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第八十四話 グッドモーニング⑦
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「私が?」
カミネは思わず首を傾げてしまう。この白い大地、この王都の夢そのもの、それはとてつもなく広くそして、壮大だ。
故に、自分がこの夢を終わらせうる存在であると告げられてもカミネには実感が湧かない。
「そうだ、君がこの世界を終わらせる鍵になる」
しかし、スカーレットの表情を見ればそれは真実なのだと誰もが理解できた。
「……どうすれば良いの?」
カミネは覚悟を決めた、この夢に終止符を打つことを。
その意思をスカーレットも感じ取ったのか、エルマー達が見守る中、カミネの右手を優しく手に取った。
始まる。夢の終わりが。
そっとカミネの手がスカーレットに導かれ、スカーレット自身の胸に当てられる。
「夢を……覚ます」
その時だった、白い大地が揺れ動いたのは。
確かな振動とともに、大地が崩壊向かっていることをその場にいる全員が感じ取っていた。
「うおお!! スカーレット! 大丈夫なんだろうな!?」
「大丈夫だよ、母さん……夢が正常に終わっているだけさ……ただ問題はこれからだ」
スカーレットはカミネの手を離す。
「スカーレット……さん?」
カミネの問いにかけにスカーレットは何も答えなかった。
答えなどすでに出ているなどと言わんばかりに。
「拒絶反応が起きる、夢を見ていたいと思う人々の想いが……」
するとスカーレットは指を指した、カミネの後方に指された指をエルマー達は思わず見ると、そこには絶望が広がっていた。
多数の巨人、それが黒い塊の波となって迫ってきていた。
「……!?」
アールは思わず息を呑んでしまう。
アレだけの数の敵を果たしてどうすれば良いのか。
目に見えるだけで数百体はいるであろうその巨人の壁を前に、誰もが絶望していた。
「……どうするのであるか? スカーレット」
「アイツらを倒さなければいけない、アイツらは人々の思いの具現……夢のガーディアンだからだ」
ラクレの言葉にスカーレットはただ冷たく呟いた。
「……そして……どうするかはもう決まっている……」
スカーレットがそう呟くと、突如として、カミネ達の足元に正方形の穴が空いた。
「……な!」
「スカーレットなにを!?」
驚くエルマー達を穴は飲み込んでいく。
穴の先に広がるのは、夢の国アトスの光景だった。
「僕が、なんとかする。それがせめてもの償いだ」
そうしてエルマー達は穴の先のアトスへと飲み込まれていく。
無意識の世界と現実をつなぐ穴が閉じていく。
その光景を横目にスカーレットは黒い波を見つめた。
「……結局、半端者だったな僕も」
スカーレットは独りごちる。皆のためなどとお題目を掲げていたものの結局は、自分自身も現実に恐れていただけだった。
その証拠にたった一人の少女を受け入れることがスカーレットにはできなかった。
そのせいでこの夢の世界は崩壊を告げている。
自業自得。
そんな言葉が脳裏に浮かぶ、全く笑いが込み上げてくる。
結局こうして、自分の命で精算する羽目になるのだからしょうもないものだ。
ため息を着いたスカーレットは思い出す、現実世界で30年の時を過ごしたその月日に感じた、人の脆さを。
ただの疫病で、取るに足らない傷や災害で人々が死んでいくのを。
ラクレとリーンとともに人々と関わっていくうちに、スカーレットは思い知った。
人は容易く消えていく。
そしておそらく、それは自分の両親も例外でないのだと。
だから、現実など消し去りたかった。本当はそんなことは間違っていると気がついているくせにだ。
だからこそ、自分自身の命でケジメをつけるべきだ。
「母さん、ごめん僕は──」
そんな覚悟を決めた、その時だった。
白い大地にヒビが入った、よく見ればエルマー達を飲み込んだ穴が完全に閉じておらずそこを起点にヒビが広がっていく。
そして白い大地を割りながら、3つの影が現れた。
「な……!?」
スカーレットは驚きを隠せない、現れた影の正体、それは白い翼を携えた自分の姉リーンと──。
「おいおい! スカーレット、こんな時こそママ達を頼るべきだろうが!!」
エルマーとミラナだった。
「母さん、父さん? 本当に送り届けるだけでいいの?」
「大丈夫、リーン。後は母さんと私に任せてスカーレットを守ってて」
