S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず

文字の大きさ
21 / 132
1章

無法すぎるにも限度がある

しおりを挟む
「うそ……首を斬っても体を真っ二つにしても倒せないなんて……」

アレスによって首を落とされ体を縦に切断された鬼蜘蛛の化け物は何事もなかったかのように完璧に再生してしまった。
一方のアレスは体の不調により意識が朦朧とし始めていた。

(だめだ、このままここで戦っても全滅する!)
「お前ら!早くここから……うっ!?」
「アレスさん!?」
「グギャァアア!!」

首を斬っても死なない化け物を目の当たりにしてすぐに撤退の判断を下そうとしたアレス。
しかしその直後めまいを起こしたようにふらふらと倒れそうになってしまう。
その隙を付き化け物はアレスを捕食しようと口を大きく開け飛びかかってきた。

「アレスさん!ぐあ!?」
「ジョージ!!すまん、油断した!」
「くそ!!てめぇの相手は俺がしてやるよぉ!!」

一瞬動きの止まってしまったアレスを間一髪でジョージが助ける。
ユーゴはそんなアレスの隙をカバーするため単身化け物に戦いを挑んだ。

「くそがっ!!ミンチになれやぁ!!」
「グギャアアア!!」
(くそ!俺の力じゃこいつの固い体を打ち破れねえ……)

「アレス君ジョージ君!!大丈夫?今すぐ回復を!」
「すまんソシア……」

洞窟内の明かりはユーゴが浮かせ続けている火の玉で賄うことが出来ている。
ソシアはアレスとジョージに駆け寄ると、光源魔法の継続をやめすぐさま2人の回復を行おうとした。
しかし……

「グギャァアア!!」
「ぐはっ!?」
「ユーゴ!!」
(まずい!明かりが!!)

ソシアが光源魔法を解除したそのすぐ直後、化け物の拳をもろに食らったユーゴが火の玉を維持することができなくなり洞窟内は暗闇に包まれたのだ。

「ユーゴ!?大丈夫ですかユーゴ!?」
「声を出すなネオン!!喋ると位置が化け物に知られるぞ!」
「グロロ……グギャアアア!!」
「ひっ!?」
(まずい!!ネオンが襲われる……でも、体が動かん……)
「も、もう一度光源魔法を……」

明かりが消えたことを認識したソシアは再び光源魔法の発動を試みる。
焦る気持ちを抑え素早く詠唱をするソシア。
なんとか光源魔法の発動自体は成功させることには成功したのだがその明かりによって見えたものは、化け物に今にも食べられそうになっていたネオンの姿だったのだ。

「グギャアアア!!」
「っ!た、助け……」
「ネオン様!!」
「そんな!?」
(ダメだ、間に合わねぇ……)

「ぐわぁああああ!!」
「っ!!ユーゴ!?」

しかし化け物がネオンに噛みつく寸前、さっき殴り飛ばされたはずのユーゴが頭部から血を流しながらもネオンと化け物の間に割って入ったのだ。
こん棒を拾う余裕のなかったユーゴはネオンを庇い化け物に右肩を大きく噛みつかれてしまう。
オーガの強靭な肉体で何とか肩を食い千切られる最悪の事態を避けられたユーゴは力を振り絞り化け物に左拳を叩き込んだ。

「グギャアア……ガッ!?」
「すまんユーゴ!大丈夫か!?」
「ごほっ……はぁ……はぁ……なん、とか……な」
「ユーゴ!ユーゴ!?」

なんとか肩を食い千切られることはなかったが、それでもかなりの深手でユーゴはその場に崩れ落ちてしまった。
アレスは何とか化け物の注意を引き付けようと戦うが、どこを斬っても致命傷とならない相手ではただの時間稼ぎにしかならない。

