S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず

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1章

(土に)お還りなさいませご主人様

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「ぐふっ!!」
(なんだ!?手応えがおかしい!?)

アリアの光源魔法でモーリスの視界を奪い渾身の一撃を叩き込んだアレス。
しかしアレスはその感触に違和感を覚えたのだった。

(くそ!加減しすぎた!?もう一撃……)
「っ!!ワープ!!」
ブォン!!
「しまった!!」

すぐさま追撃を加えようとしたアレスだっただがモーリスはそのわずかな一瞬で転移魔法を発動させ、アレスの攻撃は虚しく空を裂く。

「ひっ!?」
「はぁ……はぁ……ごふっ。見事ですよ、お嬢さん。あなたを侮った報いがこの有様だ……」
「アリアぁあああ!!!」

転移魔法を使用したモーリスは階下に移動し、アリアの目の前に姿を現す。
そんなモーリスをアレスは床を切り刻み一瞬で追いかけてきた。

「私の負けだ、少年たちよ。素直に認めよう」
「だぁああああああ!!」
「ワープ」
「くそがぁああああ!!」

追撃を仕掛けるアレスに、モーリスは再びの転移魔法で完全にアレスたちの前から姿を消してしまったのだ。
完全に仕留めたと思っていたアレスはモーリスを取り逃がしたことに悔しさをにじませる。

「大丈夫かアリア!?すまん、お前を危険にさらした」
「いえ、大丈夫ですよ。彼はもう相当の深手でしたので」
「しくった!!生かして捕えようとしたら服の下に防御魔法を仕込んでやがったんだな」
「ですがこれでかなり時間は稼げるはず。早くマグナさんとメアリーさんを探してこの遺跡から脱出しましょう」
「そうだな。あいつを捕まえるのが目的じゃないしな」

あの深手となると自身の回復魔法で治療するには魔力と体力の消費が激し過ぎるだろう。
モーリスを取り逃がしてしまった2人だったがすでに戦う余裕はほとんど残されていない妥当と判断し、モーリスを探すのではなくマグナとメアリーを探してここを脱出することにしたのだった。

「……しかし、さっきまでジジイの相手で手いっぱいだったから構ってる余裕なかったんだが、あいつら生きてるよな?」
「そ、そんなこと言わないでくださいアレスさん!きっと無事ですよ!」
「そうだな。とりあえず何か手掛かりがないかさっき2人が消えたところに戻って……」
「「ぎゃぁあああ!!」」
「っ!?この声は!?」
「マグナさんとメアリーさん!何かに襲われているんでしょうか!?」
「多分こっちだ!急ぐぞ!!」

アレスとアリアがはぐれた2人を探そうと歩き出したその時、どこからともなく2人のただ事ではない悲鳴が聞こえてきたのだった。
2人が危険な状況にあると感じたアレスたちは悲鳴が聞こえた方向に全速で走り出す。

「ひ、広いところに出ました!?ここは一体?」
「さっき俺があのジジイと戦ったところだ!2人の悲鳴はたぶんこのさらに向こうから……」
「も、もうだめだぁ!!足が、もう限界!!」
「諦めんじゃないわよバカマグナ!って、あれは!!」
「お、おお!!アレス~!!助けてくれ!!」
「マグナさんにメアリーさん!よかった、お二人とも無事で!」
「いや待てアリア!あいつらの後ろから何か迫ってくるような……」
「モウシ モウ モウシワケゴザイマセン ゴシュジンサマ!!」
「っ!?」
「あ、あれは!?」

アレスたちが先程あれがモーリスと戦った広い部屋に辿り着いたその時、奥の通路からマグナとメアリーが鬼の形相で走ってくる姿を発見したのだった。
しかしアリアが2人が無事に生きていたことに笑顔を溢したのもつかの間、2人はマグナ達の背後から猛スピードで迫って来ていた狂気のメイド人形の存在に気が付き顔をひきつらせた。

「なんじゃあのおぞましいバケモンは!?」
「あ、アレス!俺たち、もう限界……」
「ハイ ハイジョ ジョジョジョジョジョジョ」
「やべぇ!!」

アレスたちの姿を視界に捉えたマグナが体力の限界からメイド人形に追いつかれそうになったのを見て、アレスは全力で踏み込みマグナを助けに向かう。
メイド人形は両腕に仕込まれていた2本のドス黒い剣を手首のあたりから伸ばしてマグナに斬りかかる。
それをアレスは間一髪で受け止めたのだ。
しかし……

ジュワァ……
(っ!?剣が……黒く、腐食してる!?)
「サス ササガ サスガデス ゴシュジジジジ」

メイド人形の剣と触れた部分から黒い何かが染み出し、アレスの剣が腐食したように黒い何かに侵食されていったのだ。
アレスはマグナが離れたことを確認してすぐさまメイド人形から距離を取る。

