S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず

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2章

敗北

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突如放たれた爆裂魔法により破壊された岩が降り注ぎ1人孤立してしまったアレス。
そうして分断されてしまったタイミングを見計らったようにダミアン率いる盗賊団ゲビアのメンバーたちがアレスの前に姿を現したのだ。

「その通りさ。獲物が自ら俺たちの縄張りにやって来てくれるなんて。日頃の行いが良いんだろうなぁ」
「運がなかったと観念するんだね。大人しく諦めな!」
「運がなかっただ?はッ……それはてめえらの方だよ」

ダミアンが率いていたのは前回アレスたちを襲撃した時よりも大人数の部下たち。
背後は落石でふさがれ逃げ場のないアレスにダミアンらは武器を向けた。
だがそんなダミアンたちを見てアレスは温度のない瞳で冷たくそう言ったのだ。

「ここがお前らの根城なら叩き潰すしかないかじゃねえか……」
「ッ!!」
「お~、怖い怖い。本当にただのガキか疑わしいぜ」
「だりゃァ!!」
「ふんッ!!」

直後アレスは剣を抜くと勢いよくダミアンに向けスタートを切った。
繰り出したのは命を刈り取らんばかりの猛烈な横薙ぎ。
そんなアレスの一太刀をダミアンは正面から受け止めた。

「アレス君!!早くアレス君を助けに行かないと!」
「いや待てソシア!」
「ティナさん!?」
「ここはアレスに任せよう。私たちはステラちゃんを安全なところに」

そんな戦闘の気配を感じ取ったソシアはすぐにアレスを助けに行こうとする。
だがそんなソシアの行動をティナが冷静に制止した。

「ティナさんの言う通り、奴らの狙いはステラさんです。僕らからステラさんを奴らの元に近づけるのは得策ではありません」
「でも……」
「アレスなら大丈夫、そうだろう?彼が気兼ねなく戦えるように私たちは安全を確保すべきだ」
「……、わかった!」
「早くこの場を離れましょう!先ほどの攻撃魔法を考えればまだ奴らの仲間は他に居るでしょうし!」
「うん……ッ!?」
(何っ……このにおい!?いつの間に知らないにおいが増えてる!?)

敵の狙いであるステラを安全な場所に逃がすべく、ソシアたちはアレスを置いてこの場を離れることを決断する。
だがその直後、ソシアが周囲から嗅ぎ慣れないにおいがすることに気が付いたのだ。

「ティナさん逃げて!!」
「えっ!?」
ドォオオオン
「ぐぁああ!!」

直感で危険を感じ取ったソシアはティナに警告を放つ。
するとその直後、何もないはずの空間から3本の試験管が現れたのだ。
回転しながら投げられた試験管はティナの足元に落ちると粉々に砕けてしまう。
そして試験管の中に入っていた液体が空気に触れた途端、小規模な爆発を起こしティナを巻き込んでしまったのだ。

「ティナさぁん!!」
「なッ!?何もないところから急に……」
「ぐぁ……一体、何が……」
「ちッ、軽症か。お嬢ちゃん、なんで私に気付いたんだい?」

爆発に巻き込まれたティナだったが、その規模が小さかったことと直前にソシアの忠告があったおかげで後方へ飛び何とか致命傷を避けることができていた。
だが間近で爆発を喰らったティナのダメージはかなり重く、爆風で背後の岩に叩きつけられたティナは激しく血を流す。
そんな異常事態に動揺するジョージ達の前に、またしても何もない空間から1人の女が姿を現したのだ。

「においが……急に薬品の匂いがしたから」
「あなた鼻がいいのね。でも少し反応が遅かったわね。さあ、大人しくその竜人族の子を渡しなさい」
「ティナ!?くそ、一体何が……」
「貴様の相手は俺だぁあ!!」
「ぐッ!!」

ティナたちの身に危険が迫っていることを感じ取ったアレスはすぐに助けに行こうと試みるが、ダミアンに張り付かれすぐに駆け付けることができない。
ステラを差し出すように迫られたソシアはステラを背中に隠すと現れた女の前に立ちふさがった。

