S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず

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2章

不意打ち

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「ごはッ!!」
「きゃあ!!」

蓄積した疲労により敵の目前で足を止めてしまったアレス。
そんなアレスの顔面に向けてベンサムは渾身の一撃を放った。

「っ……!アレスにいに……?にいに!!」

顔面を撃ち抜かれてしまったアレスはステラを抱えたまま後方へはじけ飛ぶ。
アレスに庇われたことでステラには一切の怪我はなかったが、アレスは10mほど吹き飛ばされ仰向けに倒れてしまった。

「さっすがお頭だ!これ即死だぜ!!」
「あとは竜人族のガキを確保するだけだぁ!!」
(妙だ……先ほどの一撃。あまりにも手応えがなかった……)
「待てお前ら!奴は恐らく……」
「さあ嬢ちゃん?痛い目に遭いたくなかったら大人しく俺たちと一緒に……」
「あー、死ぬかと思った」
「っ!?てめぇ生きて……ぎゃああ!!!」

アレスとベンサムの戦いを茂みの奥から窺っていたベンサムの部下たちは力なく倒れるアレスの姿をみて意気揚々と茂みから姿を現す。
奴らの狙いは当然ステラの確保。
倒れたアレスの体を小さく揺さぶるステラに近づいてきた男たちは高額で取引される竜人族の子供を捕まえられることに笑みを隠し切れずにいたのだが、ステラに手を伸ばそうとしたその時、なんと意識を失ったと思われていたアレスが突如目を開けたのだ。

「貴様……またしても俺の部下を……」
「アレスにいに……」
「一瞬マジで意識が飛びかけたな。俺は大丈夫だよ。ステラちゃんは怪我はしてない?」
「……うん」
「よし。それはよかった」
「毒に続いて死んだふりとは……どこまでも卑怯なやつめ。正々堂々戦え!」

目を開いたアレスはそのまま一瞬で周囲に集まって来ていた男たちを斬り刻む。
そうして再び立ち上がったアレスはステラの無事を確認すると改めてベンサムと向かい合う。

「さっきは少し俺も熱くなっちまったけど……お前が正面から戦うことが美徳だって思ってるのは勝手だが、それが全ての人に当てはまるなんて思いあがるなよ?」
「なんだと?」
「俺もお前も正面から戦う力スキルに恵まれただけだ。そんな恵まれたやつに対抗するためにあらゆる手段を用いるなんざ、卑怯でもなければ当たり前なんだよ」

そう言ったアレスは今度はステラを背後に残したまま剣を両手で構える。

「だからお前の考えに従ってやる義理はどこにもねえん……だッ!!」
「貴様何を……」
「叢雲・一閃!!」

剣を逆袈裟に構えたアレスは勢いよくスタートを切ると、目にもとまらぬ速さで斬撃を飛ばす。
だがその目標はベンサム本人ではない。
アレスが放った無数の斬撃はベンサムが立つ周囲の地面を激しく斬り刻み、ベンサムの体勢を大きく崩したのだ。

「お前のスキルは何か知らねえが……その場から動けない縛りがあるんだ……ろッ!!」
「ぐッ!!」
「雷霆・斬!!」
「ぐぁあああああ!!!」

地面が崩れ体勢を崩したベンサムの懐に潜り込んだアレスは体勢を低くしゃがむと、ベンサムを上空へ吹き飛ばすべく右足で強烈な蹴りを繰り出した。
踏ん張りがきかないベンサムの腹にアレスの蹴りが突き刺さると、ベンサムはそのまま宙を舞う。
空中に投げ出され回避の手段も失ったベンサムの瞳がアレスの不可避の斬撃に絶望の色に染まった。

「大方両足が地面についている間は強靭な肉体になるとかいうスキルだろ?正々堂々だなんだの言いながら自分のスキルの特性を隠そうって考えるなんざ根っこが腐り切ってる証拠だぜ」
「がッ……ふっ……」