(なんだこいつ、よくみたら……気配が一つじゃない!?まるで穢れた魂を何個も取り込んだような……呪いの集合体みたいな奴だ!)
「オ オオ オカエリナサイマセ ゴシュジンサマ!!」
「くっ!?」

自身の攻撃を一度凌いだアレスを強敵認定したのか、メイド人形は狂気をさらに爆発させたような勢いでアレスに襲いかかった。
メイド人形の剣に触れれば呪いが侵食してしまう。
アレスは可能な限り剣を打ち合わず体術のみでメイド人形の攻撃をかわそうとした。

(くそっ!ダメだ、攻撃が激し過ぎて剣で受けざるを得ない!!)
ジュワァ……
「キル キル エモノ ゼンブ ゼンブ」
(多少強引にでも早めにけりを付けなければ……ここだ!!)

メイド人形の呪いを受けて黒く変色した剣の部分は強度を失い酷く脆くなってしまう。
このまま攻撃受けていては反撃する手立てを失うと考えたアレスが危険を冒してメイド人形に反撃の一刀を浴びせる……しかし……

ジュワァアアア……
「剣が……溶けた!?」

アレスの剣がメイド人形の胴体に触れたその瞬間、漏れ出たドス黒い靄がアレスの剣を一瞬で腐食させボロボロと崩れ去ってしまったのだ。

「ムシハ タタキ ツブス」
「くっ!!」
「嘘!アレスの剣が!」
「アレスさん!!ホーリーライトニング!!」
「モッ モウシ ゴザイマセンデシタ ゴシュジジジ」
「アレスー!!俺の剣を使ってくれー!」
「ったく、真っ先に武器を手放すんじゃなくて少しは戦う意思をみせろ……って言いたいところだが、そんなこと言える相手じゃないな。助かったアリア、マグナ!」

メイド人形の反撃を皮一枚躱し後方に逃れるアレス。
追撃を加えようとするメイド人形に、アリアは光攻撃魔法でアレスを援護する。
それとほぼ同時、剣を失ったアレスを見たマグナはすぐに自身が装備していた剣をアレスに渡すべくぶん投げた。
それをノールックで受け取ったアレスは再びメイド人形と向かい合った。

「ギ ガガ オ オユルシヲ ゴシュシュシュ」
(効いてる?やっぱり呪いの類には光魔法が特効らしいな。だが……奴を仕留めるには威力が足らなすぎる)
「飛翔・鷹の目!!」
バチィィイイン!!
(俺の斬撃は大して効果なしか……逃げるか?いや、地上までかなり距離がある。たぶん途中で追いつかれる)
「ゴシュジンサマ オショクジ ノゴヨウイガデキマシタ ア アア アアアア!!」

メイド人形は大したダメージもない様子で体勢を立て直すと剣を構える。
剣が通用しない相手。
効果が見られたアリアの光魔法も威力が足りずメイド人形を退けるには至らない。

(俺が奴の注意を引きつつアリアに攻撃してもらって戦うしかない。だが受け太刀が通用しない相手にどれだけ時間が稼げるか。それにアリアの魔法の威力にも不安が……)
「剣に光魔法を纏わせるのです!!」
「っ!?この声は……ジジイ!?」

アレスが今にも襲い掛かってきそうなメイド人形を前に集中力を高めようとしていたその時、背後から先ほど逃げたはずのモーリスの声が聞こえてきたのだ。

「ゴシュジジジジサママママ」
「ああお前ちょっと黙ってろよ!!波濤突牙!!」
「ギギャ」

逃げたはずのモーリスが戻ってきたことに驚くアレスだったが、メイド人形はそんなことお構いなしといった様子でアレスに襲い掛かる。
それに対しアレスはモーリスと会話をするため全身の筋肉を総動員させ、渾身の斬撃を飛ばしメイド人形を吹き飛ばしたのだ。
ダメージこそほとんどないものの大きくメイド人形を吹き飛ばすことに成功し会話の時間を確保することが出来たのだった。

「~~~ッ!!やっぱこの技を使うには俺の筋力が足りてないんだな……んで、ジジイ。なんだって?」
「あのお嬢さんの魔法と合わせればあのバケモノを倒せるといっているんです。少年、君ならそれが出来るはずだ」

先程アレスに斬られた傷が想像以上に深手だったのか、モーリスは片膝をついた体勢で苦しそうに呼吸をしていた。
そんなモーリスが告げたアドバイスにアレスは不本意ながら耳を傾けるのだった。
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