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2章
呪いを以て呪いを制す
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「お前……よくも姉ちゃんに手を出そうとしたな!!」
ドラゴンゾンビが暴れまわりパニックに陥るテスクトーラの街。
そんなドラゴンゾンビが暴れる中心街から少し離れた場所で、駆け付けたノヴァがエトナを守るためヴィルハートと対面していた。
「おいおい。私はその子を苦しみから救ってあげようとしていただけだよ。死ねば苦しむこともなくなる」
「お前ぇ……」
「待って、ノヴァ……その人は、ヴィルハートさんだと思うの……」
「えっ!?ヴィルハートさんって……ほんとうか!?」
「ああ、それは本当だよ。でもそれがどうかしたかい?」
「お願いだヴィルハートさん!姉ちゃんを……姉ちゃんを助けてくれ!奴隷の刻印で苦しんで死んじゃいそうなんだ!」
「馬鹿かな君は。私は今彼女を殺そうとしていたんだぞ?助けるわけがないだろう」
目の前の男がアレスたちが話していたヴィルハートだと知り、エトナを救ってもらえるように頭を下げるノヴァ。
しかしそんなノヴァの願いをヴィルハートは無慈悲にも笑い飛ばしたのだ。
「なんで……」
「なんでと言われてもね。そう決めたからとだけ答えておこうか」
「嫌だよ……お願いだから姉ちゃんを助けて」
「しつこいな君。無理だと言っているだろ?」
「それじゃあ……力尽くで言うこと聞かす!!」
「ノヴァ!!……ごほっごほっ!!」
どうしてもエトナを助けてくれないというヴィルハート。
だがそんな彼の答えに奴隷の刻印に苦しむエトナをみて焦っていたノヴァはヴィルハートへの苛立ちを募らせ黒い影を纏い始めたのだ。
「それは呪い……いや、君のスキルか。感情が昂れば力が増すと見える……」
「姉ちゃんを助けろ!!さもないと命はないぞ!!」
「面白い!!君が私に勝てたなら彼女を救ってあげてもいいだろう!!」
「はぁあああ!!」
ヴィルハートのその言葉を聞いたノヴァは影を纏って獣のような外見となり、勢いよくヴィルハートに突進していったのだ。
「でぁああああ!!」
「甘い!!あまりにも隙だらけだ!!」
「ぐっ!?がぁあああ!!」
腹の底から叫びながら突進するノヴァの攻撃を事も無げに回避したヴィルハートは、隙だらけとなったノヴァの顎に拳を捻じ込む。
その一撃が激しく顎を揺らし、体がぐらついたノヴァだったが執念で踏みとどまり攻撃を続けたのだ。
「はぁ……はぁ……当たれ、当たれ、当たってくれぇ!」
「幼い。スキルはなかなかのものだが圧倒的に経験が足りてないぞ。昨日の少年とは比べるべくもないな」
「喰らえぇ!!」
「残念……吹き飛ぶがいい!揺魂波!!」
「ぐぁああああ!!」
鋭い爪を突き立てて必死に攻撃をするノヴァだが、ヴィルハートとの実力差はあまりにも明白だった。
ゆらりゆらりとすべての攻撃を躱されてしまう。
ノヴァが一撃必殺の思いで繰り出した突きをヴィルハートは下を潜るように回避し、がら空きとなったノヴァのボディに強烈な掌底を喰らわせたのだ。
「ノヴァああ!!」
「げほげほ……」
「うーん、期待外れもいいとこだな。まあ、子供にこれ以上求めるのは酷というものか」
地面を転がったノヴァはその勢いのまま向かいの建物まで吹き飛んでしまった。
内部から体を破壊されるかのような奇妙な一撃にノヴァはなかなか立ち上がることができない。
そんなノヴァを見てヴィルハートはつまらなそうに歩き出した。
(強い……強すぎる。僕じゃあいつに勝てない……)
「さて、それではこの子にとどめを刺すとしようか。ずっと放置していても長く苦しみ続けるだけだからね」
「姉ちゃん!!」
ヴィルハートが向かったのはエトナの元。
彼は再びエトナにとどめを刺そうと手刀を振り上げたのだ。
それを見たノヴァは血を吐き出さんばかりの声を出す。
(どうする!?僕じゃあいつをとめられない……なんとか、なんとかあいつに勝てる力を……)
「っ!!これは……」
先程のように飛び出して行っても今度は対応されるだけ。
