俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太

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第九十五話 雷光の英雄

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「よし……」

 俺はついに覚悟を決める。
 洞窟の外に一歩踏み出した。
 外は快晴、だがドンキホーテさんの言葉を聞いてからどこか、この空でさえ何者かが潜んでいるかのような、そんな気がしてしまう。

「こっちは準備OKだ! ドンキホーテさん! ダナノニウナ!」

「わかった」

「妾にもさんをつけんか人間!」

 そう言いながら出てきたのは、青い魔女帽子と青い服とマントを被ったドンキホーテさんと、見知らぬ真っ白な髪と、白い黒のブラウスとスカートを着た婦人が出てきた。

 美人なその女性は、俺でもなんとなく正体を察せられた。

「ダナノニウナ……さんか?」

「なんで敬称つけるのに、ちょっと不服そうなの?!」

「いや、ちょっと炙られかけたから少しな……」

 そういうと、白髪のご婦人は「フン!」と顔を背けてしまう。
 そんな拗ねたダナノの背後からさらに、ミラナがケイトネールを抱えて出てくる。

「ケイト寝ちゃった、このまま行く? ドンキホーテさん」

 ミラナの質問にドンキホーテさんは頷いた。

「もちろんこのまま行く、というか多分これ以上待っても、相手の思うようにされるだけだ、このまま下山する」

 ドンキホーテさんの言うことは俺も尤もだと思う。
 このままではただ詰みの状況に持っていかれるだけだ。
 なんとかこの状況を打破しなければならない。

 そして俺たちは歩き出した。この山から降りて目指すは修道院だ。

 ─────────────

 急な違和感を俺は覚えた。
 洞窟から離れて、しばらく経った今、唐突に感じたその違和感。
 誰かに見られているような、いや見られているというか監視されていると言った方が正しい気がする。

 枯れ草を分けながらほぼ獣道と言った、道を歩いていく俺たちに対して何者かが訝しげにただじっと見つめているような気がするのだ。

 獲物を見ているというよりは、猜疑心の籠った目でただじっと、こちらの様子を伺っていると言った感じだった。

「ドンキホーテさん」

「エルマー君。わかってる君も監視され始めたんだろ? 多分最初はただの冒険者だと思われてたんだろうな、それが急に俺たちと一緒になって行動し始めたから、奴も訝しんでいる」

 やはりそういうことか、多分俺たちは最初この山に入った時、なんの警戒もされていなかったのだろう。よくいる冒険者の一人、リルクスにとってはそんな印象だった筈だ。

 それなのに、急にリルクスの目にはドンキホーテさんとおそらくダナノニウナであろう人間が歩き。
 さらにはミラナが大事そうにケイトネールを、抱えているのだから混乱も必死だろう。
 だがだからと言って、奴が大人しくしているとは限らない。

「仕掛けるとしたら、そろそろかもね」

 ミラナの言葉に俺もドンキホーテさんも同意する。
 攻撃するならば今しかない、というより、リルクスもいつまでも手をこまねいて見ているわけにもいかないだろう。

 ケイトネールを奪える絶好のチャンスなのだ。
 それをみすみす逃すほど、奴も馬鹿じゃないだろう。

「……エル。噂をすれば……ね」

 すると唐突なミラナの言葉に俺達は足を止めた。
 ミラナが目線を送る先、枯れ木や、山の麓が広がる景色がゆらめいていた。

 カゲロウのように揺らめくその景色はやがて揺らめきを強め、カーテンを開けるように景色を掴みどかして、一人の男が出てきた。

 青髪の、白いマントを纏った。全身白づくめの男が立っていた。

「よう、久しぶりだな、ドンキホーテちゃん」

「こいつがリルクス!」

 俺は言霊の剣を解放させる。
 続いてミラナも、ケイトネールを抱えながら刀を引き抜いた。

 しかし、ドンキホーテさんとダナノニウナだけがなぜか、驚きの表情のまま一瞬かたまる。

 その後、ドンキホーテさんはすぐさま腰に挿してあったロングソードを引き抜いた。

「エルマー君、こいつはリルクスじゃない」

 ドンキホーテさんの言葉に思わず俺は耳を疑う。

「え?」

「こいつは、雷光のジャイル・クリントン」

 ドンキホーテさんは目の前の男を睨みつけながら言った。

「一年前の世界大戦で戦艦を五隻落とした、生粋の英雄だ」

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