「ソシアさん!ステラさんを連れて早く逃げて……」
「邪魔しないで頂戴」
ドォオオオン
「うわぁあああ!」
「ジョージ君!!」
「早くしないとお友達が死んでしまうわよ?その子が手に入ればあなたたちは見逃してあげてもいいのよ?」
「そんなッ!そんなことは絶対に……」
「ヒャッハー!!!隙ありだぜぇ!!」
「えっ!?」
「きゃああ!!」

絶体絶命のピンチにソシアが捨て身の特攻を仕掛けようとしたその時、崖の上から奇妙な生き物に乗った男が突如現れステラを攫ってしまったのだ。

「ちッ!!横取りするんじゃないよ!!!」
「それはこっちのセリフだぁ!ダミアン様ぁああ!!竜人族のガキを捕まえましたぁ!!」
「ソシアねえねぇ!!」
(お願い届いて!!)
「はぁあああ!!」
「なんだと!?ステラちゃ……ぐッ!?」
「でかしたぁ!!なら貴様にもう用はない!!撤退だぁ!!」
「野郎ども!!撤退するわよ!!」
「あい!!」
「逃がすわけねえだろ……」
「さらばだ。戦いは俺の負けでいいが、この勝負は我々ゲビアの勝利だな」
ドォオオオン
「なにッ!?……ぐッ!!」

崖から現れた男は盗賊団ゲビアのメンバー。
走ることに特化した鳥型の魔物を乗りこなし、ステラを捉えるとそのままものすごいスピードで走り去ってしまったのだ。
そんな騒ぎを聞いたアレスは背後に気を取られる。
その隙を付いたダミアンは自身が持つ大剣で自らの腕を斬りつけると、刀身がより一層赤みを増した大剣を地面に振り下ろし巨大な爆発を発生させ逃走を図ったのだ。

「くそ!逃げられた!!それよりも今は……お前ら!!」
「はぁ……はぁ……ステラちゃん……うッ」
「ステラさん……そんな……」
「お前ら!!……ッ!!」

道を塞ぐ岩を乗り越えソシアたちに合流するアレス。
だがそこにはソシアとボロボロになったティナとジョージがいるだけで、ステラの姿はなかったのだ。

「ステラちゃんは……?」
「すみません。僕らが力不足だったばかりに……」
「完全に姿を見失ってしまった。奴ら、この土地のことを知り尽くしている……」

アレスが駆けつけた時にはステラを連れた男の姿も、ティナたちを襲った女の姿も消えてしまっていた。
広大なネズラキオ渓谷の中土地勘のある盗賊団ゲビアのメンバーを追うのは難しい。
アレスはステラを連れ去られてしまった悔しさに拳を固く握りしめていた。

「まだ……まだ追いかけられるよ」
「なにっ!?本当かソシア!?」
「うん。ステラちゃんを連れ去った人が乗ってた変な鳥みたいな魔物の足に臭い玉をぶつけたから……私ならまだ追いかけられる」

見失ってしまった男を追跡するのは困難だと絶望しかけるアレスたちだったが、ソシアはまだステラを取り戻す方法があると言ったのだ。
それはステラを連れ去られる直前、この場から逃げ去ろうとする魔物の足元に、ソシアは特製の臭い玉を投げつけていたのだ。
ソシアが投げた臭い玉は魔物の足元に着弾し、独特な臭いを付着させることに成功する。
その臭いはソシアの強化嗅覚を用いれば短時間ではあるが追跡が可能であったのだ。

「私の魔法は一瞬で狙いを定められないし、攻撃的な投げ玉は持ってないからこれくらいしかできなくて……」
「いや、助かったよソシア。そうと決まれば早くステラを助け出そう!」

ステラを連れ去った男を追跡する手段を得られたアレスは必ずステラを取り戻すと固く誓った。

「まだ負けてねえよ……待っててくれよステラちゃん」
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