そう考えたノヴァはどうすればエトナを救えるとか思考を巡らせたのだが……その時彼は吹き飛ばされた建物の傍にとあるものがあることに気が付いたのだ。
(これは……あいつから感じるのと同じ魔力だ。これを取り込めば……僕も、あいつと同じくらい強くなれるのかな)
「っ!?少年なにを!?」
「ノヴァ……だめぇ!!」
ノヴァの傍に落ちていたのはドラゴンゾンビが振り撒いた腐肉の塊。
なんとノヴァはそれを手に取り、あろうことかそれを口に含んだのだ。
「がぁあああああああ!!!!!!」
「馬鹿な少年!!そんなことをすれば死ぬぞ!!」
ドラゴンゾンビの腐肉は手にしただけで触れた部分の肉が焼けるような痛みが走った。
影を纏ったノヴァもただではすまず、両手は一瞬でボロボロとなってしまった。
さらにそれを飲み込むのだ。
ノヴァの口に食道は信じられないほどに破壊され、彼の胃は使い物にならないほど呪いに侵されてしまった。
「グゥアアアアアアア!!!」
「なんという……貴様の覚悟、見誤っていた様だ」
「ノ……ヴァ……」
『アハハハ!!!殺してやるぞ!!!アハハハ!!』
喉がつぶれもはやノヴァが何を喋っているのか理解できなかったが、その内容が狂気を孕んでいることは容易に伝わってくる。
ドラゴンゾンビの腐肉を取り込み精神が壊れてしまったノヴァは、今まで以上の恐ろしい呪いを纏った獣のようになってしまったのだ。
「ブォオオオオオ!!」
「あのクソ死体ドラゴンがぁ!!降りて来いって言ってんだろうがぁ!!」
一方そのころ街の中心街。
依然拡大し続ける呪いの侵食を食い止めようとしていたアレスだったのだが、呪いの発生源であるドラゴンゾンビが上空を飛び続けているせいで全く攻撃を当てることが出来ずにいたのだ。
(全然だめだ!あんな上空を飛ばれたら斬撃を飛ばしても躱される……)
「ブゥゥゥ……バァ!!」
「いい加減にしろ!!炎灼・斬!!」
ドラゴンゾンビはアレスを強敵と認めたらしく、決して地上には近づかず上空から一方的なブレス攻撃を続けていた。
アレスは地上に呪いがばら撒かれることを防ぐためにそれらを斬撃でかき消していたのだが、それでは体力を消耗させられる一方で窮地に追い込まれていたのだ。
「ブゥゥゥ……ボウッ!!ボウッ!!ボウッ!!」
「あぁんもう……いいぜ。こうなったらてめえと俺、どっちが先に折れるか根競べを……」
「フリージング・ブレス!!!」
「ッ!?」
ドラゴンゾンビは何度目かのブレス攻撃をアレスに向け放つ。
長期戦を覚悟したアレスがその攻撃を迎え撃とうとしたのだが、その時アレスの視界の外から絶対零度の吹雪がドラゴンゾンビが吐き出したブレスを包んだのだ。
吹雪に飲まれたヘドロは一瞬にして凍り付き地面へ落下していく。
「割らせませんよ!ソフトシールド!!」
そうして地面に激突しそうになった凍ったヘドロを、盾を構えたジョージが柔らかな魔力で包んで氷を割ることなく受け止めたのだった。
表面を丈夫な氷で覆い、それを無事に受け止めることで呪いを街に拡散させることなくドラゴンゾンビの攻撃を無力化したのだ。
「ジョージ!!それにティナも!!」
「すまないアレス!!テスクトーラに向かう馬車が1台も現れず来るのに時間がかかった!」
「あのドラゴンゾンビは街道に沿って飛んでいました!恐らく向こうの街であれが暴れたせいで馬車が通らなかったんだと思います!」
ドラゴンゾンビに苦戦していたアレスの元に現れたのは遅れてテスクトーラの街にやってきたティナとジョージ。
2人が駆けつけて来たことで単独での戦闘で暗い表情だったアレスの顔に笑顔が戻る。
「っていうかあれドラゴンゾンビっていうのか!?」
「はい!ドラゴンはとんでもない怪物で、死体になっても呪いを纏って動き出すという伝説が残っているんです!」
「死体であの強さか、やめて欲しいぜ」
「ですので心臓や脳を潰しても活動は停止しません!体のどこかにある呪いの核を潰さないと!」
「ナイスジョージ!!呪いの核だな?ティナ、協力してくれ!!」
「もちろんだ!」
「絵の中の偽物に続いて死体のドラゴンか。今度も討伐してやるよ!」
ジョージからドラゴンゾンビの弱点を聞いたアレスはティナに協力を仰ぎドラゴンゾンビを仕留めることにしたのだ。
不死身の肉体に街中を覆っても余りあるほどの強力な呪いを有するドラゴンゾンビ。
