S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず

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2章

三つ巴の戦い

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「まずは視界を無くそうか」
ボォオオオンン!!!

ジョージとソシアを取り押さえていた星の舞のメンバーが盗賊団ゲビアの別動隊と戦闘を開始した頃、膠着状態だったアレスたちも戦闘を開始していた。
真っ先に動いたのは能面。
3~4cmほどの玉を3つ人差し指から小指までの間に挟んで懐から取り出し、腰のあたりに縫い付けられた摩擦力の高い布を利用して導火線に一瞬で着火させアレスに向けて投げ飛ばした。

「視界が無きゃアタシの鎖鎌は躱せないだろォ!?」
「こっちだティナ!!」
「くっ!!」
「アレは僕の獲物だ。横取りは許さないよ?」
「なッ!?」

視界が完全に奪われた直後それを見たエスケラは再びアレスたちに向け鎖鎌を振り回す。
アレスはティナを抱えその攻撃を回避するが、なんとアレスたちに攻撃を仕掛けたエスケラの背後に能面がいつの間にか回り込んでいたのだ。

「それはこっちのセリフだ!!」
「よっと!!」
「ダミアン様……」
「油断するなと言っただろエスケラ。奴は味方じゃない。同じ獲物を狙う敵なんだぞ」
「面目ない……」
(やはりあいつは危険だ。多少強引にでも先に始末する!!)
「神速・韋駄天!!」
「あっは!!君それでほんとに瀕死なの?」

エスケラに能面の刃が迫るが、それをダミアンがすさまじい横薙ぎで引き剥がす。
それは空気が爆ぜるかと思うほどの強烈な横薙ぎ。
能面の危険性を重く見たアレスはダミアンの攻撃を回避した隙を付いて閃光のような斬撃を繰り出した。

「アレス!!」
「貴様の相手は俺だぁ!!」
「邪魔だこの……」
「隙あり!!貰ったぁ!!」
「ぐッ!!」

敵の懐に飛び出したアレスをみて援護に向かおうとするティナ。
しかしボスの邪魔はさせまいとゲビアのメンバーが次々に攻撃を仕掛けてきたのだ。
数は多いが視線を切れない強敵が複数いることで迫りくる複数の敵への対応が疎かになってしまう。
脇腹の傷により本調子でないことも相まって目の前の2人に刀を振るった隙を付かれ陰から飛び出た敵の攻撃を躱しきれない。

「月影流秘伝……叢雲・霧散!」
「ギャアアア!!」
「ぐぁあああ!!」
「背中がガラ空きだよん♪」
「よくも俺様の部下を!!潰れろぉ!!!」

そんなティナをカバーしようとアレスは斬撃を飛ばす。
だが意識をティナの方に向けたことでダミアンと能面がアレスの前後から迫る。

(開けた場所に避ければ追撃が来る。なら……目指すは敵の懐!!)
「おっと、これはまずいね」
「ぬぅ!?」

挟まれる形となったアレスは左右に避ければ1対2の形が続くと判断し、なんと迷うことなく目の前で大剣を振り上げるダミアンの懐に飛び込んだのだ。
このままアレスを追えばダミアンの攻撃範囲に入ってしまうと能面は追撃を断念する。
敵の懐に飛び込むことで背後からの攻撃から逃れたアレスはダミアンの攻撃に集中し、紙一重でその攻撃を避けると強烈な斬撃をダミアンにお見舞いしたのだ。

「ぐぅ……ガキが、調子に乗り寄って……」
「ダミアン様!!」
「騒ぐな。致命傷ではない」
「大丈夫かティナ!?」
「ああ……だが、本当にすまない……」
(膠着状態……に見えて奴はもう限界だろう。そろそろおしまいだね)

斬撃を浴びたダミアンが後方へ引いたことでアレスたちは再び睨み合いの状況となる。
盗賊団ゲビアのメンバーは確実に数を減らし、ダミアンも軽くはない傷を負い追い詰められているように見える。
だが能面は1番追い詰められているのは血を流しすぎているアレスだということを冷静に見抜いていた。

(さすがに、まずい……視界が揺らいできやがった……)
「アレス!私がこいつ等を食い止める!だから君はすぐに戦闘から離脱してくれ!」
「んなことあいつらが許してくれねえよ。大丈夫、次の攻撃で確実に終わらせる」

再び間合いを確保したアレスは大きく息を吐いた。
すでにアレスの失血量は限界にまで達している。

「もうそろそろ飽きてきたから大人しく死んでくれると嬉しいな!」
「この傷は100倍にして貴様に刻み付ける!!」
(集中しろ!いつも通りに剣を振るえばこいつらだって……)
ゴゴゴゴォ!!!
「ッ!?」
「な、なんだぁ!?」

明らかに限界ギリギリな様子のアレスの表情を見て同時に攻撃を仕掛ける能面とダミアン。
だがその時、アレスたちがいた戦場から程近い地点で超巨大な岩の柱がもの凄い勢いで天高く伸びていったのだ。
体の芯まで貫くほどの地響きと共に四角柱の岩の柱は空に向かって伸びていく。
もの凄いスピードで空に伸びた柱はものの数秒でその勢いが止まり、急停止した影響で上面に乗せていた物体が慣性によって空中に放り投げられる。

「あれは……まさか人間!?」
「ダミアン様!!あいつ等まさか!!」
「ああ……俺の部下だ!!どこのどいつだあんなふざけたことをしやがったのは!!」
「あの技は……」

空中へ放り出されたのは盗賊団ゲビアの更なる別動隊の男たち。
男たちは足元の大地が空に伸びた加速度でぺちゃんこに押しつぶされ、その後空に放り出されたことで完膚なきまでにボロボロにされてしまったのだ。

「これはまずいね……君を殺すのは先延ばししてあげる」
「ダミアン様!!早く逃げましょう!」
「ああ。野郎ども!!撤収だ!!」

あの大規模な攻撃を繰り出した何者かがこちらにやってくる気配を感じた能面とダミアンらはすぐさま撤退を選ぶ。

「森の中からやべぇ奴が来る。でも、この気配は……」
「ああ。あんなことができるのはこの国に一人しかいないだろう」
「ハズヴァルド学園の制服を着た数人が竜人族の少女を庇っていると通報を受けてきたが……まさか貴様がいるとはな。ティナ」
「ゼギン……フォルワイル様」
「父上……」

ダミアンらが姿を消してからほんの数十秒後、森の奥から凄まじい気配を纏った男が姿を現す。
灰色の髪に悪の組織のボスかと見間違うほどの強面。
その顔面には大きな刀傷が刻まれており、彼の顔はより強いプレッシャーを放つ。
だがそんな彼の胸元にはこの国の軍隊であるエメルキア王国軍のトップを示す紋章が光り輝いている。
アレスたちの前に姿を現したのはエメルキア王国軍総軍団長でありティナの実の父親でもあるゼギン・フォルワイル本人であったのだ。
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