「ネオン様……あなたが、無事で……ごほっ!よかったです……」
「ユーゴ!どうして……どうしてあなたは、私のためにここまで……いえ、そうでしたね。私がオーガキングのスキルを持っているから。あなたは私を守ろうとするんですよね」
「……。実は……ネオン様に黙っていたことが、あります」
「私に、黙っていたこと?」
「オーガキングのスキルは譲渡するしか他者に渡せないと説明しましたが。もう一つ、オーガキングのスキルを持つ者の心臓をオーガが喰らえば、そのスキルを奪うことが出来るのです」
「えっ……」
(なに!?じゃあこいつがネオンを食おうとする理由はそういうことか!?)
「だから、里の大半のものはネオン様を里に連れ帰らずに殺して心臓を奪えばよいといったのです。でも……俺はそれに反対しました」

深手を負い喋るのも苦しそうな様子のユーゴだったが、それまでネオンに隠してきた真実を必死に打ち明け始めたのだ。
オーガの里は排他的で、もともとはスキルを譲渡したネオンを里に住まわせると考えるものは誰一人いなかった。
それどころかオーガキングのスキルも長距離で不安定な転移魔方陣で2人を里へ移動させるなんてことはせず心臓を奪い1人で帰還する方法をとる予定だったのだ。

「どうして?確かにスキルを譲渡した後の私のことなんてあなた方が考える必要なんてないはずです。では、なぜあなたはその考えに反対されたんですか?」
「ネオン様の境遇を聞き……辛い思いをされてきたのだと知り、何とかして、助けたいと思ったんです。テレパシーで聞いたあなたの声は優しそうだったのに酷く寂しそうで……」
「ユーゴ……」
「俺は、ネオン様に惚れてしまったんです。スキルのためじゃなく……あなたに幸せになって欲しかったんです」
「っ!!」

ユーゴはずっと隠してきた本当の気持ちをネオンに打ち明けたのだ。
始めはユーゴは人間のことが大嫌いだった。
オーガと人間は昔から人間と対立関係にあり、人間であるネオンのこともスキルを奪えれば後はどうなっても構わないと考えていた。
しかし……

『はい。この家は普段は警備が厳しすぎるので、お父様に外から人が大勢やってくるような催しを開くように誘導します』
『ご協力感謝する。それでは屋敷の情報も含め詳しい情報提供も頼めるか』
『はい。もちろんでございます』
(世間知らずのお嬢様だな。スキルだけ奪われて命を取られるとはまるで思っていない……)
『必要な情報はなんでもお渡しします。その代わりと言っては何ですが……お暇な時でよろしいので、私とお喋りをしてくれませんか?』
『お喋り、ですか?』
『はい。私は6年以上も外に出られなくて友人なども一人もおりません。ですので、こうして家の者以外の方とお喋りすることが私にとっては憧れなんですよ』
『はあ……それくらいなら、構いませんが』
『まあ!ありがとうございます!ふふっ、ずっと退屈していましたのでなんだか楽しくなってきてしまいましたわ』
『……』

ユーゴはネオンと話していくうちに彼女に感情移入して行ってしまったのだ。
ネオンは悪い人間ではなく、むしろとても優しく心の澄んだ人間だと知った。
そしていつしか彼女と話すことがユーゴにとっての楽しみとなっていた。
もっと話をしたいと……もっと彼女の笑う声が聞きたいと。
いつしか彼女と直接会って……そして、彼女の顔を見て共に笑いたいと願うようになっていた。

「ユーゴ!ユーゴ!!」

ユーゴからそんな思いを打ち明けられたネオンは涙を流して彼の名前を叫んでいた。
スキルのせいで長い間屋敷に閉じ込められ、大好きだったはずの父親も自分ではなく自分が持つスキルに対してしか関心を示さなくなっていた。
だからスキルではなく本当の自分を想ってくれるユーゴの気持ちが嬉しくて……そんな彼を守りたいと考えた。

(私は、守られるだけなのはもう嫌だ!!オーガキングのスキルを持つ者はオーガを……ユーゴを導かなきゃいけないはずだから。このスキルで私はユーゴを守りたい!!)
「くそが!全身くまなく切り刻んでも再生しやがる!」
「アレス君!!……っ!?」
「この光は、ネオンさん!?」