すでにこの国の騎士団でどうにかできるレベルをはるかに超えた化け物に、アレスは勝利を確信し不敵に笑ってみせたのだ。
ドラゴンゾンビが暴れまわりパニックに陥るテスクトーラの街。
そんなドラゴンゾンビが暴れる中心街から少し離れた場所で、駆け付けたノヴァがエトナを守るためヴィルハートと対面していた。
「おいおい。私はその子を苦しみから救ってあげようとしていただけだよ。死ねば苦しむこともなくなる」
「お前ぇ……」
「待って、ノヴァ……その人は、ヴィルハートさんだと思うの……」
「えっ!?ヴィルハートさんって……ほんとうか!?」
「ああ、それは本当だよ。でもそれがどうかしたかい?」
「お願いだヴィルハートさん!姉ちゃんを……姉ちゃんを助けてくれ!奴隷の刻印で苦しんで死んじゃいそうなんだ!」
「馬鹿かな君は。私は今彼女を殺そうとしていたんだぞ?助けるわけがないだろう」
目の前の男がアレスたちが話していたヴィルハートだと知り、エトナを救ってもらえるように頭を下げるノヴァ。
しかしそんなノヴァの願いをヴィルハートは無慈悲にも笑い飛ばしたのだ。
「なんで……」
「なんでと言われてもね。そう決めたからとだけ答えておこうか」
「嫌だよ……お願いだから姉ちゃんを助けて」
「しつこいな君。無理だと言っているだろ?」
「それじゃあ……力尽くで言うこと聞かす!!」
「ノヴァ!!……ごほっごほっ!!」
どうしてもエトナを助けてくれないというヴィルハート。
だがそんな彼の答えに奴隷の刻印に苦しむエトナをみて焦っていたノヴァはヴィルハートへの苛立ちを募らせ黒い影を纏い始めたのだ。
「それは呪い……いや、君のスキルか。感情が昂れば力が増すと見える……」
「姉ちゃんを助けろ!!さもないと命はないぞ!!」
「面白い!!君が私に勝てたなら彼女を救ってあげてもいいだろう!!」
「はぁあああ!!」
ヴィルハートのその言葉を聞いたノヴァは影を纏って獣のような外見となり、勢いよくヴィルハートに突進していったのだ。
「でぁああああ!!」
「甘い!!あまりにも隙だらけだ!!」
「ぐっ!?がぁあああ!!」
腹の底から叫びながら突進するノヴァの攻撃を事も無げに回避したヴィルハートは、隙だらけとなったノヴァの顎に拳を捻じ込む。
その一撃が激しく顎を揺らし、体がぐらついたノヴァだったが執念で踏みとどまり攻撃を続けたのだ。
「はぁ……はぁ……当たれ、当たれ、当たってくれぇ!」
「幼い。スキルはなかなかのものだが圧倒的に経験が足りてないぞ。昨日の少年とは比べるべくもないな」
「喰らえぇ!!」
「残念……吹き飛ぶがいい!揺魂波!!」
「ぐぁああああ!!」
鋭い爪を突き立てて必死に攻撃をするノヴァだが、ヴィルハートとの実力差はあまりにも明白だった。
ゆらりゆらりとすべての攻撃を躱されてしまう。
ノヴァが一撃必殺の思いで繰り出した突きをヴィルハートは下を潜るように回避し、がら空きとなったノヴァのボディに強烈な掌底を喰らわせたのだ。
「ノヴァああ!!」
「げほげほ……」
「うーん、期待外れもいいとこだな。まあ、子供にこれ以上求めるのは酷というものか」
地面を転がったノヴァはその勢いのまま向かいの建物まで吹き飛んでしまった。
内部から体を破壊されるかのような奇妙な一撃にノヴァはなかなか立ち上がることができない。
そんなノヴァを見てヴィルハートはつまらなそうに歩き出した。
(強い……強すぎる。僕じゃあいつに勝てない……)
「さて、それではこの子にとどめを刺すとしようか。ずっと放置していても長く苦しみ続けるだけだからね」
「姉ちゃん!!」
ヴィルハートが向かったのはエトナの元。
彼は再びエトナにとどめを刺そうと手刀を振り上げたのだ。
それを見たノヴァは血を吐き出さんばかりの声を出す。
(どうする!?僕じゃあいつをとめられない……なんとか、なんとかあいつに勝てる力を……)
「っ!!これは……」
先程のように飛び出して行っても今度は対応されるだけ。
そう考えたノヴァはどうすればエトナを救えるとか思考を巡らせたのだが……その時彼は吹き飛ばされた建物の傍にとあるものがあることに気が付いたのだ。
