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1章
憧れの冒険
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「はぁ……ひぃ……道が険し過ぎますよぉ~」
「ディーネさん、大丈夫ですか?」
エリギュラの居城を離れたアレスとディーネは、彼女の頼みである邪悪な存在を調べに南方の険しい山の中を進んでいた。
その山は先程アレスたちが居た広大な海とは打って変わって木々が生い茂り、ゴツゴツとした岩肌が露出した光景が広がっている。
そんな山の中をアレスは持ち前の身軽さで飛ぶように進んでいたが、ディーネはあまり山を歩き慣れていないようですぐに息を切らせてしまった。
そんなディーネにアレスは手を差し伸べ大きな岩や巨大な木の根を超えていった。
「はい……ありがとうございますアレスさん……ごめんなさい。私、アレスさんの足を引っ張っちゃってますよね」
「気にしなくてもいいですよ。そもそもディーネさんが同行することになったのはエリギュラ様のせいなんですから」
アレスの手を掴み何とか岩の上にのぼるも、ディーネは申し訳なさそうな表情でアレスに謝罪をした。
ディーネ本人も自分が今回の旅で足手まといになるだけの存在なのは当然理解している。
それでもディーネがアレスと行動を共にしているのはエリギュラから2人で行くようにと頼まれたからであった。
遡ること数時間前。
エリギュラにアレスの旅に同行するよう言われたディーネはその理由がわからず抗議の声を上げていた。
『待ってくださいエリギュラさん!私そんな魔物退治なんて出来ませんよ!?アレスさんの足を引っ張っちゃうだけですって!』
『エリギュラ様。ディーネさんを連れていかなければいけない理由が何かあるんですか?』
『無論じゃ。だが申し訳ないが、その訳を話すわけにはいかぬのじゃ。こちらにも都合というものがあるのでな』
『えっ!?これ本当に行かなきゃいけない感じですか!?』
『エリギュラ様。彼女とと行動をするよりも私1人の方が身軽で動きやすいと考えます。それにディーネさんを危険にさらすかもしれません。それでも同行させる必要があるのでしょうか』
『ある。詳しい訳を聞かずに連れていってもらえると助かる。それに其方の力ならそう易々と危機に陥ることなどもないであろう?』
『敵の強さなどもなにもわからないので断言などできませんが……』
『それにディーネよ。其方もこの方とならばやぶさかではあるまい』
『えっ、それは……』
『……、何か事情があることは分かりました。それでは私とディーネの2人で南方に現れたという邪悪な気配の正体を探ってまいります」
自身がアレスに同行することに足を引っ張ることがあってもメリットなどあるはずが無いと言うディーネ。
アレスも彼女を危険にさらす可能性があるため1人のほうが良いとエリギュラに告げたのだが、エリギュラには何やら考えがあるようで詳しい理由は明かさなかったもののディーネの動向を強くお願いしたのであった。
そのためアレスもそれ以上反対することなくディーネを連れていくことに決めたのだった。
「1人の方が速いって言ったのにあなたを連れていけって言ったのはエリギュラ様だ。なにか考えがあるんだろうが、ディーネさんが気にするようなことじゃないですよ」
「ですが……」
「それにディーネさんも、俺への迷惑を考えなければ本当は一緒について行きたいって感じだったじゃないですか」
「っ!それは……」
先程城に向かっていた時とは打って変わり、アレスが森を先導しディーネが後に続いていく。
まだ自分が同行する意義を見いだせずアレスへ申し訳ない気持ちでいっぱいだったディーネだが、アレスに本当は一緒に旅に出たかったのではないかと見抜かれ少し言葉を詰まらせたのだった。
「……実は、アレスさんと一緒にこんな風に陸を散策できればなと考えていました」
(……陸を?)