アレスが繰り出したその一撃は、先程までの強固な肉体が嘘だったかのようにベンサムの体にめり込む。
致命傷には及ばないものの容赦なく胸を切り裂いたその一撃は間違いなくベンサムを戦闘不能に追い込んだのだった。

「ごめんよステラちゃん。怖い思いをさせちゃったよね」
「ううん。アレスにいに……守ってくれてありがと」
「ああ」
(にしてもあいつ、姿を現さなかったな。やられた振りをして奴をおびき出せればと考えたんだが……)

ベンサムらを退けたアレスは剣を収めるとステラの元に歩み寄る。
だがそんなアレスの頭の中はずっと自分を監視していた能面のことでいっぱいであった。

(奴のやり口からして敵に意識が向いた瞬間を不意打ちしてくるもんだと思ったんだが。警戒してるのがバレてたか?)
ドォオオオン!!
「今のは……ティナが戦ってんのか!?」
(そうか。戦いの気配を感じて村から戻ってきたあいつらが俺たちを囲ってたさっきの奴の部下と戦ってんのか……)
「ッ!!まさか……あいつ!!!」

その時、アレスはティナたちが向かった村の方向から戦いの気配がすることに気が付いた。
それが先程自分とステラを取り囲んでいたベンサムの部下との戦闘だと考えたアレスはティナが苦戦することはないだろうと一瞬楽観的思考をする。
だがその直後、あることに気が付いたアレスは顔色を変えたのだ。


「閃光……朧氷斬!!」
「ガァアアア!!」

一方そのころティナは、アレスの元に駆け付けるべくベンサムの部下たちと戦闘を続けていた。
ソシアとジョージを下がらせたティナは数の上では圧倒的不利。
だがその圧倒的な戦闘力の差によりベンサムの部下を残り1人にまで追い詰めていたのだ。

「すごい……流石ティナさん!あんなに大勢いたのにこんなにあっさり!」
(あっさり……そうです。もの凄く順調なはず。それなのになんだ……この胸騒ぎは)
「残りは貴様1人だ。私は彼のように手加減が得意ではないんだが……今逃げるなら追わないぞ?」
「舐めるなよ!!貴様のようなガキに舐められたままで終われるかぁ!!」
「仕方がない……」

最後に遺されたベンサムの部下はこの劣勢にも怯まず、相打ち覚悟でティナに刃を向ける。
そんな男にティナは油断なくとどめの一撃を繰り出そうとする。
だがそんな光景を見ていたジョージは言葉で言い表しようのない違和感を覚えていた。

(なんだ!?何を見逃している!?敵はあと1人。やられた振りをしている様子もティナさんが油断してる様子でもない。なのに……なのにこの違和感は……)
「敵は……あと1人?」
「ジョージ君……?」
「違う!!敵はあと……」
ヌルゥン……
「もう1人いる!!!」

決着の瞬間が間近に迫る中、ジョージは必死に思考を巡らせその違和感の正体を探っていた。
そして1つの答えに辿り着く……と、同時にティナの右後方に墨汁のような黒いシミが滲み出る。

「閃光・朧氷……」
「君は彼と違って隙だらけで最高だね♪」
(なっ……能面!?しまっ……)

ティナの後方から迫っていたのはずっとアレスの傍に張り付いていたはずの能面だった。
ティナが能面の存在に気が付いたその時、ティナは目の前の敵を倒すべく刀を振り降ろすまさにその瞬間であった。
完璧な不意打ち。
防御も回避も間に合わない……

「ぐぁあああああ!!!」
「ッ!!??」
「ジョージ君!!!!!」

だが能面の凶刃がティナめがけて振り下ろされたまさにその時、一瞬早く能面の存在を思い出していたジョージが命がけでティナと能面の間に割って入ったのだ。
ティナを守ろうと間に割って入ったジョージは能面の攻撃を防ぐべく盾を構える。
しかしとっさに構えた盾では能面の攻撃を防ぐことはできなかった。
冷たく振り下ろされた能面の刀はジョージが構えていた盾を両断すると、そのままジョージの体を深々と切り裂いてしまったのだ。
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