俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太

文字の大きさ
102 / 115

第百二話 家族とは

しおりを挟む
「その、ダナノさん」

「なんだ? 改まって」

 目的の修道院へと歩き出して、しばらく経った頃だった。
 不意に俺はダナノさんに話しかけた、どうしても言わなければならないことがあったからだ。

「ありがとうな、その……庇ってくれてさ」

「そんなことか……別に妾は感謝されるようなことはしていない」

「でも、アンタにとって俺は……その一言じゃ表せないような関係だろう?」

 するとダナノさんは、ただ一言納得したように「そうだな」と呟く。

「確かにお前は……そうだな……妾も関係を一言では表せん、だが──」

 ダナノさんは目の前で歩くミラナと戯れるケイトネールの姿を見てどこか困ったように笑う。

「──アルバの……あの子の笑う姿を見て……はぁ……認めたくないが認めざるを得ないのだ。お前達が良い保護者であり親であると言うことがな……」

「ダナノさん……」

「だから、アルバのためにも貴様が死ぬのを私は許さん。全く……卵の頃から名付けをしていた可愛い我が子を自分自身で育てられなかったのは心苦しいが……だがそもそも感謝すべきことがあるのは私も同じだ」

 ダナノさんが感謝……俺は頭を回転させるが何も思い至ることがない。何か感謝されることがあったか?

 悩み続ける俺が可笑しかったのか、ダナノさんはまた笑った。

「アルバを大切にしてくれてありがとうな」

 その言葉を聞いた時、俺は面を食らってしまった。なんだそんなことか。

「感謝されるようなことじゃねえよ……結局、俺が不甲斐ないせいであの子が色んなことに巻き込まれたのは事実だしさ……」

「それでも、あの子が求めたのはお前だった。一年も離れ離れになったと言うに、あの子は常にお前のことを信じ続けていた、それはお前の徳の成せる技だろう? 違うか?」

「恥ずかしいからやめてくれ、その俺はあの子たちが必要としてくれたし、可愛いし……つまりその……俺がそうしたかったから、そうしただけなんだ。だから特別なことはしてない」

 それを聞くとダナノさんは頬を綻ばせる。

「ハッ……やはりお前が親で良かったよ」

「……そう、か」

 俺は歩きながら空を見上げる。雲はない、もう直ぐ夜が訪れる空は若干、青が深くなっており、茜色の光が右から差し込んでいる。

「俺さ」

「なんだ?」


「親なんて物心ついた時からいなくてさ、ずっと家族が欲しかった。だから初めてあの子達に会った時さ不安だったんだよ、結局さ、俺は誰かの母さんみたいにあの子達を腹を痛めて産んだわけでもねえし、あの子を規範となるべき背中なんか見せれるような人間じゃねえしさ」

「貴様……」

「今でも不安だ、結局……俺は今を生きるのに精一杯だ。あの子達を、ケイトネールを完全に守りきれなかった」

 ダナノさんは何も言わなかった。

「俺は……だからそのアンタがそう言ってくれて、ちょっと自信がついたよ、ありがとなダナノさん」

「何を言っている馬鹿者!!」

「バカッ……!?」

 すると唐突にダナノさんは怒り始めた。

「何を言い出すかと思えば、何をクヨクヨと!! 貴様!! 言っておくが親とは最初から親になるのではない!」

「お、おう」

「と言うか親、と言うのは結果ではないのだ!! わかるかエルマー!」

 足を止めダナノさんに詰めら、気圧される俺は思わず半歩下がってしまう。

「お前の悩むその姿勢、その行動が何よりも親そのものだとわからんのか!!」

「だ、ダナノさん?」

「親とは! 結果ではない!! 産んだから親だとか! 血縁があるから親だとか! 長くいたから親だとか! 結果的な存在じゃない!! お前の行為! お前がアルバに費やした時間と行動! その過程そのものが親である証であろうが!!」

「……そう、だな……!」

 その言葉を聞いた時、俺は思い出した。そうだ血縁なんて関係ないって自分でも思っていたことじゃないか。

 でも思ったのだ、今本当のケイトネールの親が目の前に現れた。

 ケイトネールにとってももしかしたらドラゴンの世界に戻してやった方がいいのではないか。俺があの子にとって窮屈な世界に閉じ込める枷になっているのではないかと。

 俺は結局、偽物だ。
 偽物のママなんだ、でも、

「でも、そっか……ケイトは──」

「母さん!! どうしたの? 早くいこうよ!」

 ミラナに抱かれながら小さな白い竜が俺を見つめる。

「いくぞ、エルマー」

「そうだな……」

 結局、あの子が俺を必要としてくれるなら望むなら、俺は……いつだって俺は、あの子の望むママになりゃあいいのかもな。
 まだママでいてもいいのかもな。
 ─────────────

 二日後。朝日が昇る中俺たちは丘の上から平原を見下ろしていた。
 平原の中にポツンとあるのは寂れた、石造りの背の高い建物。

 民家と言うには大きすぎ、教会というには、ひとまわり小さい。間違いない俺たちの目的地だ。

「ついたぞアレが例の修道院だ」

 ドンキホーテさんは丘の上で地図を見て確認しながらそう言った。
 結局、あれからリルクスは襲撃してこなかった。

 何事もなく俺たちは目的地の目の前に、たどり着いたと言うわけだ。

 それがいいことなのかはわからない、何せ俺たちはリルクスが何をしようとしてるのかすら把握していないのだから。

「敵の気配はなし」

 ミラナがそう呟く。

「確かか? ミラナ」

「……こればかりはわからない、気配を巧みに隠しているのかもしれない」

 俺の質問にミラナはそう答える。
 そもそも俺たちの場所もあいつはわかっているはずだ。

 少なくともなんの策も無しに退いて俺たちを見失うような奴だとは思えない。

 ミラナの言う通り修道院が目の前だと言うのに少しも安心はできない。

「まいったな、周りは平原。見晴らしはいいが、もし仕掛けられたら遮蔽物も何もない」

 ドンキホーテさんはそういう。
 皆が一斉に沈黙する。結局のところ良い方法なぞ、都合よく思いつく他はない。

 今はダナノさんを竜の世界に送り返すことが先決、ならば俺たちのやることは一つしかないのだ。

「ドンキホーテさん、どうする?」

 聞かなくてもわかることを俺は一応聞く。するとドンキホーテさんは自嘲気味に笑いながら言った。

「まぁ……強行突破だな」

 ですよね。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。 先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。 龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。 魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。 バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...