「そう、だったんですか」
「はい。森の中に1人で入るのは怖くて砂浜の近くでしか遊べませんでしたが、本当はこうして誰かと森の中に入って……おとぎ話で聞くような冒険をしたかったんです」
「おとぎ話?」
アレスに本心を見抜かれたディーネは少しためらうようなそぶりを見せながらも、今回アレスに同行したことは自身も望むことだったことを話し始めたのだ。
「私、小さなころからずっとお母さんに聞かせてもらったおとぎ話に憧れていました。そのおとぎ話はお姫様と勇者様が2人で巨大なドラゴンを退治すための旅に出るお話。聞いているだけで心が躍るような冒険の日々に、共に危機を乗り越えていく2人の絆。私には敵わない願いだとは分かっていても、いつかは私もあのおとぎ話の勇者様みたいな方と冒険に出てみたいなって思っていたんです」
「そういうことか」
「はい。ですが私にはおとぎ話のお姫様みたいに魔の者を滅する力があるわけでも、魔物を倒す剣を振るう力もありません。だからアレスさんの足を引っ張ってしまうだけなのは本当に申し訳ないと思ってしまい……」
「……それなら心配は要らないですよ」
「え?」
「ブモォオオオオオオ!!」
ディーネは幼少の頃より聞かされていた母のおとぎ話に憧れていた。
自分もいつかおとぎ話に出てくるような男性と心躍るような冒険がしたいと願い、そしてそれがアレスとのこの旅で果たせるのではないかと密かに考えていたのだった。
その話を聞いたアレスは穏やかな表情でほほ笑む。
するとその直後、なんと深い木々の奥から巨大な魔物がアレスたちめがけて突進してきたのだ。
「よっと!」
「きゃあ!!」
その魔物は二足歩行の牛のような見た目の魔物で、4メートルはあろうかという巨体で大きな斧を強引に振るったのだ。
だがアレスはその一撃をディーネを担ぎながら軽やかにかわしてしまう。
「ま、魔物!?」
「大丈夫です。自分で言うのもあれですけど、俺強いですから」
「ブモォオオオ!!」
「この程度の魔物、誰が一緒でも障壁にすらなりえませんから!」
魔物の攻撃を鮮やかにかわしたアレスはそのまま綺麗な着地を決めるとディーネを優しく下ろし即座に剣に手をかけた。
アレスが攻撃を躱したのを見た魔物は振り抜いた斧を握る腕に力を籠め、地面にめり込んだ斧を逆袈裟のように跳ね上げようとする。
しかしそんな魔物の追撃よりも早く、アレスは神速の抜刀で魔物の首を跳ね飛ばしたのだ。
「2人で協力して戦いながら進む旅ももちろん素敵ですけど、屈強なナイトが麗しのお姫様を守りながら進む旅もまた乙なものじゃないですか?」
「っ!」
アレスは魔物の胴体の上で剣についた血を手持ちの布で拭きとり、ディーネにそう言った。
そんなアレスの姿はディーネにはまさにおとぎ話に出てきた勇者のように映ったのだ。
「ディーネさん、大丈夫ですか?」
エリギュラの居城を離れたアレスとディーネは、彼女の頼みである邪悪な存在を調べに南方の険しい山の中を進んでいた。
その山は先程アレスたちが居た広大な海とは打って変わって木々が生い茂り、ゴツゴツとした岩肌が露出した光景が広がっている。
そんな山の中をアレスは持ち前の身軽さで飛ぶように進んでいたが、ディーネはあまり山を歩き慣れていないようですぐに息を切らせてしまった。
そんなディーネにアレスは手を差し伸べ大きな岩や巨大な木の根を超えていった。
「はい……ありがとうございますアレスさん……ごめんなさい。私、アレスさんの足を引っ張っちゃってますよね」
「気にしなくてもいいですよ。そもそもディーネさんが同行することになったのはエリギュラ様のせいなんですから」
アレスの手を掴み何とか岩の上にのぼるも、ディーネは申し訳なさそうな表情でアレスに謝罪をした。
ディーネ本人も自分が今回の旅で足手まといになるだけの存在なのは当然理解している。
それでもディーネがアレスと行動を共にしているのはエリギュラから2人で行くようにと頼まれたからであった。
遡ること数時間前。
エリギュラにアレスの旅に同行するよう言われたディーネはその理由がわからず抗議の声を上げていた。
『待ってくださいエリギュラさん!私そんな魔物退治なんて出来ませんよ!?アレスさんの足を引っ張っちゃうだけですって!』
『エリギュラ様。ディーネさんを連れていかなければいけない理由が何かあるんですか?』
『無論じゃ。だが申し訳ないが、その訳を話すわけにはいかぬのじゃ。こちらにも都合というものがあるのでな』
『えっ!?これ本当に行かなきゃいけない感じですか!?』