(これは……あいつから感じるのと同じ魔力だ。これを取り込めば……僕も、あいつと同じくらい強くなれるのかな)
「っ!?少年なにを!?」
「ノヴァ……だめぇ!!」
ノヴァの傍に落ちていたのはドラゴンゾンビが振り撒いた腐肉の塊。
なんとノヴァはそれを手に取り、あろうことかそれを口に含んだのだ。
「がぁあああああああ!!!!!!」
「馬鹿な少年!!そんなことをすれば死ぬぞ!!」
ドラゴンゾンビの腐肉は手にしただけで触れた部分の肉が焼けるような痛みが走った。
影を纏ったノヴァもただではすまず、両手は一瞬でボロボロとなってしまった。
さらにそれを飲み込むのだ。
ノヴァの口に食道は信じられないほどに破壊され、彼の胃は使い物にならないほど呪いに侵されてしまった。
「グゥアアアアアアア!!!」
「なんという……貴様の覚悟、見誤っていた様だ」
「ノ……ヴァ……」
『アハハハ!!!殺してやるぞ!!!アハハハ!!』
喉がつぶれもはやノヴァが何を喋っているのか理解できなかったが、その内容が狂気を孕んでいることは容易に伝わってくる。
ドラゴンゾンビの腐肉を取り込み精神が壊れてしまったノヴァは、今まで以上の恐ろしい呪いを纏った獣のようになってしまったのだ。
「ブォオオオオオ!!」
「あのクソ死体ドラゴンがぁ!!降りて来いって言ってんだろうがぁ!!」
一方そのころ街の中心街。
依然拡大し続ける呪いの侵食を食い止めようとしていたアレスだったのだが、呪いの発生源であるドラゴンゾンビが上空を飛び続けているせいで全く攻撃を当てることが出来ずにいたのだ。
(全然だめだ!あんな上空を飛ばれたら斬撃を飛ばしても躱される……)
「ブゥゥゥ……バァ!!」
「いい加減にしろ!!炎灼・斬!!」
ドラゴンゾンビはアレスを強敵と認めたらしく、決して地上には近づかず上空から一方的なブレス攻撃を続けていた。
アレスは地上に呪いがばら撒かれることを防ぐためにそれらを斬撃でかき消していたのだが、それでは体力を消耗させられる一方で窮地に追い込まれていたのだ。
「ブゥゥゥ……ボウッ!!ボウッ!!ボウッ!!」
「あぁんもう……いいぜ。こうなったらてめえと俺、どっちが先に折れるか根競べを……」
「フリージング・ブレス!!!」
「ッ!?」
ドラゴンゾンビは何度目かのブレス攻撃をアレスに向け放つ。
長期戦を覚悟したアレスがその攻撃を迎え撃とうとしたのだが、その時アレスの視界の外から絶対零度の吹雪がドラゴンゾンビが吐き出したブレスを包んだのだ。
吹雪に飲まれたヘドロは一瞬にして凍り付き地面へ落下していく。
「割らせませんよ!ソフトシールド!!」
そうして地面に激突しそうになった凍ったヘドロを、盾を構えたジョージが柔らかな魔力で包んで氷を割ることなく受け止めたのだった。
表面を丈夫な氷で覆い、それを無事に受け止めることで呪いを街に拡散させることなくドラゴンゾンビの攻撃を無力化したのだ。
「ジョージ!!それにティナも!!」
「すまないアレス!!テスクトーラに向かう馬車が1台も現れず来るのに時間がかかった!」
「あのドラゴンゾンビは街道に沿って飛んでいました!恐らく向こうの街であれが暴れたせいで馬車が通らなかったんだと思います!」
ドラゴンゾンビに苦戦していたアレスの元に現れたのは遅れてテスクトーラの街にやってきたティナとジョージ。
2人が駆けつけて来たことで単独での戦闘で暗い表情だったアレスの顔に笑顔が戻る。
「っていうかあれドラゴンゾンビっていうのか!?」
「はい!ドラゴンはとんでもない怪物で、死体になっても呪いを纏って動き出すという伝説が残っているんです!」
「死体であの強さか、やめて欲しいぜ」
「ですので心臓や脳を潰しても活動は停止しません!体のどこかにある呪いの核を潰さないと!」
「ナイスジョージ!!呪いの核だな?ティナ、協力してくれ!!」
「もちろんだ!」
「絵の中の偽物に続いて死体のドラゴンか。今度も討伐してやるよ!」
ジョージからドラゴンゾンビの弱点を聞いたアレスはティナに協力を仰ぎドラゴンゾンビを仕留めることにしたのだ。
不死身の肉体に街中を覆っても余りあるほどの強力な呪いを有するドラゴンゾンビ。
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