「無茶だ!!」
ミラナの言葉に思わずスカーレットは叫ぶ。
「いくら父さん達でも……」
スカーレットの言葉にしかし、エルマーは引き下がらない。
「スカーレット、任せな。久しぶりに母さんらしいところを見させてくれよ」
エルマーは巨人の波を睨みつけながら叫んだ。
「父さんと母さんが揃えば、出来ないことはねぇ!!」
そうして、エルマーは静かに呟く。
「ミラナ、頼むぞ」
「はいはい」
そんなやり取りとともに、エルマーの姿が変わっていく、顔に角の仮面が生成されていき白の髪がどんどんと伸びていく。
同時に、ミラナの瞳の形も変わっていく。楔形の十字模様が瞳に現れ、視界内にエルマーを捉える。
「エル、アナタの血は私が制御する。ぶちかましなさい」
そして、角の仮面を被ったエルマーは叫びとともに、拳を振り上げた。
同時に拳に赤黒い光がまとわりつく。
「グウウウウ……!!」
やがて人の言葉すら失ったエルマーは、本能のままに何かを守るという欲求のままに振り上げた拳を、巨人の波に向かって突き出した。
まるで凝結しつつある血液のような色の光の濁流が拳から放たれる。
夢を、人々の思いを否定しうるその一撃は間違いなく夢にすがる巨人たちの波そのものを払っていく。
同時に白い大地にヒビが入っていく、光はこの無意識の空間すら破壊していく。
やがてその破壊はエルマー達すら飲み込んで行った。
─────────────
瞼に光が当たる。それに気がついたスカーレットはいつのまにか目を閉じていたことに違和感を感じ、目を開ける。
寂れた都が広がっていた。破壊され尽くし、見窄らしいその姿は過去の栄光を感じさせる分、余計に侘しさを感じさせる。
それはスカーレット達の罪の象徴でもあった。
スカーレットは俯いた。
夢は覚めたのだ。
罪悪感、などという単純な言葉で言い表せないほどスカーレットの心中には様々な感情が渦巻いていた。
だが少なくとも、この光景を前にしてなぜか沸いてこない感情があった。
それは後悔であった。
「おーい!!」
遠くからエルマーの声が聞こえる。
スカーレットは不器用に笑いながら振り返った。
そこには両親と姉と友かつての敵がいた。
「おはよう、スカーレット」
エルマーの言葉にスカーレットはただ「おはよう」と震える声で返した。
カミネは思わず首を傾げてしまう。この白い大地、この王都の夢そのもの、それはとてつもなく広くそして、壮大だ。
故に、自分がこの夢を終わらせうる存在であると告げられてもカミネには実感が湧かない。
「そうだ、君がこの世界を終わらせる鍵になる」
しかし、スカーレットの表情を見ればそれは真実なのだと誰もが理解できた。
「……どうすれば良いの?」
カミネは覚悟を決めた、この夢に終止符を打つことを。
その意思をスカーレットも感じ取ったのか、エルマー達が見守る中、カミネの右手を優しく手に取った。
始まる。夢の終わりが。
そっとカミネの手がスカーレットに導かれ、スカーレット自身の胸に当てられる。
「夢を……覚ます」
その時だった、白い大地が揺れ動いたのは。
確かな振動とともに、大地が崩壊向かっていることをその場にいる全員が感じ取っていた。
「うおお!! スカーレット! 大丈夫なんだろうな!?」
「大丈夫だよ、母さん……夢が正常に終わっているだけさ……ただ問題はこれからだ」
スカーレットはカミネの手を離す。
「スカーレット……さん?」
カミネの問いにかけにスカーレットは何も答えなかった。
答えなどすでに出ているなどと言わんばかりに。
「拒絶反応が起きる、夢を見ていたいと思う人々の想いが……」
するとスカーレットは指を指した、カミネの後方に指された指をエルマー達は思わず見ると、そこには絶望が広がっていた。
多数の巨人、それが黒い塊の波となって迫ってきていた。
「……!?」
アールは思わず息を呑んでしまう。
アレだけの数の敵を果たしてどうすれば良いのか。
目に見えるだけで数百体はいるであろうその巨人の壁を前に、誰もが絶望していた。
「……どうするのであるか? スカーレット」
「アイツらを倒さなければいけない、アイツらは人々の思いの具現……夢のガーディアンだからだ」
ラクレの言葉にスカーレットはただ冷たく呟いた。
「……そして……どうするかはもう決まっている……」
スカーレットがそう呟くと、突如として、カミネ達の足元に正方形の穴が空いた。
「……な!」
「スカーレットなにを!?」