『エリギュラ様。彼女とと行動をするよりも私1人の方が身軽で動きやすいと考えます。それにディーネさんを危険にさらすかもしれません。それでも同行させる必要があるのでしょうか』
『ある。詳しい訳を聞かずに連れていってもらえると助かる。それに其方の力ならそう易々と危機に陥ることなどもないであろう?』
『敵の強さなどもなにもわからないので断言などできませんが……』
『それにディーネよ。其方もこの方とならばやぶさかではあるまい』
『えっ、それは……』
『……、何か事情があることは分かりました。それでは私とディーネの2人で南方に現れたという邪悪な気配の正体を探ってまいります」
自身がアレスに同行することに足を引っ張ることがあってもメリットなどあるはずが無いと言うディーネ。
アレスも彼女を危険にさらす可能性があるため1人のほうが良いとエリギュラに告げたのだが、エリギュラには何やら考えがあるようで詳しい理由は明かさなかったもののディーネの動向を強くお願いしたのであった。
そのためアレスもそれ以上反対することなくディーネを連れていくことに決めたのだった。
「1人の方が速いって言ったのにあなたを連れていけって言ったのはエリギュラ様だ。なにか考えがあるんだろうが、ディーネさんが気にするようなことじゃないですよ」
「ですが……」
「それにディーネさんも、俺への迷惑を考えなければ本当は一緒について行きたいって感じだったじゃないですか」
「っ!それは……」
先程城に向かっていた時とは打って変わり、アレスが森を先導しディーネが後に続いていく。
まだ自分が同行する意義を見いだせずアレスへ申し訳ない気持ちでいっぱいだったディーネだが、アレスに本当は一緒に旅に出たかったのではないかと見抜かれ少し言葉を詰まらせたのだった。
「……実は、アレスさんと一緒にこんな風に陸を散策できればなと考えていました」
(……陸を?)
「そう、だったんですか」
「はい。森の中に1人で入るのは怖くて砂浜の近くでしか遊べませんでしたが、本当はこうして誰かと森の中に入って……おとぎ話で聞くような冒険をしたかったんです」
「おとぎ話?」
アレスに本心を見抜かれたディーネは少しためらうようなそぶりを見せながらも、今回アレスに同行したことは自身も望むことだったことを話し始めたのだ。
「私、小さなころからずっとお母さんに聞かせてもらったおとぎ話に憧れていました。そのおとぎ話はお姫様と勇者様が2人で巨大なドラゴンを退治すための旅に出るお話。聞いているだけで心が躍るような冒険の日々に、共に危機を乗り越えていく2人の絆。私には敵わない願いだとは分かっていても、いつかは私もあのおとぎ話の勇者様みたいな方と冒険に出てみたいなって思っていたんです」
「そういうことか」
「はい。ですが私にはおとぎ話のお姫様みたいに魔の者を滅する力があるわけでも、魔物を倒す剣を振るう力もありません。だからアレスさんの足を引っ張ってしまうだけなのは本当に申し訳ないと思ってしまい……」
「……それなら心配は要らないですよ」
「え?」
「ブモォオオオオオオ!!」
ディーネは幼少の頃より聞かされていた母のおとぎ話に憧れていた。
自分もいつかおとぎ話に出てくるような男性と心躍るような冒険がしたいと願い、そしてそれがアレスとのこの旅で果たせるのではないかと密かに考えていたのだった。
その話を聞いたアレスは穏やかな表情でほほ笑む。
するとその直後、なんと深い木々の奥から巨大な魔物がアレスたちめがけて突進してきたのだ。
「よっと!」
「きゃあ!!」
その魔物は二足歩行の牛のような見た目の魔物で、4メートルはあろうかという巨体で大きな斧を強引に振るったのだ。
だがアレスはその一撃をディーネを担ぎながら軽やかにかわしてしまう。
「ま、魔物!?」
「大丈夫です。自分で言うのもあれですけど、俺強いですから」
「ブモォオオオ!!」
「この程度の魔物、誰が一緒でも障壁にすらなりえませんから!」
魔物の攻撃を鮮やかにかわしたアレスはそのまま綺麗な着地を決めるとディーネを優しく下ろし即座に剣に手をかけた。
アレスが攻撃を躱したのを見た魔物は振り抜いた斧を握る腕に力を籠め、地面にめり込んだ斧を逆袈裟のように跳ね上げようとする。
しかしそんな魔物の追撃よりも早く、アレスは神速の抜刀で魔物の首を跳ね飛ばしたのだ。
「2人で協力して戦いながら進む旅ももちろん素敵ですけど、屈強なナイトが麗しのお姫様を守りながら進む旅もまた乙なものじゃないですか?」
「っ!」
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