俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太

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第九十二話 二人のママ

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「ケイトネールのお母さん!?」

 間違いない、この白いドラゴン、ダナノニウナは確かにそう言った。
 だとすればそれはつまり……。

「う、産みの親……?」

 俺が驚愕していると突然、胸に衝撃が走った。
 比喩的な表現でなく、まさしく衝撃が肋骨や内臓に響いたのだ。

「お母さぁぁん!!」

 俺の胸に飛び込み顔をペロペロと舐めるのは、ケイトネールその子だった。

「こ、こらアルバ! 下賎な人の子の頬など舐めてはいけません!」

「ええ~いいじゃんお母さんなんだし」

「お、お母さんは妾です! 何度いえば良いのですか!」

「でも……私のお母さんはこのお母さんだけだし……」

「じゃ、じゃあ妾は……」

「うーん……? 優しいオバさん?」

「オバ……ッ!! クッ……ガッ……ゥぉン! ドンキホーテ!!」

 ダナノニウナの懇願の声にめんどくさそうにドンキホーテはため息をつく。

「……なんすか」

「オバ……ッ! オバさんて言われた……!」

「いい加減、慣れてくれよダナノさん、しょうがないだろ。育ての親に愛着が湧いちゃうのはさ」

「でも……!! 産みの親で…………!! 六年前に……お腹痛めて、7人も……7つ子の母なんだぞ!? ドンキホーテ! 私がどんなに……! 夫は帝の座について忙しいから妾は一人で……なのに、オバッ……ウッ、ウッ……ウッ……盗人に奪われたからやっとの思いで……ウッ……」

「……わかった、辛かったな奥さん、後で話を聞くから……」

「で……」とドンキホーテと呼ばれた男はミラナと俺をそれぞれ一瞥し、啜り泣くドラゴンを一旦、横に置いて問いかける。

「君たち、何モン?」

 ─────────────

「なるほどね、だいたいわかった……」

「妾は!! 納得などしていない!! 怪しいであろうが!」

「ダナノさんわかってるよ! 俺も急にSFみてぇな話されたから混乱してる!」

 そんなドンキホーテとダナノニウナの声が洞窟に響き渡る。
 俺たちはあれからどうにもならない気まずさと共に、一旦洞窟の中へと場所を移して、事の経緯を一切合切、説明した。

 王都アトスのことも、転移事件の事も全てだ。
 その結果がこの口論だ。

 干し草や、さらにはなぜか毛布などもある。案外住みやすそうなその洞窟内部に招かれた俺たちはケイトネールを両の腕で抱きながら、ただ目の前で繰り広げられる、修羅場を黙って見ていた。

 ダナノニウナはおそらく本当のことを言っているのだろう。
 初見で見た時に成長したケイトネールだと見間違うほどにこの母ドラゴンとケイトネールは特徴が一致している。

 そしてダナノニウナも俺達がケイトネールにとって重要な存在だいうことに気がついているはずだ、ケイトネールのなつき具合から見て、俺たちに危害を加えればケイトネール自身が悲しむという事を彼女は気がついている。

 現に今も俺の両腕から心地良さそうにミラナに撫でられているケイトを見れば俺たちを傷つけるなどという気も起きないだろう。

「アルバ! 人間の汚い手を……」

「いいじゃん! ダナノオバさん!」

「お、おば……! また言った! 夫にも言われた事ないのに! せめて母上と呼びなさい! アルバ!」

 しかし、ケイトネールは突っぱねるようにミラナの手に自分の頭を委ねている。
 おいミラナもなですぎだ! ずるいぞ俺にも……じゃない! 挑発するみたいに撫でるな! マジでどつきあいになるぞ!

「はあ……まぁ、その様子じゃ信じざるを得ないか」

 するとドンキホーテは再びため息をつき、そして洞窟の壁に背をつけた。
 そういえば、俺の頭にもう一つ疑問が湧いた。

「そういえば、ドンキホーテさん、あんたこそ何者なんだ?」

「俺?」

 俺の問いかけにドンキホーテさんは首を傾げる。
 すると笑いながら青い上着の懐から一枚の紙を取り出した。

 その紙、いや名刺に書かれた文字を見て思わず俺は目玉が落ちるかと思った。

『秘密結社、黒い羊。特殊問題介入担当、騎士ドンキホーテ』


「ラクレさんと同じ……組織の人?!」

「お、王様知ってるのか君」

 ドンキホーテさんはそう言って笑った。
 いや笑い事ではないが。

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