驚くエルマー達を穴は飲み込んでいく。
穴の先に広がるのは、夢の国アトスの光景だった。
「僕が、なんとかする。それがせめてもの償いだ」
そうしてエルマー達は穴の先のアトスへと飲み込まれていく。
無意識の世界と現実をつなぐ穴が閉じていく。
その光景を横目にスカーレットは黒い波を見つめた。
「……結局、半端者だったな僕も」
スカーレットは独りごちる。皆のためなどとお題目を掲げていたものの結局は、自分自身も現実に恐れていただけだった。
その証拠にたった一人の少女を受け入れることがスカーレットにはできなかった。
そのせいでこの夢の世界は崩壊を告げている。
自業自得。
そんな言葉が脳裏に浮かぶ、全く笑いが込み上げてくる。
結局こうして、自分の命で精算する羽目になるのだからしょうもないものだ。
ため息を着いたスカーレットは思い出す、現実世界で30年の時を過ごしたその月日に感じた、人の脆さを。
ただの疫病で、取るに足らない傷や災害で人々が死んでいくのを。
ラクレとリーンとともに人々と関わっていくうちに、スカーレットは思い知った。
人は容易く消えていく。
そしておそらく、それは自分の両親も例外でないのだと。
だから、現実など消し去りたかった。本当はそんなことは間違っていると気がついているくせにだ。
だからこそ、自分自身の命でケジメをつけるべきだ。
「母さん、ごめん僕は──」
そんな覚悟を決めた、その時だった。
白い大地にヒビが入った、よく見ればエルマー達を飲み込んだ穴が完全に閉じておらずそこを起点にヒビが広がっていく。
そして白い大地を割りながら、3つの影が現れた。
「な……!?」
スカーレットは驚きを隠せない、現れた影の正体、それは白い翼を携えた自分の姉リーンと──。
「おいおい! スカーレット、こんな時こそママ達を頼るべきだろうが!!」
エルマーとミラナだった。
「母さん、父さん? 本当に送り届けるだけでいいの?」
「大丈夫、リーン。後は母さんと私に任せてスカーレットを守ってて」
「無茶だ!!」
ミラナの言葉に思わずスカーレットは叫ぶ。
「いくら父さん達でも……」
スカーレットの言葉にしかし、エルマーは引き下がらない。
「スカーレット、任せな。久しぶりに母さんらしいところを見させてくれよ」
エルマーは巨人の波を睨みつけながら叫んだ。
「父さんと母さんが揃えば、出来ないことはねぇ!!」
そうして、エルマーは静かに呟く。
「ミラナ、頼むぞ」
「はいはい」
そんなやり取りとともに、エルマーの姿が変わっていく、顔に角の仮面が生成されていき白の髪がどんどんと伸びていく。
同時に、ミラナの瞳の形も変わっていく。楔形の十字模様が瞳に現れ、視界内にエルマーを捉える。
「エル、アナタの血は私が制御する。ぶちかましなさい」
そして、角の仮面を被ったエルマーは叫びとともに、拳を振り上げた。
同時に拳に赤黒い光がまとわりつく。
「グウウウウ……!!」
やがて人の言葉すら失ったエルマーは、本能のままに何かを守るという欲求のままに振り上げた拳を、巨人の波に向かって突き出した。
まるで凝結しつつある血液のような色の光の濁流が拳から放たれる。
夢を、人々の思いを否定しうるその一撃は間違いなく夢にすがる巨人たちの波そのものを払っていく。
同時に白い大地にヒビが入っていく、光はこの無意識の空間すら破壊していく。
やがてその破壊はエルマー達すら飲み込んで行った。
─────────────
瞼に光が当たる。それに気がついたスカーレットはいつのまにか目を閉じていたことに違和感を感じ、目を開ける。
寂れた都が広がっていた。破壊され尽くし、見窄らしいその姿は過去の栄光を感じさせる分、余計に侘しさを感じさせる。
それはスカーレット達の罪の象徴でもあった。
スカーレットは俯いた。
夢は覚めたのだ。
罪悪感、などという単純な言葉で言い表せないほどスカーレットの心中には様々な感情が渦巻いていた。
だが少なくとも、この光景を前にしてなぜか沸いてこない感情があった。
それは後悔であった。
「おーい!!」
遠くからエルマーの声が聞こえる。
スカーレットは不器用に笑いながら振り返った。
そこには両親と姉と友かつての敵がいた。
「おはよう、スカーレット」
エルマーの言葉にスカーレットはただ「おはよう」と震える声で返した。
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