篠辺のお狐様

梁瀬

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朝霧の式神

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「お狐様、私の式神は木通あけびと申します。宜しくお願い致します。」
【朝霧も実のなる植物から選んだのか?】
「いいえ。それぞれの特性があった方が良いと思いまして、私はつる性植物から選びました。」

 朝霧の隣に居る男の式神は、着流し姿で、帯の背に笛を刺しておる。
歳の頃は柚子と同じくらいかのぉ。二十代半ばから三十代じゃ。
 顔立ちは、面長で垂れ目をしておる。穏やかで優しそうな雰囲気じゃが、何処となく違和感があるのぉ。
「お初にお目にかかります。木通と申します。以後お見知りおきくださいませ。」
物腰も柔らかく、柚子のような優男にも見えなくないが、何かが違うのぉ…。
 東雲の二人の方が、無難な式神かと思うたが、一癖ありそうじゃな。

 狐に挨拶を済ませると、朝霧に声を掛けて、銀木犀の所へ行ったようじゃ。
「お狐様、どうかなさいましたか?」
【いや、気のせいかのぉ。見た目は珍しくもない式神じゃが、篠辺の式神共とは毛色が違う気がしてのぉ。】
「えっ!け…色が違うように見えますか?」

 朝霧が時々見せる、こういう所が謎なんじゃ。
大した事を聞いたつもりはないのに、どういう訳か勝手に動揺して、同じような事を聞き返してくるんじゃ。
以前、夕霧が言っておった〝まっすぐに腐ってる〟ってやつ故かのぉ。
【東雲に居るうちに、意思の疎通が出来て、怪異との対治で使えるように馴らしておくと良いじゃろう。】
「はい。意思の疎通は、ある意味完璧です。木通は対治の時、笛を用いて結界を張ったり、相手の動きを封じる事が出来るようになりました。」
 嬉しそうに式神の話をする朝霧の初々しいようすに、夕霧達もそうであったと思い出した。

「銀ちゃん。お狐様にご挨拶してきたんだけど、めちゃ緊張。銀ちゃんも居なくなっちゃうし、どうしようかと思った。」
そう言いながら、木通は銀木犀の腕に纏わりついた。
「はいはい。離れてくださいね!そういうの無理なんで。」
 腕から引き剝がして、距離を取ろうとすると
「え~っ銀ちゃん、冷た~い!そんな言い方しないでぇ、仲良しでしょ。」
銀木犀の上着の裾を摘まんで左右に振りながら近づき、背後から腰に腕を回し、甘えたようにフワッと抱き着いた。
「こういう事して仲良しとか、誤解されるんで止めて貰って良いですか?」

「杏から聞いてたけど、キャラ濃いね…。朝ちゃんらしい。何処までもブレない感じ嫌いじゃないけど、木通との間合いが分かんない。」
「大丈夫です。間違っても夕さんに纏わり付いたりしませんから!左京さん、木通といいます。初めまして…」
こういう遭遇が、初めてだった左京は固まって動けずにいる所を
「近いっ!初対面から間合いに入って来ないで。左京さんは純粋ななんで、そのキャラで、急にゼロ距離は無理ですから。失礼でしょ!」
 夕霧の頼もしい背に隠れるように、小鹿になっている左京は、まさに人ならざる者の恐怖を知った。
「そんなに怯えなくても…美味しく頂けるまで待てますよ。っていうか、夕さん酷くないですか!あのも、大概失礼ですけどね。」
「ちっこいのじゃない!あ・ん・ず。覚えろバカチン!」
慣れたもので直ぐに、適正な距離で影踏みをしてくれた杏。

 朝霧の式神には、夕霧の式神が慣れるまでのサポートをして、右京さんの所も同様に、左京さんの式神がサポートしていた。
 夕霧は、誰とでも仲良くなれる杏に、木通の相手をさせた。
…が、初めて〝仲良くなれる気がしない〟と言った。
 兄弟、姉妹の式神同士の顔合わせはしていたが、左京さんは初対面から、メンタルを削られたようだ。
実際、柚子は視界に掌サイズで入る距離ですら、警戒する始末、そこまで極端ではないが、鬼縛りですら距離を置いている。
 性別さえ男なら、ある意味。好みがあるのかさえ分からない。
朝ちゃんの趣味に入れ込んでる姿を見て感じた印象と同様に、木通もかも。

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