S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず

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2章

とんぼ返り

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「竜人族の……子供!?」

アレスの育った教会にやって来ていたソシアたちは、そこで厄災をもたらすと伝えられている竜人族の子供と出会ったのだ。
人間の国に竜人族がいる異常事態にソシアたちは思わず身構えてしまう。

「ひっ!?」
「あなた達!あの子を怖がらせないでちょうだい!」

だがソシアたちの反応を見た竜人族の少女は恐怖で身をすくませたのだった。
恐怖で震える竜人族の少女に駆け寄ったシスターは彼女を抱きしめながらそんなソシアたちの反応を厳しく咎める。

「す、すみません!でもシスターさん、その子は……」
「この子が人間と違うということがなんです!?ステラちゃんがあなた達に何かしましたか!?」
「それは……ごめんなさい」
「ですがシスターさん。種族の隔たりを超えて平等に接するあなたの考えは素晴らしいものだと思いますが、それでもそれが竜人族の子供となるとあまりそうも言っていられないと思うんです」
「ええ、私も彼女と同意見です。古来から人間族と竜人族は決して交わることができない関係だと伝えられています。特に竜人族の子供が1人で人間族の領域にいるというのは、最も避けるべき状況と言われていますから」

竜人族の危険性というのはどの国であっても共通して語り継がれている常識だ。
伝説に残されているあのドラゴンの力をその身に秘めた竜人族は、かつて何度も人間の国を滅ぼしたとされるほど狂暴な種族とされている。
特に竜人族の子供が単独で人間の住む領域に現れた時は最悪で、その子供を取り返すために大人の竜人族が問答無用で国を焼き払ってしまうと言われているのだ。
無論その話はシスターも知っていることである。
だがそれでもその伝承だけを信じまだ幼い彼女を迫害することを決して認めなかったのだ。

「だからどうしろというのですか?まさかその伝承だけを鵜呑みにしてまだ幼い彼女を追い出せというのですか?」
「竜人族を発見した場合は接触を避け速やかに王国軍に連絡するのがセオリーです。私はエメルキア王国軍と繋がりがありますので私が彼女を王国軍にお連れ致します」
「お断りします。あなた方はこの子を腫れ物のように扱うのでしょう?それなら私がこの子を親御さんにお返しします」
「シスターさん、この件は対応を誤ればこの国が滅びかねない問題です。少し落ち着いて話を……」
「皆どうした!?なんだか揉めてるようだけど俺が居ない間に何があったんだ?」
「っ!?きゃぁああああ!!!」
「ステラちゃん!?」

竜人族の子供が目の前にいるという異常事態に辺りにただならぬ緊張感が漂う。
ソシアたちも彼女そのものが危険な存在だとまでは考えていないが、彼女がきっかけで彼女の親である大人の竜人族が怒り狂いこの国に現れるかもしれないと考えると焦りを感じざるを得なかった。
だがそこにこの異様な空気を感じ取り、アレスが駆けつけて来たことにより事態が急変したのだ。
シスターやソシアたちが揉めている現場を仲裁しようとやってきたアレスだったのだが、竜人族の少女はアレスを見るなり突如鬼気迫るほどの悲鳴をあげたのだ。

「嫌!!嫌!!来ないでぇええ!!」
「ステラちゃん!?大丈夫よ、落ち着いて!」
「え……はっ!?竜人族の子供!?なんで竜人族の子供がこんなところに……流石にヤバいぞシスター!」
「アレスまでなんてことを言うの!?あなたを種族が違うからと言って差別するような子に育てた覚えはありません!!」
「いや違うよシスター!俺がヤバいって言ったのはそういう意味じゃ……」
「おっ!いたいた。探したぜぇ」
「っ!?」

アレスの姿を見た途端に命の危機が迫ったかのように恐怖する少女。
そんな少女を見てアレスはソシアたち同様に竜人族の子供がこの場に居てはまずいと口にしたのだが、そんなアレスたちの元に怪しげな男たちが姿を現したのだ。

「なんだここ?こんな森の中に教会なんてあったのかよ」
「誰だてめぇら。こっちは取り込み中だ、引っ込んでろ」
「あん!?ガキが何言ってんだ!?死にてえのか!?」

現れた男たちは武装しており明らかに一般人ではなく、その形相や纏う雰囲気から王国軍や冒険者ともかけ離れていることは明らかだった。
そんな男たちの登場にアレスとティナはシスターたちを庇うように前に出る。

「ちっ。やっぱり狙われてるよな」
「狙われてるって……あの竜人族の少女がか?だがなぜ……」
「おらおら!!そいつは俺らの獲物だぜ!?」
「っ!!」
「どうやら先客がいたようですな。ですがアレはあなた方には渡しませんよ?」
「次から次へと……迷惑な野郎どもだな」

敵意を剥き出しにする一団を迎え撃とうとするアレスとティナ。
だがそこへさらに2つの集団が竜人族の子供を求めて姿を現したのだ。

「おいティナ。今のお前から見て4時の方角にさっきのちび共がいる。あいつらを連れ戻しに行ってくれないか?」
「この場は任せて大丈夫か?」
「誰に言ってんだ」
「わかった。任せてくれ!」

竜人族の子供を狙い、アウトローな連中が集まってきていることを知ったアレスは先程深い穴を掘ったと騒いでいた教会の子供たちを守るようティナに小声でお願いした。
目の前に現れた男たちはどれも10人以下の小規模な集団。
シスターたちを庇いながらでもアレスなら問題にということで、ティナは教会の子供たちを守るためその場を飛び出したのだ。