ユーゴを守りたいと強く願ったネオンは突如眩い光を放った。
光の中でネオンはまるで10年の時が経過したかのように体が大きくなっていった。
子供らしかった彼女の見た目は大人のようになり……額と前髪の境目からはオーガを象徴する立派な角が生えてきていたのだ。

「私も、ユーゴを守るために戦うから!」
「ネオン様!まるでオーガのお姫様みたい……」
「へへっ、当たり前だよなぁ。俺はお前らが未練なく死ぬための遺言タイムを稼いでたわけじゃないんだからな」
「す、まん……アレス、恩に……きる」
「グギャァアア!!!」

ネオンの覚醒に化け物は耳を劈くような咆哮をみせた。
そんな様子を見ていたジョージがあることを思い出し声を張り上げたのだ。

「アレスさん!!ネオン様!!思い出しました!!昔どこかで鬼の王が不死身の化け物を打ち倒すというおとぎ話を聞いたことがあります!!」
「鬼の王が不死身の化け物を!?」
「それってまさか……」
「鬼の王が化け物の胸を貫いて、それで戦いは終わったんです!」
「なるほど。賭けてみる価値はありそうだ」
「グギャァアア!!」

ここで化け物は再び狙いをネオンに定め突進を開始する。

「私が、胸を貫いて……はぁあああ!!」
バチィン!!
「弾かれた!?」
「避けろネオン!!」
「くっ……きゃああ!!」

ネオンはジョージの言う通りに化け物の胸をめがけてエネルギー弾を放った。
しかしその攻撃は化け物の蜘蛛の脚に弾かれてしまう。
そのまま突進してきた化け物の攻撃をネオンはギリギリで回避したのだった。

「胸に、当てないと……でも……」
「グギャアアア!!」
(スキルを覚醒させても戦闘経験がなさすぎる。奴の脚を避けて胸に攻撃を当てることも……そもそも攻撃力が低すぎて奴の強靭な筋肉を貫けない!)
「ごほっ、ごほっ……」
「アレス君!?大丈夫!?」
「大丈夫……とはいえないな。次の攻撃で決めないとまずい!」

アレスは必死に思考を巡らせる。
化け物を倒すためにはネオンの攻撃で胸を貫かなければいけない。
しかし戦闘素人のネオンでは化け物の脚を避けて攻撃を命中させる技術も、奴の外皮を貫けるだけの威力を出すこともできない。

(奴の動きを止めつつ蜘蛛の脚を無力化し、固すぎる外皮をはがして弱点を露出させる……あれしかねぇ!!)

肉体の限界を迎えかけていたアレスがこの状況を打破できるベストの技を思いつく。
剣を強く握りしめたアレスは一瞬だけ近くで倒れているティナの方に視線を送ったのだ。

(よし、ティナは気絶してるな。悪いがまた無法をはたらかせてもらうぞ!)
「ネオン!!次の一撃で決めろ!!」
「え、でも……」
「俺に任せろ!!」
「っ!はい!!」
「グギャァアア!!!」

残されたすべての力を振り絞るべく、アレスは剣を強く握り全力で化け物に駆け出した。

「グギャァアア!!」
「フォルワイル家奥義……」
「ギィ!?」
「万花繚乱!!!!!」
「ギャアァアアアア!!」

アレスの繰り出した万の斬撃が激しく化け物を切り刻む。
まるで咲き乱れる花のような光が治まるとそこには表面をくまなく削り取られ外皮を失い、蜘蛛の脚だけでなく手足をも切り刻まれたことにより攻撃の手段を失った化け物の姿があった。

「うっ……」
「アレスさん!」
「決めろネオン!ラストチャンスだ!」

極大の奥義を放ち倒れ行くアレス。
そんなアレスの声に覚悟を決めたネオンは重力に抗う術を失い膝から崩れ落ちる化け物の胸をめがけて渾身の攻撃を放ったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。 死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった! 呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。 「もう手遅れだ」 これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

処理中です...