマーの子供達が幼い時だが。

 しかしその時はつまりエルマーもミラナも幼かった時の話だ。
 つまり今の歳で、本気で喧嘩したことなどなかった。

 ──今の俺ってミラナに敵うのか?

 少なくとも口論はいつも劣勢に追い込まれている。
 エルマーはそんなことを考えながら拳を構える。

「行け」

 エルマーが戦闘の意思を感じたスカーレットは影に命令を下す。

 するとミラナの影は腰の刀をふとおもむろに抜く。
 影と同じく、黒く染められた刀身の切先をミラナの影はエルマーに向ける。

 そしてスカーレットの指示通り、影は大地を蹴った、

「!!」

 一瞬の加速、エルマーでも目で捉え切るのがやっとなほどの、速度で影は迫っていく。

「うおおおおお!!」

 若干、怖気付きながらもエルマーは腕をクロスさせる。

 防御の体勢をとる、自分の体の頑丈さなら刀の一本でも受け止められるだろうと、思い立ったエルマーの策であったが。結果的にそれは愚策だった。

 思わず両手をクロスさせたことにより若干遮られた視界にうまくミラナの影はその視界の死角に刀を隠す。

「まず……ッ!!」

 後悔を、してももう遅い。死角から一撃をエルマーは受ける。
 脇腹に刀が深く突き刺さった。

「エルマー!」

 カミネの叫び声が響く。

「……ッ! 大丈夫だ! カミネ! 下がってろ皆んなを頼む!」

 そのまま、偽のミラナを蹴り飛ばし、傷口を抑える。しまった、膂力や頑丈さならミラナに勝るとタカを括っていたが、戦闘のセンスはずば抜けてミラナが上だ。

 そんな厄介なところまで再現しているのかと、舌打ちしつつエルマーは傷口を見る、幸い蹴り飛ばした際に刀ごとミラナの影は吹き飛ばされ、刀は抜けている。

 そのおかげでもう傷口は若干塞がりかけていた。

 神獣の血に感謝しつつ、エルマーはスカーレットを見つめる。

「ママ、ショックだぜ、まさか自分の息子に刺されるなんてな」

「……母さんを傷つけることになっても僕は母さんを守りたいだけだ」

「そうかい、だったら俺も覚悟を決める」

 エルマーは息を吐き、そして吸う。蹴り飛ばされ大地に背をつけていたミラナの影が起き上がる。

 そしてエルマーはただ口角を釣り上げた。

「スカーレット、俺が、ママがお前を止める」

「やってみなよ、母さん……!!」

 その瞬間だった、エルマーの姿から光が漏れ出す、そしてエルマーの白髪が伸び、爪が鋭くなっていく。

天喰狼フェンリルブラッド発動インストール!!」

 蒼白い光の毛皮を腕と肩にエルマーは身に纏い。スカーレットを射抜くように見つめる。

「……母さん、本気のようだね」

 エルマーが神獣の血を解放したのを確認し、「ならば」とスカーレットはエルマーを睨み返す。

「魔眼の力を再現する」

 黒いミラナの影の全身に目が現れる。
 その瞳に全て現れている紋様を見てエルマーは思わず苦笑する。

 百を超えるであろう、影の全身に現れたその瞳は全て──。

「おいおい……」

 魔眼であった。
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