「あん?どこ行くんだあのガキ」
「命が惜しくなって逃げ出したか?お前らも今すぐ尻尾巻いて逃げれば死なずに済むかもだぞ?」
「黙れ……」
「おいてめぇ!!さっきから舐めた口ばっかききやがって!!」
「早くその竜人族のガキを渡しやがれ!!」
「何か勘違いしていませんか?あの子供を攫うのは我々ですよ?」
「舐めてんじゃねえぞ!?先にてめえらから消してやる……」
「黙れって言ってんだろうが」
「っ!?」
「なっ……」

竜人族の少女を狙ってやってきた男たちは言動からそれぞれ別の組織の人間らしい。
お目当ての竜人族の少女をどの組織が手に入れるのか、殺気立ち今にも戦闘を始めそうな彼らだったがその時それを静かに聞いていたアレスが突如すさまじい殺気を男たちに向けたのだ。

「アレス!!殺してはいけません!!」
「わかってるよ。月影流秘伝……叢雲・一閃!!」
「ギャアアアアア!!」
「グァアアアア!?」

直後、アレスは絶対零度の視線を男たちに向けながら剣を握った。
それを見たシスターは男たちを殺さないようアレスに叫ぶ。
それを聞いたアレスは柔らかい声色でシスターに返事をしつつ、それとは裏腹に容赦のない踏み込みで一瞬の間に集まっていた男たちを切り刻んだのだ。
アレスの姿が消えたと同時に辺りには男たちの悲鳴と武器が砕け散る音が響き渡る。

「ひ、ひぃ……化け物……」
「てめぇ……いったい何者だ!?」
「あなた達。もう人を傷つけるようなことはやめなさい。人を傷つければその刃はいずれ必ず自分に返ってきますよ」
「シスター・ナタリー。危ないですから前に出ないでください」
「ヴィルハートさんの言う通りだシスター。それにこいつ等みたいな奴は優しく教えてやっても悪事から足を洗ったりなんてしねえ。だから……」
「ひぃ!?」
「ッ!?」
「アレス……?」
「次はねぇ……命が惜しければ彼女から手を引け」

戦意を失った男たちに、アレスはねっとりとした殺意を向ける。
それは背後に居たシスターたちには感じ取ることはできないものであったが、アレスの正面に居た男たちは全員が死の恐怖を明確に植え付けられ言葉を失ってしまったのだ。

「さてと……ここからどうするかなんだが。シスター、その子大丈夫か?」
「あっ!そうだわ!ステラちゃん、大丈夫?」
「……っ!」

男たちへの牽制を終えたアレスは雰囲気を一転させ、普段と変わりない穏やかな様子でシスターに少女の様子を訪ねた。
男たちの襲撃に気を取られてしまったシスターが慌てて自分の後ろに隠れていた少女の様子を確認すると、彼女はシスターの陰に隠れながらぶるぶると震えていたのだ。

「こいつらに怯えてる……じゃないよな」
「そうですね。さっきあの子はアレスさんの姿を見て恐怖してましたから」
「アレス君、あの子に何かしたの?」
「してるわけないだろうが。そもそもその子と俺は初対面のはずだって。そうだろう?」
「っ!!」
「……なんだかずいぶん怖がられちゃってるな」

理由は不明だが、彼女はアレスと一切目を合わせようとせずただひたすらに恐怖で体を震わせるだけであった。
その様子に流石のアレスも困ったような表情をのぞかせる。

「なんで怖がられてるのかも知りたいけど、今は先にこれからどうするか決めたい。シスター、この子の両親は?」
「それが……この子、ここに来てから自分のことはほとんど話してくれないの」
「弱ったな。何をするにも情報がなければ動くことも出来ねえ」
「そうね……ねえステラちゃん?怖がらなくても大丈夫よ。あのお兄ちゃんは私たちと一緒に暮らしていたけどとっても優しい良い子なの。だから安心してちょうだい」
「……」
「君、お名前はステラって言うんだ。素敵な名前だね」
「……。あ……う……」
「ふふっ。ねえ、僕に一つだけ聞かせてくれないかな?ステラちゃんのお父さんとお母さんはどこにいるのかな?きっとお父さんとお母さんもステラちゃんに事探してると思うよ。僕たちが一緒に探してあげるから、どこにいるのか教えてくれない?」

怖がるステラにアレスはしゃがみ込んで目線を合わせると、丁寧な話し方でその壁を取り払おうとしたのだ。

「……え、あ……」
「うんうん。ゆっくりでいいから聞かせて」
「お母さんは……お母さんは、私に逃げろって。それで……それで……うぅ……」
「……そうか。それじゃあお父さんは?」
「ぐすっ……お父さんは、いないよ。ずっと、お母さんと一緒だったから……」
「わかった……教えてくれてありがとうね」
「……」
「アレスさん、その子の母親はまさか……」
「ああ。多分な」
「そんな……」
「だけどこれで次にどうしたらいいか決まったな」
「え?王国軍に助けを求める、ですか?」
「違うよ。今からシャムザロールにもう一回行ってエルフの森を目指す」
「な、なにを言ってるんですか!?」
「アレス君!?正気か!?」
「エルフの森……?」

シスターの後ろに隠れてアレスを怖がっていたステラだったが、柔らかなアレスの接し方に少しだけではあるが心を開きアレスの質問に答えてくれたのだ。
アレスが聞いたのは彼女の両親の所在について。
両親が無事であれば彼女を両親の元に送り届けることが1番だと考えていたアレスだったのだが、その考えは彼女の回答から叶わないものだとわかってしまった。
それを受けてアレスは彼女にとっての最善の行動を考える。
そしてすぐにアレスが口にした目標はジョージ達の想像すらできない突飛なものであったのだ。
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